日本ゴルフツアー機構(JGTO)は3月6日、東京で開かれた総会で役員改選を行い、海老沢勝二会長(79)を再選しました。任期は2年で、2期目に入る海老沢会長は「今年はJGTO再生元年と位置づけている」と所信を表明。プロアマ大会の選手選考を大会主催者(スポンサー)に100%(従来は50%)ゆだねることや、日本プロゴルフ協会(PGA)から以前より要請が続いていた「PGAツアー」の商標使用も、受け入れる方向であることなど、ファンにわかりやすいサービス向上を図っていくことを明らかにしました。JGTOの副会長でもあった倉本昌弘氏が、PGAの新会長に就任したことから海老沢会長との″風通し〝もよりよくなって両団体の接近度もアップしそうです。倉本氏は同日の理事会で副会長を辞任しました。
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池田勇太選手会長も加えたJGTOの社員総会は6日、東京・ホテルオークラで行われました。会長以下理事、監事らの任期満了に伴って改選があり、海老沢勝二氏の会長再選が満場一致で決定。副会長は従来の5人のうち3人が任期満了で退任、鷹羽正好氏(副会長)、秋元恒朝氏(副会長=日本ゴルフトーナメント振興協会専務理事)が留任、2人体制としました。理事は14人、監事2人の新しい役員陣容で海老沢政権の2期目が始まりました。
JGTOの今季の活動方針を次のように発表しました。
①理事会の新体制
②マナー強化
③トーナメント規程改定
④人材育成
⑤貢献事業部の新設
の5項目。スローガンは「挑戦と貢献」としました。
☆海老沢勝二会長のコメント
「2年の任期が終わりましたが、みなさまからの推挙を得て、2期目の会長を務めることになりました。新しい役員体制で次の2年間に対応しますが、退任されて顧問となった方たちとも、年に2~3回は顧問会を開いて意見を聞くつもりです。今年はJGTO再生元年といっています。これまでを土台にしながら新しいやり方で幅広く活動していきたい。アジアの各国とも積極的に交流し、友好関係を築いていく。昨年からタイとインドネシアでの2試合が日本ツアーと共催していますが、今年の開幕戦のタイは、向こうの国情が悪く非常事態なので延期し、8月には繰り入れられればと思っています。フィリッピンでの試合も交渉を続けていますが、今年は台風被害が大きくペンディングになっています。国内23試合、海外2試合(予定)の昨年と同数の計25試合。賞金総額も33億5000万円で昨年と同じで行います。ここ10年ほどは経済不況の中で何とかツアーを維持してきましたが、今後これを30試合には持っていきたいと考えています。アべノミクスもありますが、安易にはいきません。一番大事なのは、プロとしての自覚と誇りをみんなが持ち、いい選手を輩出していくことです。人材の育成はさらに取り組んでいきます。何でも興行にはスター、名役者がいなくてはいけません。みなさまに信頼され、尊敬される選手を数多く育てていきたい。去年からオリンピック(16年)を目指し、JGTOが音頭をとって強化合宿をしながらいい選手の育成につとめています。選手会と一体となってやっていきますが、世界のゴルフ界の一員として頑張りたいと考えています」
総会に出席した池田勇太選手会長からも、選手会としての今年の活動方針が示されました。その主なものを挙げますと、まず2014年は担当制を導入してことに対処するということです。選手会の理事23人が業務を担当し、各担当理事が各所での課題を把握して迅速にきめ細かく対応して改善につなげていくとしています。
担当表
会長:池田勇太
≪競技担当≫宮本勝昌、小田孔明、谷原秀人、手嶋多一、桑原克典(チャレンジ)
≪会議・式典担当≫宮里優作、武藤俊憲
≪サンクフル担当≫深堀圭一郎、近藤共弘、小平智
≪前夜祭・プロアマ挨拶担当≫藤田寛之、片山晋呉、中嶋常幸、室田淳
≪海外アドバイザリー担当≫石川遼
≪スナッグゴルフ担当≫上平栄道、谷口徹、近藤龍一、重永亜斗夢
池田選手会長は「これまではスポンサーからの要望に対応できない部分もあったが、担当制を敷くことによって細かい対処ができると思う。これまでは選手会長が中心となって活動していたが、理事大勢でやる方がいい。今年、年明けの理事会で理事のみなさんからも提案があって決めたものです」と話しています。
池田選手会長はさらに「主催者会議には昨年に引き続き出席して、各トーナメントの実務責任者と意見交換し、より緊密な情報共有によって、よりよいトーナメント開催につなげていきたい」とし「プロアマ大会でのホスピタリティーの強化にも努めて、選手は主催者からプロアマ大会に選考してもらえるよう、個々の意識を向上させていく」。
これに関連し、今年からはトーナメント規程の改定も行われました。トーナメント前日に開催されるプロアマ大会で、これまで50%だった主催者の選手選考枠は、100%主催者のものとなります。つまりプロアマ大会に出る選手は全員スポンサーが選ぶことになりました。
選手会はこのほかにも「PR活動・ファンイベント」「地域貢献・社会還元の活動」などにも力を尽くし「男子プロ全員で男子ゴルフ界を盛り上げられるよう一丸となってつとめます」(池田会長)と、力を込めています。
JGTOの今季の活動方針の一つとして挙げられているトーナメント規程改定では、シード権に関する新たな規定を加えました。
それは、海外ツアーのシード権を取得して戦っている選手(松山英樹と石川遼)と、国内では複数年シード保持者に対して、翌年以降の各シーズンの国内ツアーには5試合以上の出場を義務付けました。従来は3試合が出場義務でしたが、これからは松山も石川も国内では5試合以上に出場しなくてはなりません。義務試合を果たさない場合は、翌年1年間の出場資格停止となります(永久シード選手は対象外)。「JGTO再生元年」を唱える海老沢勝二会長。これらの新規程も大会主催者への配慮を強めたもので、先のプロアマ大会選手選考枠を100%スポンサーのものとした改定とともに、スポンサーサービスの向上意識をより鮮明にしました。
日本プロゴルフ協会(PGA)は、前々代の松井功会長時代から日本の男子ツアーを主管するJGTOに、以前日本のPGAでも使用していた「PGAツアー」の商標の使用を要請してきました。現在JGTOの日本ツアーは「ジャパンゴルフツアー」で通してきていますが、本拠米国のPGAツアーから日本での「PGAツアー」のロゴ使用を日本PGAを介して強く希望しているのです。しかし、JGTO側は態度を保留。ここ数年は頓挫していましたが、今回PGA会長に倉本昌弘氏が就任することから、この話が再燃しました。倉本会長から申し出を受けた海老沢会長は「米国から日本のPGAが預かっている″PGAツアー〝の商標を、米国は活用してもらいたいのですが、JGTOは全面拒否しているわけではありません。ファンのみなさまが分かりやすいものなら、使えばいいと思っています。使うことによって効果、PRが上がるのならこだわらずに使えばいい。大筋としてはいい方向へ持っていこうという話を倉本新会長ともしています」と、前向きな発言をしています。
これは会長の一存で決まるものではなく、理事会や選手会の合意も必要でしょう。今後の成り行きが注目されますが、JGTOの「ジャパンゴルフツアー」が「ジャパンPGAツアー」あるいは「PGAツアー・オブ・ジャパン」(いづれも仮称)に変更されれば、JGTO発足以来、16年(来季)ぶりに日本の男子ツアーの名称が変わることになります。どうなるでしょうか?
男子ツアーの国内戦開幕(東建ホームメイト)は、米国のマスターズが終わった翌週の4月17日と大きく遅れています。試合数は昨年も今年も国内ツアー23試合。37試合の女子とは大差がついています。開幕が遅い上、7月6日に終わる長嶋茂雄招待セガサミーカップから次のKBCオーガスタ(8月28~31日)までは7週間も試合がありません。JGTOも選手会も「競技数の維持と増加」は大きな課題。総会でも最大のテーマだったといえるでしょう。