09年の夢、ふたたび!! 横峯さくら、久々の年間複数勝利で復活。

4ヵ月半ぶりに今季2勝目を挙げた横峯さくら。1440万円の優勝賞金ボードを抱えてニッコリ(フジテレビ中継より)
4ヵ月半ぶりに今季2勝目を挙げた横峯さくら。1440万円の優勝賞金ボードを抱えてニッコリ(フジテレビ中継より)

 横峯さくら(27)が、久しぶりの年間2勝の複数勝利です(マンシングウェア東海クラシック)。11年は1勝、昨年は0勝と長いスランプに落ち、“さくらももうトシ?!”といったカゲの声も聞かれ始めた今年、見事なカムバックといっていいでしょう。「27歳283日」と史上2番目の年少記録で、12人目のツアー通算20勝。同時に生涯獲得賞金が史上3人目の9億円を突破しました。通算50勝を挙げている“別格”の不動裕理(36)を追う“2番手の記録”を続々と築き上げるさくらですが、この8月には3年4ヵ月続いた予選通過にもピリオドを打ったばかり。「立場を考えると、これからのゴルフ人生を充実させたいという気持ちはある」ー円熟の境に入ったさくらが、一味違ったゴルフを見せ始めています。賞金ランキングも2位に浮上、09年の史上最大の逆転女王再現が現実味を帯びてきました。

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今季2勝目を挙げた横峯さくら。27歳での通算20勝は史上2番目の年少記録。
今季2勝目を挙げた横峯さくら。27歳での通算20勝は史上2番目の年少記録。

 09年に年間6勝を挙げたのをピークに、さくらの優勝ペースはガクンと落ちたままでした。10年2勝、11年1勝、12年0勝と下がる一方。毎試合のように上位での争いを演じていた戦いぶりが消えていました。昨季は優勝争いも少なく、6月のアース・モンダミン杯は、最終日に1位を守れず2位。10月の富士通レディスではなんと、最下位の50位に沈むありさま。プレーオフに持ち込んだ10月のマスターズレディスではキム・ソヒ(韓)に敗れ、同じく2日目まで1位に立っていたツアー最終戦、ツアー選手権リコー杯(11月)も決勝ラウンドで崩れて6位・・。あの“強いさくら”はカゲをひそめていました。

 今季のさくらも、開幕戦(ダイキン・オーキッド)で、入れれば勝ちの4メートルのイーグルパットを外し、新鋭・森田理香子に名を成さしめました。5月のサイバーエージェントでは全美貞を逆転で破り、出場59試合ぶりの涙の復活優勝でした。ショットやパットにも悩み続けたさくらが、絶好調時を思い出させる勝負強さを取り戻したのです。「30歳前に結婚して引退します」と公言していたのですが、このとき「長く選手生活を続けたい」と、前言を翻(ひるがえ)しました。8年ぶりに優勝なしに終わった昨季を経験して、さくらの考えが徐々に変わりました。「いままで、仕事として淡々とツアーをこなしている感じでしたが、いまはしっかりゴルフと向き合えるようになった」と述懐しました。8月のNEC軽井沢72ではショットの不調で、10年4月から続けていた連続予選通過が、101試合でストップ。「緊張感がやっととれた」と、すべてをリセットして新しいさくらのスタートができたのも好材料だったのかもしれません。これまで悩まされてきた「左へ左へというショット」がなくなってきたのが、さくらゴルフ復調への基盤となっています。

左へ左へと曲がってさくらを苦しめてきたドライバーもすっかり修正された。
左へ左へと曲がってさくらを苦しめてきたドライバーもすっかり修正された。

 今週は、最終日の厳しい争いの中、藤本麻子を1打リードして迎えた14番パー4。運もさくらに味方しました。第1打を大きく右に曲げ、急な傾斜を転がり落ちるところでしたが、木に当たってはねたボールが、座って観戦中の女性の太ももの上に乗るハプニング。無罰でドロップできた位置からは前が開け、残り180ヤードを5番ユーテリティーでグリーン手前まで運び、3メートルのパーパットをねじ込むナイスパー。このラッキーで、次の15番では5メートルのバーディーパットを沈め“強いさくら”を久々にみせつけました。これで優勝へ大きく近づいたのでした。

 50センチの短いウイニングパットは無造作に決めました。大歓声に包まれました。27歳での節目の20勝は、不動裕理の26歳314日に次ぐ史上2番目となるスピード達成。不振の続いたこの3年間、勢いをつけた若手が続々と頭角を現してきました。勝負の世界、一度後退すると、なかなか元の位置へは戻ってこられないのが通常です。プロ10年。この12月13日には28歳を迎える難しい年齢にさくらもさしかかっています。
「(勝てなかった昨季は)仕事としての義務感だけで試合を消化していましたけど、これからは目の前の1勝に貪欲に向かっていける。これからのゴルフ人生を充実させるさせるためにー」(さくら)

賞金ランク2位に上がったさくらは4年ぶり2度目の賞金女王。さらに夢の30勝(永久シード)へ、目標を新たにした。
賞金ランク2位に上がったさくらは4年ぶり2度目の賞金女王。さらに夢の30勝(永久シード)へ、目標を新たにした。

 長いスランプには見舞われましたが、まだまだ老け込むトシではないでしょう。この8月から、世界のサッカーを経験してきた森川陽太郎メンタルトレナー(32)を帯同しているのも、さくらを変える大きな要素になっているようです。人にはない“何かをやってくれる魔力”を秘めたハスラー。若さの力ではなく、円熟した“さくらゴルフ”をもう一度見たいと願うさくら党は、まだまだ多いでしょう。2位に浮上した賞金ランクは7096万2904円。1位の森田理香子との差は約2160万円。09年、この大会の優勝をきっかけに、残り10試合で諸見里しのぶとの約4389万円差をひっくり返す大逆転劇で初の賞金女王を勝ち取ったシーンが思い出されます。今季も残り10試合。「調子がいいので勝てるときに勝ちたい」と、2度目の賞金タイトルへの挑戦状をたたきつけるところまで復活しました。さらには30勝で手にできる夢の永久シード権。「永久はムリかなと思っていたけど、1勝ずつ積み重ねていけば・・。とれたらラッキーですね」ー。

 復活Vを果たしたさくらには、ビッグタイトルへの重なる夢が、再び浮かび上がってきました。残りは10試合です。 
★横峯の生涯獲得賞金も9億円突破!で史上2位★

 9億448万1872円

 (1位は不動裕理の13億1186万1747円。3位は産休中の福嶋晃子で9億251万1483円)