人気の女子プロゴルファーを目指してまた一人、たくましい高1・15歳のアマチュアが頭をもたげてきました。平成20年度の文部科学大臣杯全国高校ゴルフ選手権(9日最終日=栃木・那須野ヶ原CC、パー72)で2日間とも70、70、4アンダーで高校女子の部優勝を果たした青木瀬令奈さん(群馬・前橋商高1年)。宮里藍も福嶋晃子も古閑美保も栄冠をつかんできたこの歴史ある大会。すでにJGAナショナルチームのチームジャパンジュニアのメンバーにも選ばれて海外遠征もこなしている青木瀬令奈は、今年はこの高校ゴルフ選手権のほかにも全日本女子パブリックアマチュアや関東ジュニアでも優勝。実力をみせてきた末恐ろしい金の卵です。
◇ ◇
連日30度を超える猛暑の中、瀬令奈さんは安定したゴルフを展開しました。初日は2アンダー70で3位タイにつけると2日目(最終日)もバーディー攻勢。結局初日と同じ70で回って4アンダー、前日トップの森美穂(福井工大福井高1年)ら4人の2位グループを1打かわして逆転勝ちを収めました。1㍍52㌢とやや小柄ですが、足のサイズは24センチ。柔軟な体をフルにつかって攻めるゴルフは魅力的です。負けず嫌いの性格も勝負師的。この2日目、応援に来ていた父親・博昭さん(44)が熱中症で倒れ救急車で運ばれたのを横目にみながらバーディーを連発したずぶとさは見上げたものです。
高校生になった今年、グングンと腕を上げてきた瀬令奈さんですが、小2のとき父親と祖父から手ほどきをうけたというゴルフ。2つ上に姉・茉里奈さん(前橋商高3年)がいますが、2人そろってゴルファーを志し、茉里奈さんも今回の高校選手権では19位タイ(3オーバー)に入っています。で、中学時代から目立った存在だったのは妹の瀬令奈さんですが、JGAのチームジャパンジュニアは中3の昨年から2年連続で選ばれています。
今年5月に行われた全日本パブリックアマの東日本地区決勝では、ライバルの酒井美紀(福島・東日本国際大学付属昌平高2年)にプレーオフで敗れましたが、酒井が5Wでグリーンエッジまで運んだのに対し、3Wのフルショットでグリーンに30ヤード届かなかった青木瀬令奈は「私はそれ以上のクラブはないんですもん!」と憤然とした顔で答えていたものです。その酒井には、6月に行われた全日本女子パブリックアマでリベンジを果たし、見事に酒井を2位に抑えて優勝しました。とにかく瀬令奈さんの負けん気のゴルフには驚かされます。
飛距離は230~240ヤードとあと一息の飛びがほしいところですが、年齢とともいそれも改善されていくでしょう。アプローチとパターには一級品の折り紙つきで、彼女のスコアメークの源はここにあるようです。特にパターは今年5月、「ロレックスジュニアゴルフ選手権」(群馬・サンコー72CC)の表彰式で会った石川遼クンにアドバイスを受け、「簡単にいうと左足にウエートを多くかけて構えるようにしてから入るようになりました」(瀬令奈)とメール友達の遼クンに感謝・感謝でした。群馬生まれの群馬育ち。「空っ風の中で(ゴルフも)やってきたから風は好き。風が吹いてくると気合が入るんです」と、頼もしいことをいいます。すでに海外遠征は「6回くらいは行っています」といい、その都度海外で交わしたバッジをブレザーの襟の布が隠れるほどつけています。07年はフランスで行われたエビアンマスターズ・ジュニアにも出場してロレーナ・オチョア(メキシコ)と会い感動したそうです。
在住の前橋市内で父親・博昭さんは音楽スクールやライブハウスを経営しています。母親・三枝さん(42)もピアノの先生という音楽一家で、瀬令奈さんもジャズをピアノで弾きドラムもたたくという才能も持っています。そのかたわら両親は瀬令奈、茉里奈姉妹のゴルフ競技には必ずといっていほど帯同して応援を続けています。
女子プロを夢見る予備軍は多く、競争は激しいですが、まだ高1ながら小粒だがぴりりと辛い″世界を目指す〝青木瀬令奈からは、目を離せません!