スランプに悩み続けていた“若大将”池田勇太(26)が1年3ヵ月ぶりについに勝ちました。横浜CC西コースでのキャノンオープン。石川遼と3年ぶり2度目の最終日最終組の直接対決が実現、低迷気味の男子ツアーに久々の盛り上がりを呼びましたが、その遼クンを全く寄せつけない力強いゴルフで4日間をすべて60台で回って通算17アンダーの完全優勝でした。26歳9ヵ月16日でのプロ10勝目は、尾崎将司の27歳8ヵ月を抜く最年少V10。「いやあ、長かった。今年は優勝できないかと思っていた」という勇太の喜びの声。プロ6年目、26歳でツアー10勝を挙げた選手はそうざらにはいません。やはり日本の男子ツアーを支えていく男です。今週、初めて沖縄で開催される日本オープンでの勇太が楽しみです。
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完全優勝といっても、4日間何のピンチもないなんてことはあり得ません。数々の緊張した場面を、ひとつひとつクリアした勇太には、かなりの復調ぶりがうかがえます。2打差で出た最終日。パー5の2番を確実にとってほっと一息のスタートでしたが、5番をボギーにしたとき、不安定な遼とは違ってこの日2つ目のバーディーをとったベテラン手嶋多一に並ばれました。不調のときの勇太なら足元が揺らぐ場面でしたが、この日の勇太はすぐ7番のパー5もしっかりとってまたリード。インに入って13番のパー5で勝負に出ます。残り216ヤードの第2打を4番アイアンで1.5メートルにつける攻撃ゴルフが冴えました。手嶋もバーディーでしたが、勇太はイーグルパットを見事に決めて突き放しました。
勇太の強い復調ぶりをみるもう一つのホールは、634ヤードもある超ロングの大詰16番です。まだ1打差で食い下がる手嶋が、第3打をピン左2メートルにつけて迫ってきます。これを見た勇太の第3打は、手嶋より内側の1.5メートルにつけ返した精神力はお見事でした。手嶋がバーディーパットを外したあとに勇太は着実にバーディーを奪い、優勝を固いものにしました。2打リードの最終18番、緊張の頂点に立ちながら、深いラフからの第2打をピン奥2メートルに乗せてきて大観衆の大きな拍手を浴びたのでした。
09年、10年には年間4勝ずつを挙げ「3年連続で年間4勝を目指す!」と大風呂敷を広げた勇太でしたが、ツアーはそう甘くはありません。11年はサン・クロレラクラシック(7月)で1勝するのがやっと。極度のショット不振で「ぶっ壊れたよ!」と嘆くほどの不調。優勝どころではありませんでした。今季も前半戦は優勝にはほど遠く、昨年に続く低迷が続きました。転機は8月上旬、空き週をつかって行った熊本・玉名CCで行った約2週間の夏合宿。若手も集まったこのミニキャンプで勇太は、徹底的に走りこみ、腹筋なども加えて体幹を鍛えました。高山慈仁トレーナー(26)とシーズンはじめから取り組んできた肉体改造の仕上げのような夏キャンプでした。フェードボールが持ち球の勇太が、ドローボールも取り入れるようにショットもイメージチェンジ。ゴルフの幅が見違えるように広がったのもスコアがじわじわと上がってきた要素でした。ドローボールを取り入れたおかげで飛距離も15ヤードは出るように。キャノン最終日なども同組で回った石川遼とほとんどのホールで約10ヤードの飛距離の差を見せつけました。
すべての面でイメチェンを行った池田勇太の優勝。9月には3週連続2位という不運も味わいましたが、そこまで勇太のゴルフが戻ってきていた証拠でもありました。あせらずじっくりと復活Vを待って結果を出しました。
勇太の優勝コメントです。
「やっと勝てたね。今週は初日からよかっつぃ、いけるんじゃないかという気はあったね。毎日ボギーが少なかったし、60台でまわれたから・・。何がよくなったかって、別にないけど、関西オープン(8月16~19日)からの連戦で、ショットのキレも出てきたし、ドライバーも飛んでいる。ショットにしてもドライバー、パットにしても、トータル的によくなってきてる。アイアンも古いものに戻したきっかけもあるかな。全日空のときからボールを換えて空気抵抗が違ってきたのもあるかな。冬から年始にかけてやってきたトレーニングが間違ってなかった。夏合宿では基礎体力を見直し、秋の連戦に向けて何をやったらいいかをしっかり踏まえたやったからね。去年は、つらい秋から終わりのシーズンだったけど、今年は(それは)ないと思う。もっと早く復活のチャンスをと思ったけど、逃がして逃がしてさらに逃がしてきた。やっと勝てたことで安堵感はあるね。勝てたことで去年のことはもう頭に残ってない。オレ、賞金王とってないんだ。今年はとれるよう頑張るよ(2位に浮上)。チャンスがあったら海外も行くけど、今年は国内でやっていく。アメリカのQT(予選会)に出る気はないよ」
11月第2週のアジアツアー「バークレイズシンガポールオープン」への推薦出場が決まっています。欧州ツアーとの共催で優勝賞金100万ドル(約8,000万円)の超高額賞金大会です。国内の三井住友VISA太平洋マスターズとぶつかっていますが、勇太は″海外〝を選びました。この試合、国内の賞金レースには賞金は反映しませんが、世界の有力選手が多数出る大会で世界ランクのポイントも大きいので、海外ツアー出場のチャンスにつながる大会で、今週の日本オープンともども、注目です。