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「100円高い焼酎を一杯多めにいきました」地味ながらしぶとい関西人・井戸木鴻樹の初優勝 シニア賞金王は尾崎直道に!

シニア1年目、嬉しい初優勝のカップを抱く井戸木鴻樹(富士フィルムシニア=千葉ザ・カントリークラブ・ジャパン)
シニア1年目、嬉しい初優勝のカップを抱く井戸木鴻樹(富士フィルムシニア=千葉ザ・カントリークラブ・ジャパン)

 先週行われた富士フィルムシニア(千葉  ザ・カントリークラブ・ジャパン)で今季国内のシニアツアー8試合がすべて終了。賞金王には、国内本格参戦1年目の尾崎直道(56)が決まりました。尾崎直は、米シニアツアー(チャンピオンズツアー)に6年間挑戦、今年から日本シニアを主戦場にして6試合に出場。開幕戦のスターツシニア、9月のコマツオープンと2勝、賞金3485万9750円を獲得、2位井戸木鴻樹に約792万円余りの差をつけて栄冠に輝きました。尾崎直は91年99年とレギュラーツアーで2度賞金王になっていますが、レギュラー、シニア両ツアーで賞金王をとったのは、飯合肇に次ぎ2人目の快挙です。最終戦の富士フィルムは、初日から首位の井戸木鴻樹(51)が、シニアツアー初優勝を完全Vで飾りました。

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日本シニアツアー本格参戦1年目で早くも賞金王に輝いた尾崎直道。華麗なショット(富士フィルムシニア=千葉ザ・カントリークラブ・ジャパン)
日本シニアツアー本格参戦1年目で早くも賞金王に輝いた尾崎直道。華麗なショット(富士フィルムシニア=千葉ザ・カントリークラブ・ジャパン)

 尾崎3兄弟の末っ子。ジョーこと尾崎直道は、シニアになったいまもゴルフ界に話題を提供してくれます。日本のシニアツアーに初めて腰を据えた今シーズン。開幕戦を制してシニアツアーを盛り上げ、9月のコマツオープンでは植田浩史と3ホールのプレーオフを演じて2勝目。賞金王レースもトップを走り続けた最終戦。「富士フィルムシニア」では、優勝こそ井戸木鴻樹に譲りましたが、最終日まで優勝争い加わって2位でフィニッシュ。577万5000円の賞金を稼いで賞金王を決定づけました。レギュラーツアーで2度賞金王になっているジョーは、レギュラー、シニア両ツアーでダブル賞金キングに輝く偉業。2人の兄、ジャンボ、健夫の大きな体躯に比べれば、小兵ともいえる体で戦い抜いてきた尾崎直道です。常にあきらめることを知らない粘りのゴルフをすることから“まむしのジョー”といわれて久しいです。
 今年10月には日本オープンが沖縄の本土復帰40年を記念して初めて沖縄で開催され、青木功、尾崎将司、中嶋常幸のAONそろい踏みに加え、尾崎直道も特別承認で出場する栄誉に浴しました。予選は見事にクリアし、49位ながらレギュラーツアーでまだまだ戦える健闘ぶりをみせました。
 「シーズンが始まるとき、シニアの賞金王をとれたらどんな感じだろうと思っていたんだけど、こうやって賞金王になってみると、“ほんのりとした喜び”だね。1年間、シニアとレギュラーも含めて、一生懸命戦おうと自分なりに決めてやってきて、結果がついてきたから、来年もまた頑張りたいなと前向きな気持ちになれる。自分は傾斜のパッティングが昔から苦手で、長尺で克服できるかと思ったが、勇気がなくて、残り1メートル半が入れきらない。悔しさがダメージとして残る。ここのコースみたいに、タッチを出すグリーンじゃなくて、打たなきゃいけなくなるグリーンが苦手。来年はどういうゴルフができるか、もっと腹の座ったゴルフをしたいという反省もありますね」
 シニアの賞金王がとれた直道の喜びは、レギュラー時代とはまた一味違ったものだったのでしょう。ジョーはその胸中をしみじみと語りました。
 「シニアのメンバーになった気がする」ともいう、永久シード権を持つジョーには、まだレギュラーツアーへの思いも強く残っています。今シーズンも10試合を超えるレギュラーツアーに出ていますが、このあともダンロップフェニックスとカシオワールドの2試合にエントリーしています。シニアツアーは終わりましたが、まだ自分のシーズンは終わったわけじゃない。「ちょっと変な気持ち」といっていますが「(レギュラーでは)予選を通りたい。室田(淳)さんとか中嶋(常幸)さんは飛距離があるが、僕にはない。レギュラーにいくと飛距離が厳しい。ゴルフのタイプは違うけど、そういうのもあって予選通過がひとつの目標」と、あくなきレギュラーツアーへの執念をみせる尾崎直道です。

正確無比なショットを放つ井戸木鴻樹。レギュラーツアーではホールインワン7度が光る(千葉ザ・カントリークラブ・ジャパン)
正確無比なショットを放つ井戸木鴻樹。レギュラーツアーではホールインワン7度が光る(千葉ザ・カントリークラブ・ジャパン)

 シニアツアーの最終戦「富士フィルム」を制したのは、51歳の“若い”井戸木鴻樹でした。最後は直道と奥田靖己に追い上げられましたが、逃げ切りました。昨年、11月(2日)に50歳になると、最終戦の富士フィルムシニア1試合だけに初出場。23位のシニアデビューでした。今年からはフルシーズンに参戦。各試合上位で戦かいいつかは勝つ“優勝予備軍”でした。持ち味は正確なショットで、昨年14試合に出場したレギュラーツアーでは、フェアウェイキープ率で実に7度目の1位に輝いています。09年のフジサンケイクラシックで7度目のホールインワンを達成しているのも隠れた偉業で、井戸木のショットの正確さの証明する記録です。
 “日本のレギュラー時代、1勝している選手が50歳になり1回だけ出場が認められる”全英シニアオープン(7月、ターンベリー)にその権利を行使して出場。予選を通過、65位という成績でしたが、「生まれて初めての海外遠征」(井戸木)でいい経験を積んできました。
 その結果が、最終戦でのうれしい初優勝でした。井戸木鴻樹の優勝コメントです。「気持ち的には攻め続けたけど、15番で7メートルを3パットでボギーにして、やっぱり自分はこんなもんかと思うところもあった。でも次でバーディーをとれたので、目標にしていた12~13アンダーを目指してプレーできた。最後の18番も、パーでいいのは分っていたけど、バーディーで上がりたいという気持ちを切らさないでプレーしてその通りにできた。これまで優勝のチャンスは何回かあったのに勝てなかった。周りから気が弱いから・・とよくいわれてきた。確かに気が弱いけど、プレッシャーがかかる中でいかに集中してやれるか。青木さんやジャンボさんでもプレッシャーの中で戦っていると思う。だからプレッシャーに向かっていってやろうと、やってきたのがよかった。ここでひとつ抜けれたことは大きかった。勝ち方もなんとなく分っていたから、来年もなんとかくらいついて賞金王目指して頑張ります」
 地味だけれどもいつもしぶとく食い下がる井戸木のゴルフが、ようやく花を咲かせました。シニアツアーは、まだ若い1年目での結実です。レギュラーツアーでは2勝している井戸木ですが、シニアではそれを上回る勝ち星を挙げるでしょう。「やっと勝って、(いつもより)100円高い焼酎を、一杯多めにいきました。いまはお酒しか楽しみがない。(優勝副賞で地元君津の銘酒セットがもらえると聞いて)そうやね。届いたら、ちびちびやりますわ」
 関西人の土性骨を来季もみせてくれそうです!