★『開かれたマスターズ』資格のない2年目17歳の石川遼にマスターズ特別招待状!

プロ2年目、資格のなかったマスターズへ特別招待選手で初出場がかなった石川遼。ガッツポーズで喜びの表現!
プロ2年目、資格のなかったマスターズへ特別招待選手で初出場がかなった石川遼。ガッツポーズで喜びの表現!

 新星・石川遼が早くもマスターズプレーヤーになりました。石川は世界ランキング60位で、マスターズ出場権を得る50位には入っていません。くるのか、こないのか、特別推薦枠でもしかしたら招待状が舞い込んでくる期待を持たせたここ1ヶ月でしたが、1月22日の午後9時過ぎ埼玉・松伏町の自宅にマスターズ委員会から国際電話が入りました。『石川遼を特別招待でマスターズトーナメントに招待する』という連絡でした。プロ2年目、17歳でのマスターズ出場は、大会史上2番目に若い出場選手です。最年少は1952年に出場したアマチュアのトミー・ジェイコブス(米)で17歳と1ヵ月21日。石川は大会初日に17歳と6ヵ月23日になります。石川にはマスターズ(4月9日開幕、オーガスタナショナルGC)までに米ツアー3試合への推薦出場が決まっており、別にアクセンチュアマッチプレーへの出場も濃厚で、計4試合の米ツアーをこなしてからのマスターズ挑戦となりそうです。

 

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地球儀でマスターズが開催される米ジョージア州オーガスタを確認する石川遼。
地球儀でマスターズが開催される米ジョージア州オーガスタを確認する石川遼。

「うれしいサプライズというか、無表情で笑顔にもなれいまま電話を切りました」と、その瞬間を遼クンは表現しました。マスターズ委員会からの国際電話はもちろ英語によるものでした。母親由紀子さんが受話器をとり、すぐに「代わって!」といわれて石川が受話器をとりました。英語には興味を持つ石川ですが、突然の電話口では慌てました。「話していることはよく分かりませんでしたが、途中でインバイト ユー・・・マスターズ(invite you・・・Masters)という言葉が聞こえたので、あっ、マスターズに招待してもらえるのかな、と分かりました。信じられませんでした。実感が湧かなかった」と、突然のオーガスタからの電話について話しました。

 

 ゴルフをやるものなら誰しも憧れるオーガスタナショナルGCでのマスターズ。小学1年でゴルフを始め、1年前、16歳(高2)でプロ宣言。その席で″最高の夢は?〝と問われた石川は「いつかはタイガー・ウッズとプレーしたい」そして「マスターズで勝ちたい」と敢然といい切りました。そのときの世界ランキングは433位でした。あれから僅か1年での夢の実現とは驚かされました。信じられないという石川自身の気持ちも当然でしょうが、世界ランキング60位まで積み上げ、日本での昨季の賞金ランキングは5位。その実績と人気が買われたのでしょう。
 大会チェアマンのビリー・ペイン氏は石川遼を特別招待で招くことについて「彼はあの若さにして招待を受けるに足る技術と実力を発揮している。このチャンスは、ニュースターを世界の舞台に立たせ、マスターズを発展させるというわれわれの目的にもかなうものだ」とのコメントを出しました。

 

この笑顔と豪快なスイングで米ツアーの強豪相手に善戦できるか? 石川遼のドライバーショット(昨年12月の3ツアーズで)
この笑顔と豪快なスイングで米ツアーの強豪相手に善戦できるか? 石川遼のドライバーショット(昨年12月の3ツアーズで)

 昔のマスターズ委員会では考えられない出来事です。″独断と偏見〝に満ちているとまでいわれたマスターズ委員会からは、よほどの実績と資格がない限りマスターズへの招待はされなかったものです。日本ツアーでは賞金王になりながらマスターズに呼ばれなかった選手もかってはいました。しかし時代とともに『開かれたマスターズ』へと変身し始めているのです。ひところ欧州勢が優遇された時代がありましたが、03年以降は特にアジア地域からの選手に目が向くようになりました。成長著しいアジアのゴルフマーケットを無視できなくなったのでしょう。04年は当時世界ランキング178位の張連偉が中国人として初めて選ばれました。07年にはインドのジーブ・ミルカ・シンが初出場して話題を集め、08年はプラヤド・マークセンがタイ選手として初めてのマスターズに登場。谷原秀人は世界ランキング68位、日本の賞金ランク4位で特別招待を受けました。今回、石川に白羽の矢が立ったことは、″マスターズも甘くなった〝ともいえなくはありませんが、若年層への普及にも力を入れているマスターズ委員会の大きな変換といえそうです。

 

 とはいっても、世界はもちろん米国でも石川遼はまだ無名選手です。だが、その知名度は日に日に急上昇の気配をみせています。今年は米ツアーのノーザントラストオープン(2月19日~22日)、アクセンチュアマッチプレー(2月25日~3月1日=2月16日発表の世界ランキング64位以内なら出場。石川は現在60位)、トランジションズ選手権(3月19日~22日)、アーノルド・パーマー招待(3月26日~29日)と、マスターズ前に4試合の出場がほぼ決定しています。
 次々と米ツアーへの招待出場が決まる17歳のヤングボーイには、海外のメディアも「驚異のティーン」として報道を始めています。夢の米ツアーの舞台で強豪相手に善戦を挑めば『イシカワ・リョウ』の名前は世界を駆け巡るでしょう。大きなチャンスがやってきました。

 

マスターズ前の米ツアー、トランジションズ選手権に招待出場が決まってトランジションズ社のアジア地区代表、ポール・F・パイファー氏(右)と握手を交わす石川遼(東京・セルリアンタワー東急ホテル)
マスターズ前の米ツアー、トランジションズ選手権に招待出場が決まってトランジションズ社のアジア地区代表、ポール・F・パイファー氏(右)と握手を交わす石川遼(東京・セルリアンタワー東急ホテル)

石川遼はこう話しています。
 「これほど多くのトーナメントが招待してくれるとは思いませんでした。米国ではジュニア時代に5、6試合は経験しましたが、PGAツアーの雰囲気を味わうのは初めてなので、向こうの風とか芝とかに立ち向かっていきたい。流れに乗っていけたらいいと思いますが、そんなに甘くはないかなとも思います。世界の人が僕のプレーを見てくれて、一人でも″いいプレーだった〝といってくれたらうれしいです。自分の持っているもの以上のものは出せないと思うので、自分のものを100%出していきたい。夢だったことがこんなに早く実現できて信じられない気持ちですが、『信じられない・・』ばかりで時間が経ったらもったいない。これからもボールをバンバン打って完璧な状態にしてアメリカに渡りたいです。米国にいってもゴルフのルールは同じなので、落ち着いてそして気持ちは高揚させて、ティーオフの時間に遅れないで1番ティーに立つことを祈っています。自分が想像していることよりもっと素晴らしいことがアメリカにはあると思いますので・・」
 

 活躍次第では米ツアーは出場試合のチャンスも増えてきます。米ツアーでいきなり「賞金ランク125位以内」のシード権まで獲得してしまったらどうするのでしょう?
 「次のチャンスがきたら? そのときはそのときに考えます。自分の中ではそれほど早くアメリカに行きたいという強い気持ちを持ってるわけじゃないです。いま、ここにいられるのは日本のジュニアの大会や日本ツアー機構のおかげだと思っていますから」

 2009年。石川遼はどこまで走るのだろう!