2009年が明けてゴルフ界はまた新しい話題でいっぱいです。石川遼の出現でにわかに活気を取り戻してきた日本の男子ツアーですが、残念ながら日本男子の開幕は4月16日からの東建ホームメイト杯までまだ当分はお預けです。ツアー2年目を迎える石川遼はそれまでどうやって過ごすのでしょうか。海の向こう米ツアーは、1月8日からのメルセデスベンツ選手権(ハワイ)で開幕します。遼クンの今季序盤のターゲットは、そうした″戦場〝を求めての″海外挑戦〝になります。旧冬クリスマスの日、石川遼にインタビューしました。その一部をここでご紹介しましょう。
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人気沸騰で08年を終えた石川遼は、このオフ連日引っ張りだこの忙しさです。私のインタビューは、彼が08年最後に表彰された日本プロスポーツ大賞の表彰式の日でした。午前中は首相官邸に麻生太郎首相を訪問、日本プロスポーツ大賞の内閣総理大臣杯を麻生首相から直接授与されて興奮さめやらぬ顔で東京ドームホテルにやってきました。その一室で、首相に会ったときのオレンジピンクのネクタイもそのままで、石川遼はいつものようにけれんみなく話し出しました。
「08年素晴らしい年でしたが、1年で一番嬉しかったことと一番辛く悲しかったことは何ですか?」
遼『嬉しかったときも悲しかったときも僕はどれもファンのみなさんがからんでくるんですよ。一番嬉しかったのは、やっぱりマイナビABCでプロとして初優勝したときですね。でも、僕自身がやった!というよりも、あれだけ多くの方が応援してくださったからそのおかげだと思えてくるんです。ファンが喜んでくだされば僕も盛り上がりますし、ホントに僕、ファンのことが気になるのです。一番辛かったのは、予選落ちが続いたときも2日目、最後のホールまでファンの方がすごい応援をしてくれていたことですね。しいて言えばこれが辛かった一番ですね。予選落ちする僕を何で最後まで応援してくれるのかな、と思っちゃうんです』
「石川クンはトーナメントのインタビューでもいつもファンのことを真っ先にいいますね」
遼『丸山茂樹さんが日本のトーナメントに戻るようになりましたけど、丸山さんの組もギャラリーが多いのですね。そういう選手というのは限られていると思うし、僕ってすごくラッキーな人間だと思っています。実際はどうか分からないですけど、僕にとってギャラリーの応援はスコアを変えてくれる!と思っているんです』
「僅か1年あまりで、日本中で石川遼を知らないものはいないくらいの人気者になったけれど、その″人気〝についてどう思いますか?」
遼『確かに町を歩いていても声をかけられますね。アマチュアの中でも僕は無名でしたし、知り合いのプロもいませんでした。そういう選手がいきなりこんな日本中に顔が出るようになったので、初めは慣れなかったですね。いまでもまだ慣れない部分はあるのですが、買い物にも行けないとか、知らない人から声をかけられるとか、ちょっとこれは辛いな、というのは一つか二つしかないんです。それ以外はプラスなものしかないので、辛いといっても100対1くらいですかね。人気というか、みなさんに応援してもらえるようになって、嬉しいことの方が100倍くらい多いですね』
行くところ黒山のファンに囲まれ、石川の組には何千というギャラリーがいつもつきます。僅か2年足らずで″日本一〝の人気者になったシンデレラボーイは、こんな風に言っていました。
15歳8ヵ月(高1)のアマチュアでマンシングウェアKSBに勝った07年5月ころに比べると、体重は10㌔あまり増え、プロ宣言した08年1月からの1シーズンでは2㌔増えて現在は71㌔。身長は1㌢伸びて173㌢です。肉が好物でまだまだ伸び盛りの遼クンですが、いまではトレーナー付きの食事を心がけ、隣に座ったトレーナーから口に運ぶものひとつひとつの栄養分などを説明してもらっているそうです。『ですから量は食べますが、バランスよく食事はとれていると思います』といっていました。いまでは顔もふっくらとしてきた石川遼です。
さて、今季の石川遼は″世界へ〝がキーワードです。憧れのマスターズ出場が大きな目標ですが、これは特別招待枠で新年を迎えて招待状がくるかどうか。もう一つは、3月最終週でチェックされる最後のチャンス、世界ランキング50位以内に入れるかどうかです。昨年度、石川は世界ランキング62位で年を越しました。あと一息で50以内が見えてきましたが、日本で4月までは試合がないのははがゆいことです。このままの位置をキープすれば2月26日からのWGCアクセンチュア・マッチプレー選手権(世界ランク64位までが出場)に出られます。それ以前には、1月第2週から開幕する米ツアーへの推薦出場を狙っています。『ちょうど学校の春休みに向こうのトーナメントもあるので、チャンスを与えられる試合があれば積極的に行きたい』と、高校生と2足のわらじをはく遼クンは、春先の海外チャレンジに強い意欲をみせています。そこで活躍すれば世界ランキングも上がって、マスターズへの道も開けてきます。『2年目のジンクスなんて、言葉は知ってますが考えたこともないですね』と、遼クンには後ろ向きの思考など持ち合わせていないようです。
4月16日まで試合のない日本で、トレーニングばかりやっていても仕方がありません。
まず今週の1月9日(金)~11日(日)の3日間、タイ東部のアマタ・スプリングスCCで開催される欧州ツアー対アジア選抜チームの対抗戦「第3回ザ・ロイヤル・トロフィー」のメンバーの一人として石川遼が出場します。日本からは石川のほか谷原秀人、谷口徹が選ばれています。アジア選抜の主将は尾崎直道がつとめます。『このオフは週4日のペース』(遼)でトレーニングを続けている石川。年末の30日には尾崎将司宅を訪ねいろいろとアドバイスをもらいました。年が明けた4日には茨城・しもふさCCで新年初めてラウンド練習を行って、9日からのタイ遠征への最終仕上げに入っています。まだオフに入って4週間目という調整の難しい時期ではありますが、今年手始めの″アジア代表〝としての石川遼を注目しましょう。当日のナマ中継は残念ながらありませんが、大会1週間後の18日(日)午後2時から、テレビ朝日がドキュメンタリー風に伝える「中継特番」を組むことになっています。