ついにやりました!“ついに”というよりも、まだプロツアー本格参戦5試合目。ツアー選手権シティバンク宍戸(茨城・宍戸ヒルズCC西コース)で“早くも”プロ初勝利を挙げたのは、今春東北福祉大を卒業したばかりの22歳の藤本佳則クン。ツアー最速記録に並ぶ初優勝ですが、新人の国内メジャーVも初めて(ともに記録が残る1985年以降)。賞金ランキングも2位に上がってきた165センチ、68キロ。“小さな大選手”になりそうな個性派の誕生です。メジャー優勝で来年から5年間のシード権も獲得しました。これからの藤本には限りない未来が開けてくる予感がします。
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2打のリードできた最終18番。フェアウェイ真ん中をキープ。左よりのピンを直接狙ったセカンドショットが僅かにショート。グリーン手前の深いラフからピンまで15ヤードを残しました。時間もかけず、簡単に打ったチップショットは、入るかと思わせた転がりでカップをなめ、上1メートル弱に止まりました。初優勝を目前にした最終ホールで、優勝争いの重圧もみせずに振舞ったこの度胸。返しのウインニングパーパットを難なく入れて藤本佳則のプロ初優勝は決まりました。駆け寄る同じルーキーの川村昌弘を見向きもせず、4日間72ホールをともに戦ってくれた前村直昭キャディー(44)のもとへ歩んで感激の抱擁をする藤本クン。通算13アンダー。開幕から5試合、18ラウンド、オーバーパーしたのは一度だけ。2週前のとおとうみ浜松では、初日から3日間トップを走りながら、最終日の大詰め2ホールでJ・チョイに逆転負けした苦い経験があります。しかしそれから2試合目。見事にリベンジの初優勝とは、やはり並みの新人ではありません。
今週も4日間とも60台。初日の7位スタートから3日目、67で単独首位に立ち、最終日は1打のリードでとおとうみ浜松以来の最終組。同組には、こちらも今季、話題の一人、18歳のルーキー川村昌弘がいました。2打差の1組前には「学生時代、公私共に面倒をみてもらった」という東北福祉大の先輩、池田勇太。難コースで知られる宍戸ヒルズ。緊張でガチガチになっても不思議ではない最終日の舞台で、藤本の1番はセカンドショットをピンに当てカップのふちを傷つけるというスーパーショットでフタをあけました。6番、10番でもバーディーを重ね、圧巻は打ち下ろし14番(パー4)でした。
フェアウェイ中央にナイスショットを飛ばしましたが、フェアウェイのうねりで右サイドに流され、ボールが止まった位置からは、フェアウェイ中央にある立ち木の枝が気になるところです。左足下がりでグリーンへは160ヤード。藤本の多彩な技はここでも冴えました。右に張り出した枝の下をくぐり抜ける低いショット(7I)を放ってピン2メートルへピタリとつけたのです。これも決めこの日4個目のバーディーとして14アンダー。これがウィニングショットでした。17番で唯一たたいたボギーも関係ありませんでした。
平均ストローク、平均パット、パーキープ率、バーディー率など5部門で男子ツアー1位に君臨する藤本です。新人離れの男ならではのゴルフを随所にみせつけました。特別な飛ばし屋ではありませんが、正確なドライバーは何よりの武器です。今大会でもフェアウェイキープ率は71.43%で1位でした。体は小柄でも、プロ転向後は腹筋を毎日500回。1週間に計10時間の有酸素運動をこなすなどのトレーニングで体を鍛え上げています。それにも増して、藤本の特徴は、常にピンハイを狙っていく強気なゴルフスタイルです。ショートするショットをあまり見ません。強気に大胆にピンそばを狙っていけるショットの「距離感」を身につけていることは、藤本の大きな財産。タイガー・ウッズばりの“勝つゴルフ”への要素です。初優勝は時間の問題でしたが、22歳7ヵ月9日の大会最年少制覇でもありました。
奈良県生まれ。7歳からゴルフを始め、宮城・東北高時代の2006年に世界ジュニア2位。東北福祉大に進み、08年、関西アマ優勝。10、11年日本学生2位。11年は日本アマ2位も。「目立ちたくて」と襟足を長く伸ばした髪形が、いまやトレードマーク?
かって伊澤利光のバッグを担いで16勝も上げているベテランの前村直昭キャディーと今季はコンビを組んで、好結果を出していますが「気持ちが本当に強い。1勝したから今年中にもう1勝か2勝はできると思う」と、この力強い相棒からもお墨付きをもらっている藤本です。
男子ツアーに、石川遼、池田勇太に続くビッグな新鋭の出現です。