19歳・比嘉真美子“堂々たる敗戦”。次のメジャーでリベンジか?!

“二人だけのPO”6ホールの死闘で決着。優勝のイ・ボミ(右)と抱き合って健闘を称える比嘉真美子(背中)=北海道・恵庭CC(テレビ朝日の中継より)
“二人だけのPO”6ホールの死闘で決着。優勝のイ・ボミ(右)と抱き合って健闘を称える比嘉真美子(背中)=北海道・恵庭CC(テレビ朝日の中継より)

 19歳のルーキー、比嘉真美子が史上初の10代メジャー制覇を手の届くところまで追い詰めながら、無念の“池ポチャ”で逃がしました。日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯(北海道・恵庭CC)。最終日の15日が風雨による悪天候で競技中止。3日目まで11アンダーでトップに並んでいた比嘉真美子とイ・ボミ(韓国=25)の二人だけによるプレーオフ決着となりました。6ホール目の15番で、ドライバーを3Wに持ちかえて打った第1打が、左サイドの池に跳ね、痛恨のダブルボギーとなって栄冠はイ・ボミの手に。歴史に残る“二人だけのプレー・オフ”に敗れた比嘉は「悔しさはありますが、悔いのあるショットは1打も打っていません」と、胸を張りました。イ・ボミの安定したゴルフに勝てませんでしたが、比嘉の“堂々たる敗戦”は、次のメジャーに生きてくるでしょう。

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 プレーオフは16番(パー3)、15番(パー4)、16番の3ホールを使い、最初は3ホールのストロークプレー。決まらなければ15番と16番を繰り返すサドンデスに切り替える方式でした。3ホールは両者パープレーで譲らず、サドンデスに入った4ホール目の15番で流れが変わりました。イ・ボミの第2打はグリーン左奥のラフへこぼれ、傾斜を転がり落ちたボールは林の入り口。一方、比嘉はピン左2.5メートルにつけるバーディーチャンス。絶体絶命のイ・ボミに、以前は谷口徹の専属だった清水キャディーの絶妙のアドバイスでした。打ち上げてピンまで22ヤードのアプローチ。「最初は安全に9番アイアンのチップショットでいこうと考えたけど、キャディーさんが、上げてエッジに落とせば止まる、というのでそちらを選んだ。難しかったけどうまく打てた」(イ・ボミ)。打ち上げるカラーまで12ヤード、さらにピンまで10ヤード下るアプローチ。ラフの中、枯葉もからまるややこしいライから、イ・ボミの58度のSWショットは、見事に狙い通りの球筋でピンの下1メートル強に寄り、奇跡のパーセーブでした。それでも入れれば勝ちだった比嘉の“2.5メートルのバーディーパットは決まらず、“明暗”を分けました。

プレーオフ6ホール目。第1打を左サイドの池に入れ、ダブルボギーとして敗戦の決まった比嘉真美子。「一生懸命やった結果だから悔いはない」ときっぱり。次のメジャーでのリベンジを誓う。(テレビ朝日の中継より)
プレーオフ6ホール目。第1打を左サイドの池に入れ、ダブルボギーとして敗戦の決まった比嘉真美子。「一生懸命やった結果だから悔いはない」ときっぱり。次のメジャーでのリベンジを誓う。(テレビ朝日の中継より)

 「優勝は運がないと勝てないから神様に祈りました。一人ではムリです」(イ・ボミ)
 「どんなにいいプレーをしてもいい流れがきても、勝つときは運を味方にしないとダメ。いいだけでは勝てません。今日のウイナーはイ・ボミさんでした」(比嘉)

 ここまで常にイ・ボミより内側につける強気のゴルフを続けた比嘉でしたが、この15番で流れがガラリと変わったのです。16番もバーディーパットが決まらず、運命のこの日3回目の15番を迎えます。イ・ボミは正確にフェアウェイをキープ。前の15番ではドライバーが飛び過ぎて池に近いラフまで突っ込んでいた比嘉は、飛び過ぎを警戒しました。加えて、ティーマークが3ヤード前方に移動してあったためにドライバーをやめ、3番ウッドを握りました。安全を求めたはずのこのショットが左に曲がり、左サイドの池の渕に落ちる痛恨のミスショット。これが勝負を分けました。

 比嘉真美子のコメント

プレーオフ6ホール目、池ポチャのあと、池の横からグリーンを狙う比嘉真美子。これもグリーン右に外れてダブルボギーとする。(テレビ朝日中継より)
プレーオフ6ホール目、池ポチャのあと、池の横からグリーンを狙う比嘉真美子。これもグリーン右に外れてダブルボギーとする。(テレビ朝日中継より)

 「きょうは体もよく動き、結構飛んでいたのであの15番では番手を変えました。ただのミスショットです。タイミングがちょっとずれました。3日間を通して悔いの残る1打は打っていません。一生懸命やった結果がこうなので、悔しい気持ちはあるけど、よくできたと思います。イ・ボミさんはショットもアプローチもすべてに関してステディな感じ。メジャーに勝つのは、自分の評価も周りからの評価も高い。そこを勝ち抜くのが実力ある選手へのステップなのでこれからも勝っていきたいです」

 あと一歩で及ばなかったメジャー制覇。真美子次の目標は10月3日からの日本女子オープン選手権(相模原GC東コース)。1年前の日本女子プロ選手権では、プロテスト合格(8位)直後で裏方として参加。スコアボード係やギャラリー整理でプロとしての研修をさせられました。それからわずか1年でのこの成長ぶりです。日本ジュニア優勝、日本女子アマ2連勝(11年、12年)と、アマ時代から脚光を浴びた新鋭。12年のプロテスト一発合格のあと、今年4月のヤマハレディスで早くもツアー初優勝。6月のリゾートトラストで2勝目。8月のリコー全英女子オープンでは佐伯三貴とともに日本人最高位の7位。コンパクトでムダのないスイングで、ドライバーの平均飛距離は260ヤード。足腰の強いバネを持った飛ばし屋。これから日本女子プロ界を担っていく期待の一人です。

二人プレーオフ。6ホールすべてをパーで収める安定したゴルフで今季初優勝したイ・ボミ(韓国)と小林浩美会長(右)。=(テレビ朝日中継より)
二人プレーオフ。6ホールすべてをパーで収める安定したゴルフで今季初優勝したイ・ボミ(韓国)と小林浩美会長(右)。=(テレビ朝日中継より)

 安定したゴルフを続けて比嘉を自滅に追い込んだイ・ボミは、通算4勝目中、プレーオフでは3勝負けなしと無類の勝負強さです。今回も15ヤード前後まで絞ってあった狭いフェアウェイをきっちりとキープする正確なショットを放って安定したゴルフでした。昨年は3勝して賞金ランキング2位が光っていました。今季はまだ優勝こそなかったですが、トップ10が7回。パーオン率72.22%。パーセーブ率89.65%でともにランク1位。この優勝で賞金ランク19位から9位に上昇、1位の森田理香子との差は約4300万円に縮まってきました。キュートな笑顔から「スマイルキャンディ」の愛称で親しまれていますが、どうしてどうしてかわいい顔の内に秘めた勝負根性は、たいしたものです。
 今季も「ここまできたので、これからは賞金女王を考えてやりたい」ときっぱりと打倒森田を宣言しました。

 日本女子オープンでの再度の比嘉真美子×イ・ボミの対決を期待しましょう。