Daily Archives: 2021 年 11 月 1 日

芝生の上で「ゴルフ」と「薪能(たきぎ のう)」の熱狂ドラマが燃え上がった! 9年目池村寛世(ともよ)、恋人とのタッグで大逆転初勝利!

能舞台で半田晴久会長を中心に出演者らが並んで挨拶

ゴルフと薪能(たきぎ・のう)が芝生の上で融合した世界初の男子トーナメンが実現!。その名もISPS HANDA「ガツーンと飛ばせツアートーナメント」(レギュラーツアー)。舞台は茨城・美浦GC(6988ヤード、パー71)。最終日、全員がホールアウトしたあと、コース内練習レンジ付近に設営された野外の能舞台で、5打差を逆転した池村寛世(いけむら・ともよ=26)がプロ9年目、ツアー初優勝の表彰を受けました。“ゴルフツアーもエンターテインメント”を提唱する主催のISPS半田晴久会長の肝いり。今年7月にはシニアツアーでプロレスイベントを合体させた半田会長の相次ぐ新企画に、3555人のギャラリー(有観客=入場無料)も小雨の中、熱い声援を送っていました。

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夜のとばりが下りてきて、舞台が薪の明かりで浮かび上がった

選手がホールアウトする頃からポツポツと降り始めた小雨の中。セットされた能舞台周辺に扱ってきたギャラリーはほとんど帰るものもなく珍しい薪能の世界に引き込まれました。主催者がすかさず用意したビニールレインコートは、約4000枚(主催者談)。この大会は、弁当(先着1000人)はじめ、焼き芋や各種飲食が無料の食べ放題で大人気です。。さて、注目の能舞台では、能楽師でもある半田晴久会長の能楽鑑賞ショート解説に始まり、太郎冠者・野村万蔵の狂言「棒縛(ぼうしばり)」。そしていま一つは、紅白の牡丹花を立てた舞台に、獅子が囃子にのって躍動的な舞を繰り広げる勇壮的かつ豪快な能「石橋(しゃっきょう)」(連獅子)。歌舞伎の鏡獅子のルーツともいわれる演目です。前後約1時間。息もつかせぬ舞台にギャラリーたちは食い入るように見入りました。

300ヤード超を飛ばす池村寛世のスイング

舞台の両脇、芝生の上で赤々と燃え盛る薪(たきぎ)の炎。日暮れとともに一段と映える会場は、幻想的な雰囲気に包まれました。そこに登場したのが、この日2位から出て、7バーデイー、1ボギーの65で回り、通算17アンダーで同期の植竹勇太(27)を逆転した池村寛世。ISPSお決まりの優勝カブトと羽織をまとって優勝賞金1600万円のボードを受け取りました。
前日まで5打差の単独首位。植竹勇太の初優勝も目前でしたが、72とスコアを伸ばせず15アンダーの2位タイに終わりました。

最終日5打のリードを守れなかった悔しい植竹勇太。2打差の2位タイに終わり、初優勝はお預けに

池村寛世はプロ9年目の初優勝。表彰スピーチもたどたどしく「初めてなのですみません。ゴルフもうまくなりたいですが、スピーチももっと上手になってまた戻ってきます」(池村)と締めて、大きな拍手を浴びました。故郷・鹿児島での同級生、交際中の坂口琴音さん(26)が今週はキャデイーを務め、傍らで励まし続けました。ゴルフ経験のある琴音さんですが、専属キャデイーが女子ツアーに行っていて今週はお番が回ってきたというわけです。2年前にキャディーをやってもらっテ以来、下部ツアーを含めて3勝目。今年は調子が上がらず、予選落ちも続いた時期にも、ポジティブな彼女にはいつも「大丈夫、大丈夫。練習していればきっといい時もくるから」と励まし続けられました。

クラブハウス、クラブ置き場あたりで優勝を知り、抱擁する池村寛世(手前)とキャデイーを務めた恋人・坂口琴音さん(右)

5打差を追いかけたこの日は、後半のバーディラッシュが見ものでした。1メートルにつけた11番から4連続バーディー。16、17番でも3~4㍍を沈めてついに首位を奪いました。勝負のかかる“サンデー・バックナイン”の「30」は、驚きのスコアです。初優勝での5打差逆転は、歴代3位の偉業(最大は7打差)。クラブハウス入り口のテレビで、初優勝が決まったことを知ると、あたりかまわずキャディーの坂口琴音さんと強い抱擁。琴音さんから「長かったね」と、つぶやかれると、その肩に池村は顔を埋めて泣き崩れました。

1㍍66、72キロと大柄とはいえない体躯で、池村は320ヤードのドライバーを飛ばします。ただティーアップすると左にひっかけるミスが出やすいクセがあるという。で、最近では少なくなった2番アイアンの愛用者です。また、ドライバーではティーアップしない「直ドラ」を多用します。それもティーグラウンドでの第1打を「直ドラ」で打つというから、かなりの個性派です。飛距離は20ヤードほど落ちるそうですが、精度は高いとか。スゴイ技です。

尚志館高1年のとき国体個人優勝(2011年)。12年にオーストラリア留学。帰国後高校を中退してアジアンツアーのQTなどにも挑戦して13年にプロ転向。14年から日本のツアープレーヤーとなる(17年に初シード)。長い下済みから這い上がってきた表舞台。オフの冬にはスノーボードを愛好しているというスポーツ万能。コロナが落ちついたら「ニセコ(北海道)に行きたい」とも。ゴルフでも主武器が「飛ばし屋」なのが、池村の将来への期待を高めます。鹿児島の実家は高級焼酎「魔王」の原料となるさつま芋を生産する農家の長男。「ゴルフで稼げないなら帰ってきて農家を継げ」といわれてきたとか。もうその心配?もなさそうです。

(了)