
男子ゴルフにまた新しいヒーローが生まれました。長野泰雅(ながの・たいが)、ツアー4年目、22歳。福岡県出身。沖学園高3年の21年にQT(ツアー予選会)に挑みプロ転向。22年からプロ活動をスタートし同年9月のプロテストでは19歳でトップ合格。22年にはいきなり賞金ランキング30位で堂々のプロとして登場。今季からスーパーマーケット大手のロピアが特別協賛し、大会名を新たに「ロピアフジサンケイ・クラシック」とした大会を制しました。3位に入った蝉川泰果(せみかわ・たいが)らと同年代で、タイガー・ウッズ全盛期の生まれ。九州シニアで優勝している父・清さんや、母・珠美さんが「世界に羽ばたけそう」との思いで日本語訳を名づけた一人。持ち味はタイガーばりの攻めのゴルフ。若手有望株としてこれからも活躍しそう。大会は2日目の雨天中止で、前年の36ホール短縮に続き54ホール競技に短縮されました(加算される賞金額は75%に減額。1650万円)。
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難コースで知られる富士桜を初日から7バーディー、2ボギーの「65」で回り、前週まで2週連続予選落ちしていた悪い気分を振り払った泰雅でした。
あれは2年前のことでした。23年の「ジャパンプレーヤーズチャンピオンシップbyサトウ食品」の最終日。今回と同じ1㍍のウィニングパットを外してプレーオフに持ち込まれ、谷原秀人に足をすくわれた苦い思い出があります。「あのときの後悔は忘れられません。今回はキャディー(山本凌平氏)から“緊張してる?”“また外しそう?”などと、ふざけながら気を紛らせてくれた」(長野)という。
しびれまくった2年前と違って、荒いゴルフも成長。震えるパットも時間をかけず、リズムよく打ち出して悪夢の“1㍍パット”にもうち勝ったのです。「これまでアイアンとパターが悪くて悩んでいたのも、フォームを変えずにクラブのせいにして、クラブ契約を全部フリーにした」という。今季2勝で賞金ランキングをトップで走る生源寺龍憲が、今年から泰雅の地元、福岡に拠点を移し「一緒に練習したりできているのが、集中できるのが嬉しい」とか。やる気のない一年だった昨年をいろいろなことで好結果につなげたのだからうれしかった。今週ははじめから調子がよくて「これで勝てなかったらもう勝てないかも」と自分に言い聞かせていたという。

激戦の最終日。2、3番と連続ボギーで後退したが蘇った。勝負どころの“13、14番で連続バーディーで首位を捉えると、大詰め16番で約3㍍のバーディーチャンスをねじ込みガッツポーズが出た。このバックナイン3つのバーディーが勝負を決めました。“気分屋”の泰雅を立ち直らせてくれた周囲のいい関係“には感謝、感謝です。「自分はこんなキャラだから」と自らいう長野プロ。初Vで涙もなく、通り過ぎるギャラリーも振り返りもしなかった“無名”のヒーロー、誕生です。
短縮競技で1650万円の優勝賞金は少し物足りなかったが、賞金ランクは3000万円を超える18位にランクアップされました。顔ぶれが一新してきた国内男子ゴルフの有望株です。