“新潟に舞衣子あり”といわれた若林舞衣子。4年ぶりにようやくプロ2勝目。韓国勢追撃へのろし!



“新潟に舞衣子あり”とアマ時代からいわれた若林舞衣子のドライバーは女子プロでもトップクラス。

“新潟に舞衣子あり”とアマ時代からいわれた若林舞衣子のドライバーは女子プロでもトップクラス。

 女子ツアー6戦目(西陣レディスクラシック、熊本空港CC)、23歳の若林舞衣子がまた韓国勢を押しのけて4年ぶりの復活Vを果たしました。これで、今季、6試合中4戦は日本の若手選手が優勝。ひさびさ日本勢の踏ん張りが目立ちます。若林は不振だった昨年、賞金ランキング“最後の一席”、53位で滑り込みのシード権確保でした。今季は開幕から2試合連続で予選落ち。前週も予選落ちでズルズルいきそうな坂道からの快勝で、いっそうの脚光を浴びました。07年プロテスト合格の服部真夕、一ノ瀬優希らとは同期生。有村智恵、笠りつ子、原江里菜らと同世代のニューヒロインの台頭は、日本女子プロ界、待ちに待った春到来になるでしょうか。


     ☆★       ☆★




男子の石川遼(右)とともにヨネックスと用具契約をしたときの若林舞衣子(左)。「年間3勝はしたい」と当時抱負を語った若林舞衣子に「へェー、3勝もですか?」と驚く石川遼だった。

男子の石川遼(右)とともにヨネックスの新商品発表に出席したときの若林舞衣子(左)。「年間3勝はしたい」と当時抱負を語った若林舞衣子に「へェー、3勝もですか?」と驚く石川遼だった。

 「本当にうれしいです。やっと終わって、開放感です!」若林のはじけるような笑顔が印象的でした。18番、池のあるパー5。いいドライバーを放ちながら「ライも悪かったんで・・」と、2オンは狙わず迷うことなく池の手前へ。68ヤードの3打目をピン手前1.5メートルに運んでこれを沈めるバーディーフィニッシュは、もう横綱相撲でした。追いすがる2位茂木宏美に2打差をつける7アンダー。4年に近い優勝の味は格別だったでしょう。ホールアウトした18番グリーンの周りでは、両手を何度も振り上げて勝利の喜びを表現していました。


“新潟に舞衣子あり”-若林はアマチュア時代からこういわれた強さでした。中3で日本ジュニア優勝を果たしたのを手始めに、新潟・開志学園高1年の04年に関東女子アマ、東日本女子パブリック選手権(地区決勝)に勝ち、05年には世界ジュニアの団体・個人(15~17歳の部)で2冠。07年にはプロテスト1発合格。プロ2年目の08年にはSANKYOレディスで初優勝して賞金ランク21位で初シードもとるなど、快調な足取りで階段を上っていました。ところがプロで1勝したあと、極度のスランプに陥って昨年は危ふくシードを落とす苦しみを味わいました。




日本の若手の奮起で女子ツアーの人気は今年も上々。ギャラリーで賑わう女子ツアー会場。

日本の若手の奮起で女子ツアーの人気は今年も上々。ギャラリーで賑わう女子ツアー会場。

「ショットが思い通りにならず、飛距離も落ちるし、悪いショットばかり。どうすればいいか分からなくなって、ゴルフが楽しくなくなった」と、悩みぬいた若林は、ワラをもすがる気持ちで昨年11月、岡本綾子プロの門をたたいたのです。弟子入りを許されたオフは、マンツーマンでスイングの指導を受け、ダウンスイングで左に突っ込む癖を直すため、軸回転のスイングに改造もしました。技術面だけでなく、日本酒好きの師匠と、酒どころ・新潟育ちの舞衣子が杯を酌み交わすその時間が貴重で、楽しかったといいます。岡本がいう一言、一言が「ためになることがたくさんあった」と舞衣子。不振にあえいでいた若林を心技ともに立ち直らせたのは、“日本酒”でもあったのです。首位で迎えた2日目の夜、このコースは立ちにくいホールがあっていいスイングができない、と訴えた舞衣子に「ゴルフってそうやってひとつひとつ覚えていくものなのよ」と、諭したのも岡本。なんでもないその一言で、肩の力が抜けたという舞衣子でした。




2年連続で日本女子ツアーの賞金女王に君臨するアン・ソンジュ(韓国)。今年は日本の若手で打倒・アンがなるか!!

2年連続で日本女子ツアーの賞金女王に君臨するアン・ソンジュ(韓国)。今年は日本の若手で打倒・アンがなるか!!

 1メートル65の恵まれた体躯からの長打は早くから若林の看板でした。高校時代に彼女を取材したとき、ドライバーはじめ、どのショットも右腰から左腰までのハーフショットで通しているのを目撃して驚いたことがあります。当時、新潟のレッスンプロのコーチを受けていた若林でしたが「フルスイングするとワンクラブで10ヤードずつ変わるが、ハーフスイングだと5ヤードずつ刻んで計算できる。それにハーフに抑えるとショットが安定するから」と、スイングの土台作りに励んでいた舞衣子の残像が鮮明に残っています。プロになったいまは、もちろん長いクラブはフルスイングしていますが、その端々にハーフショットで鍛えた舞衣子スイングの面影が残って見えます。




左手首の負傷で開幕から3試合を休んだ有村智恵。いまや女子プロ人気を背負う智恵の、遅まきながらの巻き返しが注目!

左手首の負傷で開幕から3試合を休んだ有村智恵。いまや女子プロ人気を背負う智恵の、遅まきながらの巻き返しが注目!

 今年は、開幕戦のダイキンオーキッドで22歳の斉藤愛璃が飛び出し、2、3戦こそ韓国勢にとられましたが、すぐに笠りつ子(ヤマハレディス)、佐伯三貴(スタジオアリス)と日本勢が取り返し、西陣では23歳の若林舞衣子が栄冠を奪いました。左手首の負傷で開幕から3試合休んだ有村智恵、肩の不調で開幕からずっと大事をとっている大山志保。いまひとつ調子の出ない横峯さくらや諸見里しのぶ。期待の大きい藤本麻子や森田理香子らもエンジンに点火するのはこれからでしょう。「いまの日本の女子は素材のいい若手が大勢いる」(小林浩美LPGA会長)というとおり、一握りの韓国勢に蹂躙(じゅうりん)されているのはおかしいのです。2年連続アン・ソンジュ(韓国)にとられている賞金女王のタイトル奪回は、日本の若手の悲願です。今年はこのあと2勝、3勝とブレークしてくる選手は誰でしょうか。日本の若手軍団への夢をいだかせるスタート戦線といっていいでしょう。