昨年12月、30歳になった″若大将”池田勇太が、2打差3位からのカッコいい大逆転で今季初勝利(通算13アンダー)、賞金3000万円を獲得。日本勢開幕4連敗の危機も救いました。昨年8月のRIZAP KBCオーガスタ以来のツアー14勝目で、ツアー参戦2年目の09年から毎年優勝を続けている快挙も、8年連続に伸ばしました。3年ぶりに復活したパナソニック・オープン(千葉・千葉CC梅郷)。千葉県出身の勇太は2年前の14年、日本オープンでも舞台となった難コースでの連続大暴れ。今季は長年世話になったブリヂストンと決別、服装からクラブ、髪形まで一新した″新生・勇太”のスタートを切ったばかり。スロースターターを返上した開幕4戦目の初Vに「賞金王獲り」まで宣言する乗りようでした。
☆ ★ ☆
アジアに進出した海外開幕2試合、国内開幕の2試合目。今季もすべて海外勢に乗っ取られていた男子ツアーに男・勇太が立ちはだかりました。昨季の賞金王、現在ツアー″最強”といわれる金庚泰(キム・キョンテ=韓国)の猛追をかわしてのVには値打ちがありました。最終日、1番で3㍍につけたバーディーチャンスを着実にものにすると、2番ではグリーン右ラフから13ヤードをチップイン。連続バーディーで勢いをつけました。ティーショットを立木に当てた5番のセカンドの見事なリカバリー。「バーディーより大きいパーだった」(TVラウンドリポーターをした石川遼)と素晴らしいアイアンショットをみせてパーセーブ。「こんなにバーディーが取れて自分でもびっくり」(勇太)とパットも冴えて、前半6バーディー、ノーボギーの「29」。パットがやや乱れた後半も最後18番(パー5)ではセカンドでグリーン奥のエッジ。イーグルを狙ったチップは短かったが、イージーバーディーの締めくくり。「アイアンとアプローチのミスがない。全く隙がなかった」(石川遼)と、絶賛の18ホールでした。
これまで一番早かった勝利が6月(09年日本プロ)。夏から秋口にかけて調子を上げてきた勇太にとって、自身最速の4月の優勝。3年間、多忙を極めた選手会長の職から離れた今季。アマ時代から世話になったブリヂストン・スポーツとの契約を解消。ウエアや帽子、キャディーバッグはパーリー・ゲイツのマスターバニー・エディション。これまで3タックでダボダボのパンツは、いま風の細身のものに。シャツもタイトなタイプに変え、角刈りの頭も長髪にしてサンバイザーをかぶるなど、全身リニューアルした勇太を今年は売りにしています。
クラブ契約はフリーとなってさまざまなメーカーのものを試打。優勝した今回は、ドライバーはプロギア RS。フェアウェイウッドはキャロウェイXR16。3UTはミズノMP-フライアイ。アイアン(4~9I)=ヨネックスNICBフォージド。ウェッジ=ブリヂストン、52度、58度。パター=オデッセイ・ホワイトホットRX V-ラインファング。ボール=ブリヂストンB330Xプロトタイプ。
用具には細かく神経を使う勇太らしく、さまざまなメーカーのものを採り入れて本番に向かっています。さらにこのオフは、これまでにないハードトレーニングを敢行して筋力のアップにも力を入れました。好きなアルコールも抑えて肉体改造と取り組んでいる勇太がいます。海外開幕から4試合、すべてに出場して好調な滑り出しをみせてきました。シンガポール23位、ミャンマー8位、東建6位、そして4戦目の優勝。これまで16ラウンド中、60台は10回を数えます。世界ランク3位のロリー・マキロイ(英国)のスイングを参考にしてアイアンを磨いてきたそうですが、その効果が早くも結果として出てきたことは大きな自信になるでしょう。
国内開幕2戦目で″自身最速”初優勝の池田勇太のコメント。
「2年前、日本オープンで勝ったコースでまた勝てた。すごい縁だと思う。相性もいいんだろうね。千葉出身だから千葉県人が勝たないとね・・。今日は前半あれだけ伸ばせたのが大きかった。アイアンはずっとよかったから、あとはパッティングと思っていたけど、運も含めてそのへんがうまく重なったということですね。16番でリーダーボード見て、あとはムリせずにという気持ちでした。最後18番もいいティーショット、いいセカンド、いい形のアプローチで締めくくれたからよかったです。クラブも変えていろいろだけど、僕の苦労なんて大したことなくて、サポートしてくれるスタッフの人がすごく頑張ってくれているから感謝です。(クラブやウエアの)変化はやっぱり楽しいです。いままで自分にないことだからね。苦労は大きいですけど大分慣れてきて、何も苦にならない感じでやれています。(選手会長職を離れて)それに全部あてつけてはいけないと思うけど、でもこんなのんびりしたオフは初めてだからね。オフのトレーニングの時間が十分とれたことは大きかったですね。初めて早い時期に勝てて、これからの戦い、楽しませますよ。約束しますよ。次は15勝でしょ。16っていう数字はあまり好きじゃないので、17勝へ向けて頑張ります。30歳になって幸先よく勝てたから、これから行くぞ、みたいなとことが出てくると思う。遼(石川)がマイク持ってレポーターやってたけど、クラブ持って来い!って感じでしたね」
8年連続で、毎年勝利を挙げている勇太の実力はたいしたものです。ジャンボ尾崎に憧れて3タックのダボダボズボンをはき、義理人情にはことのほか厚い男・勇太のファンは数多いです。松山英樹や石川遼の人気者が米国ツアーに去り、″冬の時代”に悩む男子ツアーです。新しいスター登場が待たれる日々ですが、そんな男子ツアーでいま頼れる男は、ズバリ池田勇太でしょう。日本プロでプロ初優勝、ANAオープン、ブリヂストンオープン、ダンロップフェニックス、日本オープン・・とビッグトーナメントに強い勇太の大暴れこそ、低迷・男子ツアーの救世主につながるでしょう。