海の向こうでは世界今季初メジャー、マスターズが華やかに行われましたが、日本国内では女子ツアーの新鋭、22歳の成田美寿々が、最終日6ホール連続バーディーの離れ技を演じて″逆転娘〝 の本領を発揮しました。開幕第6戦、スタジオアリス女子オープン(兵庫・花屋敷GCよかわコース。10~12日)。最終日、3打差の2位で出た成田は1番からいきなりバーディー発進、6番まで連続でバーディーを決めるスキのないゴルフをみせ、8バーディー、ノーボギー、64のビッグスコアで逆転優勝。プロデビューから4年連続Vのツアー6勝目。今週もトップを走った美人プロ、藤田光里(20)を下すなど〝かわい子ちゃんハンター〝を自ら宣言するご愛嬌でしたが、底知れぬ強さもみせてきた本格派・美寿々です。
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「逆転の成田もいいですけど、かわい子ちゃんハンターと呼んでください」ーインタビューで言われる前に、自分から切り出した美寿々です。プロ入り6勝中5度までが最終日の逆転勝ち。それも12年は穴井詩(富士通レディス)、13年はリ・エスド(韓国・NEC軽井沢72=PO)、14年はフォン・シャンシャン(中国・ワールドレディス・サロンパス杯)。同14年、香妻琴乃(サマンサタバサレディース=PO)15年は藤田光里(スタジオアリス)と、並み居る美人プロを引きずり降ろしての勝利をつかみとっているのです。
今回も完全な敵役?プロ3年目のチャーミングな藤田光里がツアー初優勝を目指して初日からトップを走っていました。後押しする声援の多さに「ぶっちゃけ、私はアウエー感でいっぱい。私がバーディーとったときも拍手はあるけど、光里ちゃんがバーディーとったときの盛り上がりようったら、3倍くらい・・沸いてる、沸いてるって感じ」(成田)と、いうありさま。しかし、根っからの負けず嫌いな美寿々です。「アウェイこそ私のホームなんだ、負けないぞとやってました。アウエー感が私は燃えますすね」とキッパリ。
1番では9Iで2㍍につけたチャンスを確実にものにしてバーディー発進。パー5の2番で4㍍の下りを入れ、調子に乗ります。3番(パー3)をとって首位に並ぶと、4番(パー4)では残り100ヤードから70㌢につけるスーパーショットが出て単独首位に立ちます。続くパー5の5番は3打目が「1歩」(成田)とピン1㍍弱にからむアイアンも冴えわたって5連続。6番(パー4)ではカラーからの6㍍もきれいに沈んで6連続。「もう止まらないと、帰り道が怖い・・」(美寿々)。ゾーンい入ったゴルフでアウトは30。インでも2つのパー5を確実にとってノーボギーの8アンダーを叩きだしました。
☆通算9アンダー。″逆転娘〝成田美寿々のコメント
「難しいホールの朝1番でバーディーは大きかった。ガッツポーズが出ましたね。2、3番でも長めのパットが入ったので、今日はいけるかな、と・・。パットも思ったところにしっかり打てた。5連続はあるけど6連続は初めてです。6連続で光里ちゃんも相当プレッシャーになって焦ったと思うけど、後半盛り返してきて(光里も)いいゴルフをしてたと思います。今週は″トラックマン(測定器)〝を使って100ヤード以内を細かく練習しました。それが上手くいって調子がよかったのかなと思います。それと今週、ドライバーのシャフトを替えました。それで楽に振れるようになった。ドライバーが安定して飛んでたのが勝因ですかね。3日目に伸びないと勝てないですからね。アクサ(2週前。前週は休場)で最終日に伸ばせたので嬉しくて、3日目にエンジンがかる自分のゴルフが戻ってきたかなと感じていました。今年は自身5戦目で勝てたので早い目覚めかなと思っています。平均ストロークを69点台を目指します。69点台で賞金女王獲れなかったらしょうがないですね。オリンピック出場も目指してますから、1年間日本で活躍してもアメリカで活躍されるとかなわないので、米ツアーのQT(ツアー予選会)も、もしかしたら受けるかもしれません」
進化を続ける22歳。賞金女王よりも来年のリオデジャネイロ五輪出場を大きな目標にしています。その出場権ゲットには世界ランク日本人2番手以内に入らなければなりません。
中学時代からソフトボールやマリンスポーツもたしなみ、スキューバダイビングの資格も持つスポーツウマン。拓大紅陵高に入ってからゴルフ志向を強め、井上透コーチに師事して練習を積みました。関東ジュニアや東日本女子パブリック選手権(ともに10年)を制覇。日体大1年在学中だった11年、プロテストを受験して敗退。秋のQT(予選会)にトライして26位に入り、12年からのツアー出場権を獲得しました。10月の富士通レディスを20歳で初V達成。首位に5打差8位タイからの大逆転でした。LPGA新人賞、日本プロスポーツ新人賞、GTPAルーキー・オブ・ザ・イヤーの新人タイトル総なめにしたプロ1年目でした。日体大は1年で休学。13年にはパットの名コーチとして知られるデーブ・ストックトン(米)のレッスンを受けるなど積極的な動きをみせ、7月には2度目のプロテストを受けて合格。8月にはNEC軽井沢72で猛チャージでPOに持ち込み、またも逆転優勝を決める強さをみせました。14年には年間3勝を挙げる順調な足取り。いまや女子プロトップクラスへ、足を踏み入れてきた大物感あふれるプロです。
逆転こそ、真骨頂とする美寿々のゴルフは、魅力にあふれています。そしてそれは実力の証明でもあるでしょう。
「逃げ切り、完全優勝とかいうのもやりたいけど、″逆転優勝の成田美寿々〝という肩書は欲しいですよね」
この欲の深さ?こそが、美寿々ゴルフの醍醐味でしょう。