日本の女子ゴルフツアーでまた初優勝者が出ました。プロ2年目の女子大生プロ・原江里菜(20)=東北福祉大3年=です。NEC軽井沢72(17日最終日)で今季22試合を消化し6人目の初Vです。しかも原は、初日からトップに立ち、連日の60台で3日間で22バーディー、ボギーは一つだけという圧倒的な強さで2位の李知姫に7打差をつけた優勝でした。21アンダーは、98年に服部道子がマークした19アンダーを2打更新する54ホール日本人最少ストロークでもありました。何度も上位にきながら初Vが遠かった原にようやく女神が微笑みましたが、原もプロテストを受けていないQT出身プロです。
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長いのも入るわ、短いのもきっちりと決めるわ! 3日間を通じて驚異的な原のパッティングは初日23、2日目22、最終日25パットで合計70パット。協会に記録が残る90年以降では最少パットの新記録でした(これまでは今年の廣済堂で出した飯島茜らの71)。まさに″パット イズ マネー〝を実践した原のゴルフでしたが、今年は4月のフジサンケイレディス(川奈)では最終日2打差の首位にいながら、上原彩子に1打差で逆転された悔しい試合があっただけに感慨もひとしお。フジサンケイでも2日目にコースレコードの8アンダー、64を出しているが、軽井沢でも2日目に9アンダー、63、最終日は7アンダー、65をマークするなど爆発的なスコアを出せる潜在能力を秘めているのが魅力です。軽井沢72は現在108ホール(6コース)ある西武が作ったリゾートコース。全体的にフラットで、池がからむ程度でそう難しいコースではなく、グリーンもリゾート用で難解ではありませんが、それにしても原のスコアは見上げたものです。
原は現在東北福祉大の通信制の3年生。
愛知県豊田市の生まれで10歳から坂田塾の東海校でゴルフの基礎を教わりました。宮里藍を慕って東北高に入学。2年で全国高校選手権個人V。3年で日本ジュニア15~17歳の部V。世界ジュニア2位。06年に東北福祉大に進学、日本女子学生選手権V。03年から06年まではJGAのナショナルチームのエースとして活躍しました。06年秋にはプロを目指してQT(クォリファイングトーナメント)を受験して43位。翌年のフル出場はできませんでしたが、8割方のツアー出場をゲット。それを期に07年1月1日付でTPD非会員登録プロとなり、大学は通信制に転籍してプロゴルファーとなりました。ルーキーシーズンの昨年は3971万円余を稼ぎ賞金ランク19位で見事シード権を獲得しました。 つまり原はプロテストを受けていないプロですが、最近このプロテストを受けないでQTから入ってくる選手が増えました。06年に初優勝した藤田幸希、07初優勝の佐伯三貴や今年6月に勝った三塚優子・・そして原江里菜とみんなQT組です。昨年はTPD登録非会員選手のうち9人が賞金ランク上位に入って今季のシード権を獲得しています。TPD組でも初勝利を挙げた選手は、本人の希望があれば実技試験免除で女子プロ協会会員になれる規定があります。原江里菜もこの勝利で、オフには晴れて協会員となる見込みです。QT制度は、ツアーへの門戸を広げる狙いで協会が02年から導入したものですが、これが外国選手も含めてツアーへの活性化に拍車をかけているようです。
プロ2年目でついにブレークした原江里菜ですが、昨年オフからは本格的な体力づくりに着手していました。阪神・岩田稔投手らと合同合宿をやり、さらに今季は鈴木沙織さん(21)と専属トレーナー契約を結び、試合後のランニングや腹筋運動を続けてきました。「みんなが休みたい月曜日も江里菜はしっかりトレーニングを欠かしていなかった」(東北高の同級生・有村智恵)と、同僚も認める努力が実ったのでしょう。人気の女子プロ界にまたまたニューパワーの参入です。
◇今季女子ツアー初優勝は6人目
宋ボベ ダイキンオーキッド(3月)
申智愛 ヨコハマタイヤプロギア(3月)
上原彩子 フジサンケイ(4月)
イム・ウナ ヴァーナル (5月)
有村智恵 プロミス (5月)
原江里菜 NEC軽井沢72(8月)