残り2試合で奇跡の爆発成るか? 英樹と明暗!! 米シード権喪失の危機・石川遼

6月下旬の日本ツアー選手権宍戸ヒルズで顔を合わせた石川遼(左)と松山(右)。この時も松山7位、石川は予選落ちだった=茨城・宍戸ヒルズ
6月下旬の日本ツアー選手権宍戸ヒルズで顔を合わせた石川遼(左)と松山(右)。この時も松山7位、石川は予選落ちだった=茨城・宍戸ヒルズ

 今年から米ツアーのシード選手として本格参戦している石川遼(21)が、来季も米国に留まれるかどうか。尻に火のついた絶体絶命の危機に直面しています。20試合に出場して予選落ちは半数の10試合。最高順位はバイロン・ネルソン選手権の10位(5月)がありましたが、ほとんどは40位以下の下位に低迷。残り試合が少なくなった先週のRBCカナダオープンでも2日目の予選カットはクリアしたものの、3日目に今季ワーストタイの80をたたき、米ツアー独特の規定“セカンドカット”で、最終日はプレーできなくなる最悪の結果。現在賞金ランクは149位で、石川にとっての残り試合は「2」。来季のシード権獲得の125位以内に入るには崖っぷちの状態に陥り、もしダメなら下部ツアー選手と争う「入れ替え戦」(下部ツアーファイナルシリーズ4試合)でわずかな生き残りにかけることになります。喜び勇んで米国に乗り込んだ栄光の米ツアーも、1年限りでしっぽを巻いて帰ってくるのでしょうか??

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 全米OP10位、全英OP6位・・メジャー連続トップ10入りを果たした日の出の勢いの松山英樹は、英国からそのまま米国ツアー入り。RBCカナダオープン(カナダ・オンタリオ州)では久々に石川遼と再会。練習ラウンドを共にして21歳同士は旧交を温めました。しかし、勝負の世界は厳しいものです。日本では先輩プロの遼クンも、この1年で立場は完全に逆転しました。スポット参戦で来季の米ツアーライセンス取得を目前にしている英樹とは対照的に、遼はこの1年は四苦八苦。華やかな全英オープンの“裏番組”で組まれたトップ選手不在のサンダーソン・ファームズ選手権(米ミシシッピ州)にも出場。賞金を稼ごうとした石川は、ここでも予選落ち。パットの試行錯誤が続く中、この試合でシャフトの短いパターを投入。さらにグリップを逆手で握るクロスハンドまで採用してなんとか這い上がろうと必死の連戦を続けています。

ショットが安定せず米ツアーでも苦戦が続く石川遼(6月の日本ツアー選手権宍戸ヒルズで)
ショットが安定せず米ツアーでも苦戦が続く石川遼(6月の日本ツアー選手権宍戸ヒルズで)

 そして注目のRBCカナダオープン。「英樹も出るので楽しみ。お互い違う立場になったけど、自分は自分で頑張る」と、悲壮な覚悟の石川でしたが、初日69で4打差の16位発進した英樹に対して、遼はショットを乱して5バーディーはとったものの3ボギー、1ダブルボギーのパープレー。69位の出遅れです。「先週までいい感じで打てていたドライバーが、今日は乱れた。もったいない。このコースは飛ばなくてもフェアウェイから打つことが大事なのに、それができなかった。あすは修正する」と、笑顔も消えていました。2日目もフェアウェイを捉えたティーショットは4度だけと苦戦続き。最後の3ホールで持ち直し、18番(パー5)では残り235ヤードを3番アイアンで2オン。バーディーを奪って辛くも予選を通過。2日間とも69の英樹が9位に浮上したのに対して、遼は63位でぎりぎりの通過でした。

 この試合は米ツアー独特の予選カットが採用されていました。予選通過者が多い場合の処置として「79人以上であれば、第3ラウンドで70位タイ以下は2次カットされる」という規則です。その3R、6番でダブルボギー、7、10番もボギー。12番で9メートルを沈め、唯一のバーディーを奪いましたが、
13番ではバンカーから1度で出ずダブルボギー。18番パー5では2打目をグリーン左のギャラリースタンド方向へ曲げ、第3打をバンカー。第4打も出ただけでグリーンに乗らず、第5打はピンをオーバーするなどさんざん。80の大たたきで最下位に沈み、2次カットを初体験。最終日のプレーを許されませんでした。

米ツアーから一時帰国して出場した日本ツアー選手権も予選落ちした(茨城・宍戸ヒルズ)
米ツアーから一時帰国して出場した日本ツアー選手権も予選落ちした(茨城・宍戸ヒルズ)

 石川はこの試合をふくめ残りは3試合。その貴重な1試合で賞金100万円と、フェデックスポイントは1点だけ。合計ではフェデックス213点。賞金ランクは149位。残り試合はリノタホ・オープン(8月1~4日)と3週後のウィンダム選手権(8月15~18日)。リノタホは松山も出場するWGCシリーズのブリヂストン招待の“裏カード”で、ポイントは低いのが気になります。

 カナダオープンで最終日まで進めなかった石川は「取り返そう、取り返そうとしてボギーが重なった。残り試合、気落ちしないで次にショットを修正する」と、追い込まれた苦しさを吐露していますが、もうここまできたら、残り2試合、開き直って遼らしい爆発を期待するしかありません。シード権を逆転で守るためには、リノタホ、ウィンダムともに5位以内に入るくらいの奇跡を起こしてほしいものです!

全米OP10位、全英OP6位と世界のメジャー、連続トップ10入りの松山英樹。好調なゴルフで米ツアーシード権も目前に(6月の日本ツアー選手権宍戸ヒルズで)
全米OP10位、全英OP6位と世界のメジャー、連続トップ10入りの松山英樹。好調なゴルフで米ツアーシード権も目前に(6月の日本ツアー選手権宍戸ヒルズで)

 米ツアーは今季から来季にかけてツアー運営の大改革が実施されます。リーマンショック以降のスポンサー離れに加えて選手の年金の高騰が米ツアーの財政を締め付けているのが原因です。試合数も年々減少。経費の増大という悪循環を何んとか是正しなくてはならないのです。米ツアーは「レギュラーツアー」「プレーオフ」「フォールシリーズ」の3部構成ですが、今季からはシーズン終盤に組まれていたフォールシリーズは廃止。12月に6日間ほどで行ってきたQスクール(QT=予選会)も撤廃されます。そして2014年度シーズンは、新年からではなく13年の10月に開幕する大改革です。

 廃止されるQスクールに代わり、レギュラーツアーの賞金ランク125位に入れなかった75人(200位まで)と、下部ツアーの上位75人の計150人によるトーナメント4試合(入れ替え戦)が行われます。下部ツアーの上位25人は、来季のレギュラーツアーへ昇格となりますから、それ以外の上位25人が新たに来季のレギュラーツアーのシード権をゲットすることになります。石川は、もしシード権を失うことになれば、このカテゴリーを狙うことになるでしょう。この一年間、ほとんどいいことがなく、精神的にも疲れ果てているでしょう。その結果に、シードを失ってこの入れ替え戦を戦うようにでもなれば、QTに勝るとも劣らない身を切るようなサバイバル戦になるでしょう。そこまで持っていかずに、何んとかシード権確保の残り2試合にできないでしょうか・・。

註⇒石川遼はこのあと、全米プロゴルフ選手権の主催者から推薦で出場権を与える旨の通達を受け、資格のなかった全米プロに突如出場がきまりました。5年連続5度目の出場で、今季のメジャーはマスターズに次いで2戦目となります。残りはリノタホとウィンダムの2試合しかなかった石川に大きなチャンスがやってきたわけで、賞金ランク125位以内への“生き残り”へ、上位入賞が待たれます。