「タイガーを目指します!」ーミケルソン&タイガー!!世界のトップに胸を借りた松山英樹。次はパットの名手、S・ストリッカーと同組

WGCブリヂストン招待では1R、2Rと松山英樹と回ったタイガー・ウッズ。2日目は61で松山を「すごい」と感嘆させた。
WGCブリヂストン招待では1R、2Rと松山英樹と回ったタイガー・ウッズ。2日目は61で松山を「すごい」と感嘆させた。

 日本ゴルフ界の星、松山英樹(21)が世界選手権シリーズのブリヂストン招待(米オハイオ州アクロン・ファイアストーンCC)を、通算1オーバーの21位で終了しました。3日目に17位まで上がって、トップ10入りが期待されましたが、最終日は3バーディー、4ボギーの1オーバーに終わり、注目の米ツアーシード権確保も次週のメジャー、全米プロまで持ち越されました。全英オープンではフィル・ミケルソンと2日間一緒に回り、そのミケルソンは勝者となりました。1週おいたブリヂストン招待ではタイガー・ウッズと同組で回り、そのタイガーも2位に7打差をつける豪快な今季5勝目です。世界のトップ級の2人と、じかに4ラウンドしたエッセンスは、松山の心と体に深く染み込んだに違いありません。次週全米プロでは、タイガーが「宇宙一うまい」と言ったとされるパットの名手、スティーブ・ストリッカー(米)との同組が決まっています。松山英樹はどこまで幸せで、大きくなっていくのでしょうかー。

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 予選落ちのない世界選手権のブリヂストン招待。松山は初日からリラックスできたはずなのに、そうはいきませんでした。憧れのタイガー・ウッズと初めての同組ラウンド。初日朝の練習グリーンで、通訳を介して初対面の挨拶を交わした英樹は、地元の大ギャラリーの中で10番からの第1打を放ちました。タイガーがいきなりセカンドをピン20センチにつけるバーディーで大歓声が上がったのに対して、2オン2パットのパー発進はむしろ上々のスタート。3バーディー、3ボギー、1ダブルボギーの2オーバー72で初日の英樹は41位。4アンダーの3位タイにつけたタイガーとは早くも6打差がつく“出遅れ”でした。

 今大会は第1ラウンドから、通常の3人1組でなく2人1組のプレー。V候補筆頭。この大会にはすでに7勝。今季は4勝と絶好調を取り戻しているタイガーの“相手”に選ばれた松山は、地元のメディアにも大きくとりあげられ「マツヤマは世界メジャー最近2戦でともにトップ10フィニッシュしている」と、報じられました。2日目の松山は3バーディー、1ボギーの68と落ち着きを取り戻し、通算イーブンパーにして19位に浮上しました。その英樹の目前で展開されたのはタイガーの“ワンマンショー”でした。2番(パー5)でイーグルを奪ったあとは、取るは取るはの7バーディー。ノーボギーで9アンダーの61。2日目を終わって2位に7打差をつけるタイガー・チャージを目のあたりにしました。

全英OPのミケルソンに続き、ブリヂストン招待では憧れのタイガー・ウッズと同組になった松山英樹。ともに大会勝者に輝いた二人から、深い感銘を受けた。
全英OPのミケルソンに続き、ブリヂストン招待では憧れのタイガー・ウッズと同組になった松山英樹。ともに大会勝者に輝いた二人から、深い感銘を受けた。

 これまで、絶好調時のタイガーと一緒に回った選手は、その勢いに翻弄(ほんろう)されてほとんどといっていいほどスコアを崩しました。しかし、松山は負けていませんでした。16、17番では連続バーディーを奪うなど、終盤に強い英樹ゴルフをここでもみせてこの日2アンダー。「粘り強いゴルフができた」と順位を大きく上げたのはさすがでした。「タイガーはすごいな、と思ってみていましたけど、途中からこの人はどうしようもないな、と思ってきた。でも、こんなタイガーと一緒に回れてすごくよかった。いまはプロと小学生が一緒にやってるようなものでしたけど、あそこまでいければメジャーで勝てる選手になれるんだなと分かった」と、感激ひとしおの松山。全英オープンでのミケルソンに次いで、世界のトップに肌で接した経験は、そうざらにはできません。

「マツヤマはミスを恐れない選手だね。複雑なことはあれこれ何も気にしない。すごくアグレッシブでいいね。才能が発揮されるのは時間の問題」と、2日間の松山とのプレーでタイガーもしっかりと英樹の特徴を捉えていました。英樹には生涯忘れられない2日間だったでしょう。

 タイガーと別れた3日目と最終日。3日目は、3番で15メートルを3パットするなど前半で3ボギー。タイガーと離れた“緩み”かと思わせましたが、後半に入って10番では右のラフからの第2打をピン30センチにつけるスーパーバーディーに始まり、14番3メートル、16番1メートル、17番7メートルとバーディーパットを決め、イーブンパーでホールアウト。ジワリ2つ順位を上げて17位で最終日を迎えました。

 ファイアストーンは7400ヤードでパーは70。パー5は2つしかなく、16番のパー5は667ヤードというモンスターホールです。日本勢の谷口徹は「長い。ピンチの連続でくたくた」といい、小平智は「風もあるし距離が長くて神経を使う。日本のコースの2倍疲れる」とハットオフでした。最終日にトップ10入りを狙った松山は、「スタート前は3~4アンダーでいけばトップ10に入れると思っていた。前半うまくいった(2バーディー、1ボギー)ので、少し気が緩んだかも。これだけショットが乱れると、連戦とか長旅の影響かなと思ってしまう。いまのままでは来週(全米プロ)、予選落ち濃厚なので、しっかりと修正したい」と、大反省です。タイガーと離れた反動?  確かにこの1ヵ月“世界一周ツアー”といわれた松山のスケジュールは強行。6月13日からの全米オープン、帰国して休まず20日からの日本ツアー選手権、27日からのミズノ、7月4日からの長嶋茂雄招待セガサミーと4連載。1週あいて18日からの全英オープン、米国に渡ってのカナダオープン、8月1日からの世界選手権シリーズ・ブリヂストン招待、今週は8日から全米プロと、また4連戦です。タイガーとの2日間を終えてホッとした心の隙間もあったかもしれません。
 しかし4日間を21位で終えた松山はきっぱりと言っていました。「どこにいっても勝てるような選手になりたいです。タイガーを目指します!!」

 若い21歳とはいえ、世界のトップ級の試合を転戦してきた心身の疲労はかくせません。しかし、ここまできたいま、立ち止まることはできないでしょう。今週の全米プロで“賞金ランク125位以内”に入って、一気に来季のシード権をとりたいところです。全米プロの第1、第2ラウンドの組み合わせでは、松山は米ツアー12勝のスティーブ・ストリッカー(米)とジェーソン・ダフナーと同組が決まっています。ミケルソン、タイガーの次はパットの名手・ストリッカーと一緒に回るのは、これまた大きなチャンスです。タイガーが「(世界ならず)宇宙で一番」と、称えたというパットのうまさでは定評のあるS・ストリッカーです。松山がストリッカーから直接盗み、教えられるパットの極意は、なにものにも代えがたい財産になるでしょう。

 次々とすばらしい体験を続ける前途洋々たる松山英樹です。高い資質の持ち主だけに、さまざまなものを吸収してますます大きくなっていくのでしょうか。
 今回の遠征は、この全米プロが最後の予定でしたが、そのあとのウインダム選手権(8月15~18日ノースカロライナ州)への出場も交渉中との情報もあります。いずれにせよ、今度日本へ帰るときは、晴れて来季の米ツアーライセンスを引っ提げての凱旋になるはずです。苦戦が続く僚友・石川遼が推薦を受けて全米プロの出場が突如決まりました。2週前のカナダOPに続いて、このところ明暗分かれる二人ですが、そのプレーが再度見られるのも、見ものです。