難コース・葛城を大逆転で制した笠りつ子の実力。 “華”が加われば女子ツアーのトップ選手にも・・

歯切れのいいショットでフェアウェイを捉えた笠りつ子のドライバー(静岡・葛城GC)
歯切れのいいショットでフェアウェイを捉えた笠りつ子のドライバー(静岡・葛城GC)

 今年もコワイ韓国パワーを、シーズン早々ねじ伏せたのは、24歳の肥後もっこす・笠りつ子でした。今季4戦目の女子ツアー、ヤマハレディス葛城(静岡・葛城GC山名コース)。2日目は“春の嵐”に襲われて中止、36ホールの短期戦になりましたが、最終日4打差7位から出た笠りつ子は、難しい上がり4ホールで3バーディーを奪う強烈な追い上げで逆転V。昨年8月ニトリレディスでプロ初優勝したのに続く、ツアー2勝目をカッコよく勝ち取りました。今季は開幕戦こそ40位でしたが、2戦目ヨコハマタイヤ・プロギア7位タイ、3戦目のTポイント3位タイとトップテンが続き、満を持しての優勝。これで早くも2000万円を突破した賞金レースは、一躍トップに躍り出るブレークです。

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 日本有数の楽器メーカー「ヤマハ」らしく、優勝副賞にはグランドピアノ。共催のヤマハ発動機からはフィッシングボートSR-Xが贈られて花を添えました。36ホール競技に短縮されたため、賞金は75%の1350万円と減額されましたが、それを補うに余りあるビッグな副賞をもらった笠は、「ピアノは弾きたいですが、置く場所が・・」と苦笑いし、ボートについては「(これまで勝った)みなさんはどうしてるんでしょうね。前回勝った古閑(美保)先輩は使ってますけど、私は使わないと思いますので・・。でもボートが無駄にならないように使わせてもらいます」ー嬉しい悲鳴を上げていました。

“2勝目が難しい”といわれるツアーで、昨年8月の初優勝からあっけなく2勝目を挙げた笠りつ子。「いつできるんだろうと思っていたら、意外に早くできました」と嬉しさを隠せない。その裏づけには、しっかりと身につけたショットがある。
“2勝目が難しい”といわれるツアーで、昨年8月の初優勝からあっけなく2勝目を挙げた笠りつ子。「いつできるんだろうと思っていたら、意外に早くできました」と嬉しさを隠せない。その裏づけには、しっかりと身につけたショットがある。

 今季安定したゴルフをしている笠は、桜咲く葛城でも他を圧倒する勢いをみせつけました。初日から、昨年の賞金女王アン・ソンジュ(韓国)、左手首の負傷でこの試合が開幕戦となった人気の有村智恵と一緒のペアリングにも少しもひけをとりませんでした。7位タイにつけての最終日。1番をボギーとするスタートでしたが、前半で3バーディーを取り返して優勝戦線に食い込みました。師匠とも姉とも慕う熊本の先輩・古閑美保から「最終日の14番からが勝負よ!」といつもハッパをかけられているという笠です。その14番でグリーンを外しまたボギー。「Tポイント(前試合)でも14番を失敗したのにまた14番で・・。がっかりしたけど、次にバーディーをとればチャラになると思い直した」。 
 その切り替えがよかったのでしょう。強風が吹くタフなコンデイションの中でも15番(パー5)の3打目を1メートルにつけてバーディーとすると、次の最難関16番でも170ヤードの第2打を5番アイアンでピン1メートルにつけました。打ち下ろしでコースは左カーブ。左サイドは山でOBというトリッキーなこのホールは、最終日も難易度NO1。ここをバーディーに射止めたのは笠と上原彩子の2人だけ。このホールをボギーとした服部真夕を逆転したキーホールとなりました。最終18番(パー5)では3メートルのフックラインを読みきって沈め、ダメ押しのバーディーフィニッシュでした。課題だったパターは、宅島美香のコーチである橋本大地氏にアドバイスをもらったのがヒントで、この週は勝負どころのパットをよく入れていました。

女子ツアー第4戦、桜がきれいな葛城GCで開かれたヤマハレディス(葛城・山名コース#10ティー)
女子ツアー第4戦、桜がきれいな葛城GCで開かれたヤマハレディス(葛城・山名コース#10ティー)

 この日もキャディを務めた父・清也さんは坂田塾(坂田信弘主宰のジュニアゴルフ道場)でコーチを務めていたトップゴルファー。その父の教えで9歳からクラブを握ったりつ子は当時からプロゴルファーを夢見た“ゴルフの虫”でした。熊本県内の実家はゴルフ練習場経営。1メートル60、58キロの体は決して大柄とはいえませんが、歯切れのいいショットを身につけ、思い切りもいいスピーディなプロで人気があります。アマチュア時代も1学年上に上田桃子、2学年上には青山加織、井芹美保子らがいて、ライバルにはこと欠かなかったそうです。東海大2高1年の03年に九州女子アマで史上最年少優勝。高校を卒業した06年7月のプロテストで一発合格を果たしてプロに入ってきました。
 順調な足取りは、11年8月のニトリで初優勝。10月の日本女子オープンの大舞台では最終ホールのボギーで1打差2位に泣く厳しさも味わいました。今年はプロ7年目。若手グループの中心選手にのし上がってきて早々と2勝目を挙げたのは、前途に明るい灯が見えてきました。5つ年上の古閑美保を慕い、昨年に続き今春1月には大リーグ・レンジャーズに移籍したダルビッシュ投手らと一緒に宮崎合宿を経験しました。活発で周りから愛されるタイプのりつ子さん。所属も昨年までのTKUテレビ熊本から、今年は京セラドキュメントソリューションズに新しくスポンサーがつきました。どんどんうまくなるゴルフで、これからも勝ち星は大いに期待できそう。欲をいえば、りつ子には体からかもし出す“華”がもう少しほしいところです。意識してできるものでもないでしょうが、増えていく勝ち星の中から、華やかな女子プロらしいオーラが出てきてほしい! そうすれば時代を担うトッププレヤーにだってなれるでしょうから・・。