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“9オーバー”のカットライン!「全米シニアOP」。伝統を守るUSGAの厳しいコース設定に惹かれる日本シニアたち。 50歳になった片山晋呉もいま一度米挑戦へ!藤田寛之47位、深堀圭一郎57位。

「苦しかったが、世界NO1のシニアOPに出られて幸せだった」と藤田寛之。

米シニアツアーの最高峰「全米シニアオープン」がメジャー初開催の米ウィスコンシン州のセントリーワールド(7218ヤード、パー71=6.29~7.2)で行われ、ベルンハルト・ランガー(65 独)が通算7アンダーで2010年に続く大会2勝目。米シニアツアー史上最多の46勝目を挙げました。日本勢は藤田寛之、深堀圭一郎、兼本貴司の3人が出場、ともに決勝ラウンドに進みましたが、予選カットラインが“9オーバー”というハードな設定には驚きを隠せませんでした。藤田が通算13オーバーで47位、深堀が通算18オーバーで57位、兼本貴司は通算21オーバーで65位と厳しいコースセッティングに翻弄(ほんろう)されましたが、藤田は「苦しかったけど、こういう試合に出られるだけでも幸せ」とコメント。いま、あらためてナショナルオープンの伝統を守ろうとする全米ゴルフ協会(USGA)の厳しい姿勢、コース設定がうかがえた大会。今年シニア入りした片山晋呉(50)も「日本のシニアツアーで海外メジャーの出場権をとりたい」と、海外シニアメジャー挑戦の強い意向をみせています。いま、脚光を浴びる海外シニアとは?(昨年の国内賞金王プラヤド・マークセン=タイ=は11オーバーで予選落ち)。

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そこには日本では味わえない魅力が溢れ、シニアプロの憧れの舞台がシニアのメジャーなのです。今回の藤田寛之、深堀圭一郎らもそうですが「シニアのメジャーで“世界一”を目指したい」とする日本勢もあとを絶ちません。

先週終わった今年の「全米シニアオープン」、初日をボギーなしで回った選手は“ゼロ”でした。4人しかいなかったアンダーパー(初日)の一人、全米オープン2勝のレティーフ・グーセン(南ア)は「フェアウェイを外したらもう何もできなかった」と述懐。今年全米プロシニアを制しているスティーブ・ストリッカー(米)は「ここでは攻めてはいけなかった」と、ただただ守り優先のゴルフだったことを振り返りました。初日128位と大きく出遅れた兼本が2日目、捨て身の反攻が功を奏し6バーディー、2ボギー。この日のベストスコア「67」で生き返り、通算7オーバーの38位で予選を通りました。41位から出た藤田の2日目も3つ落としたが、同じく通算7オーバー、38位で決勝ラウンドへ。深堀も「75」で4つ落としながら通算8オーバー50位。日本勢3人とも辛うじて“9オーバー”の圏内に踏みとどまったのです。2日目、「68」を出して通算3アンダーとしたベルンハルト・ランガー(独)が早くも単独トップというありさま。グリーン周りの深々としたラフ。500ヤードを超えるパー4のホール・・。メジャー仕様のハードなセッティングがどれだけ選手を苦しめたが分かります。

 

国内シニアランク4位(昨年)の資格で「全米シニアOP」を体験した深堀圭一郎。18オーバー57位と振るわなかったが「貴重な体験だった」と満足な1週間だった。

5月の「全米プロシニア」(テキサス州)に続いて「全米シニアオープン」と2つの海外メジャーを経験した深堀圭一郎は、米国へきてみて“驚き”と“感慨深さ”で充実感に浸っているという。「シニアになって、シニアのメジャーや“チャンピオンズツアー(米のシニアツアー)”にも出てみたいと思っていた」と話し、昨年国内シニアツアー賞金ランク上位(4位)に入って参戦が実現したのです。その深堀は米国へきてみて「シニアもレベルが高くなって、進化が著しいのに驚いた」と貴重な体験を語りました。

 

国内のレギュラー・シード権をなくし、海外シニアに目を向ける藤田寛之。今年の「全米シニアオープン」は予選はクリアしたものの一度もアンダーパーのゴルフができず47位にとどまった。

藤田寛之も国内でレギュラーツアーの出場権は失いましたが「シニアで海外メジャーを経験したい」と“新しい世界”への夢を強く持ちました。昨季国内賞金ランキング2位の位置で待望の海外メジャーの出場権をゲット。54歳にして「全米プロ」(37位タイ)と「全米シニアオープン」(47位)の2大会を相次いで体験。「頭を使い、自分の技術でどこまでできるか。こういうコースで1日でもアンダーを出せるプレーをしたい。正確性、ボールコントロール、すべてが試される舞台。だから世界ナンバーワンなんでしょう。苦しかったけど、こんな試合に出られて幸せでした」とコメント。高度なフィールド経験に満足感を溢れさせました。

 

国内シニア賞金ランク3位で「全米シニアオープン」の出場権を得た兼本貴司。
初日128位から2日目ベストスコアの「67」を出して予選を通過。脚光を浴びたが、3日目再び「81」を叩き、21オーバーの“ブービー”(65位)。メジャーの洗礼を浴びた。

しかし、3人の日本人選手が4日間戦ってアンダーパーを出したのは2日目、予選落ちを目前にして反攻に出た兼本貴司の「67」ただ1回だけ。兼本はその前後には80台を2度叩き、最終的にブービーの65位(21オーバー)でした。藤田、深堀も「一度はアンダーパーを!」と“夢”を語りながら、結局2人ともアンダーパーは経験しないままのホールアウトでした。優勝したランガーは最終日も「70」で回り、4日間一度もオーバーパーはしなかった通算7アンダー。ランガーの素晴らしさが光り、結局アンダーパーは8人に留まる大会でした。

 

 

今年1月31日に50歳でシニア入りした片山晋呉。国内シニアにはデビューしたが、海外シニアのメジャーにもターゲットを絞っている。(提供:PGA)

今年は賞金総額400万ドル、優勝賞金72万ドル(約9900万円)。賞金もビッグですが、それ以上にハイレベルなコースで厳しいコースマネジメントのメジャーを征服する喜びはひとしおなのでしょう。今年1月31日、50歳の誕生日を迎えシニア入りした永久シード選手、片山晋呉。国内レギュラーツアーで31勝。5度の賞金王。「全米プロ」「マスターズ」ではともに4位の実績。今季6月のシニアツアー「スターツシニア」でシニアデビュー(4位)し、まだ当分はレギュラーとのかけもちですが、シニアになって海外シニアメジャーへのチャンスが生まれました。近々実現する片山晋呉の海外シニアメジャー。どんなチャレンジをみせるか、楽しみです。今年の全米シニアオープンに出場した主な顔ぶれ=スティーブ・ストリッカー(米)、パドレイク・ハリントン(アイルランド)、アーニー・エルス(南ア)、ミゲール・ヒメネス(スペイン)、デービス・ラブⅢ(米)、ダレン・クラーク(北アイルランド)、レティーフ・グーセン(南ア)、スティーブン・エイメス(カナダ)、デビッド・トムズ(米)、ジェリー・ケリー(米)ら。

(了)