魔が潜む裾野CC18番!8度目の挑戦でまた勝てなかった中嶋常幸

12回目のファンケル開催記者発表に列席したシニアたち。(左から)PGA森静雄会長、尾崎直道、中嶋常幸、池森賢二会長、羽川豊、芹澤信雄、渡辺司、水巻善典(都内のホテル)
12回目のファンケル開催記者発表に列席したシニアたち。(左から)PGA森静雄会長、尾崎直道、中嶋常幸、池森賢二会長、羽川豊、芹澤信雄、渡辺司、水巻善典(都内のホテル)

 50歳以上が戦うシニアツアー。今季3戦目のビッグカード「ファンケルクラシック」(優勝賞金:1,500万円)は、酷暑の静岡・裾野CCで行われ、52歳の高見和宏が一昨年の同じ大会に続いてシニア2勝目を飾りました。3日間9アンダーとした3人によるプレーオフの熱戦でしたが、これに加わった57歳の中嶋常幸が注目。12回目を迎えたシニアツアーの老舗大会に強い思い入れのある中嶋ですが、8回目の出場でまたもプレーオフ負け。永久シード選手の中嶋が、どうしても勝てない因縁のこの試合。中嶋常幸はなぜ裾野CCを征服できないのでしょうか。

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 大会用に作られた今年のパンフレットに書き込んだ中嶋常幸のコメントを特別に紹介しましょう。

57歳になっても衰えぬ飛距離と闘志!中嶋常幸は苦手?な裾野CCのファンケルで今年もプレーオフに進出。8度目の挑戦でまた涙をのんだ。
57歳になっても衰えぬ飛距離と闘志!中嶋常幸は苦手?な裾野CCのファンケルで今年もプレーオフに進出。8度目の挑戦でまた涙をのんだ。

 「ファンケルクラシックは、シニアツアーの意義を感じさせてくれた大会。それに報いたい、勝ちたいという気持ちが強い。決して得意なコースじゃないけど、毎年打開策を考えて挑み、今年こそ、と思っている。僕は、キャリーで250ヤード飛ばなくなって予選も通らなくなったらレギュラーツアーも卒業するつもり。今でもそれをクリアしているという気概を、シニアでも見せたい。今年は、勝ちたい気持ちをもう一度、自分の中に新鮮に思い起こしたいんだ」

 1954年10月20日生まれ。あと2ヵ月で58歳になります。レギュラーツアー59勝。シニアになって日本シニアオープン3勝など計4勝しているスーパースターです。その中嶋が思いをはせるファンケルクラシック。今年で12回目を迎える大会ですが、“シニアの元気が日本の元気!”とキャッチフレーズを掲げる池森賢二ファンケル名誉会長(大会会長)の情熱が素晴らしく、中嶋らの報恩の気持ちはつのるのです。

 この大会2勝している室田淳もこういっています。
「ファンケルはシニアツアーに最も力をいれてくれている大会のひとつ。社員の皆さん総出で大会を支えてくれて、すごくツアーを応援してくれているのがよくわかります。レギュラーツアーでは味わえない独特の雰囲気があります。それに感謝し、報いるためにも頑張りたい」と。

 そうした大会のムードを感じとるように毎年ギャラリーもよく入るトーナメントです。ファンケル製品のプレゼントなどのサービスもいきとどき、今年も最終日には9,366人、3日間合計では2万3,802人と、シニアツアー1大会の新記録を作りました。

思い入れの強いファンケルクラシック、8度目の挑戦でも初優勝成らなかった中嶋常幸(左)。
思い入れの強いファンケルクラシック、8度目の挑戦でも初優勝成らなかった中嶋常幸(左)。

 中嶋常幸がそんな大会でどうして勝てないのでしょう?毎年上位にはくるのですが、最後の勝利がつかめない。06年には1打リードした最終18番(パー5)で室田淳のバーディーで並ばれプレーオフ。18番でのPOは、ほぼ同じ位置からの第2打。先に打った中嶋が「右からの風と思ったのに、左からの逆風だった」と5Iで右の林の外へ曲げてOBのダブルボギー。確実に刻んで3オン2パットのパーに収めた室田にしてやられました。07年には、最終日首位で迎えた中嶋を1打差で追う室田が、ボギーなしの68で回って逆転V。中嶋は首位に並ばれた10番(パー5)では、2オンしながら50センチのを外す3パットでパーに終わるなど、室田の追撃を受けるスキをみせ、18番ではショートカットした第1打が、左の林にひっかかってロストボールとなって万事休す。5打差の5位に沈みました。2年連続で室田との優勝争いに敗れた中嶋は「天敵・室田淳!」と、嘆いたものでした。

 中嶋にとって“鬼門”のパー5の18番。左曲がりで、2打目からは打ち下ろし。グリーン手前には大きな池・・というレイアウト。第1打、林越えのショートカットに成功すれば、2オンは可能ですが、打ち下ろしになる2打目は左足下がりになり、その右サイドの林のすぐ後ろはOBゾーン。イーグル、もしくはバーディーチャンスなのですが、一つ間違えればボギー、ダボの恐怖が待っています。

2年前の同大会でシニア初優勝。2年後にシニア2勝目を挙げた“ファンケル男”高見和宏(裾野CC)
2年前の同大会でシニア初優勝。2年後にシニア2勝目を挙げた“ファンケル男”高見和宏(裾野CC)

 中嶋は「あのホールはどうも立ちにくい。セカンドも左足下がりになるし構えにくくて気持ち悪い。もう少しなんとか(改良)してくださいよ」と、池森会長に“泣き”をいれた年もありました。ホントに苦手なホールなのでしょう。06年は右にOB、07年は左の林につかまるミスで連続逸勝。今年も本戦ではこの18番、第1打が左の林につかまって出すだけでしたが、第3打を1.5メートルにつけてバーディーとしてプレーオフに食い込みました。しかし、最後はまたこのグリーンで2メートルのバーディーパットを外して1ホール目で脱落でした。

 ホールアウト後の中嶋常幸です・・
 「9アンダーでプレーオフになるとは思わなかったけど、それなりに頑張ったよ。今回は16番のバンカーでも苦しんだね。仕方ない。(最後)入るもゴルフ、入らないのもゴルフ・・。できることはやりました!」

 さっぱりと短い敗戦のコメントでしたが、“また勝てなかった”悔しさが、にじみ出ていました。炎天下、57歳にしてここまで頑張れた中嶋常幸の意気やよし!ということろですが、このスーパープレーヤーにして、どうにもならない苦手コース(ホール)というのは存在するものなんですね。

 3人プレーオフを制して、この大会2勝目を挙げた高見和宏。1500万円を稼ぎ、開幕戦に勝った尾崎直道と賞金レースのトップ争いを演じています。あと5試合しかないシニアツアーですから、生涯縁のなかった賞金王への夢まで膨らんできた大きな1勝でした。