「オーガスタ並みのグリーンに挑戦しよう!」ー高速グリーン育成にすべてをかけるカレドニアン・ゴルフクラブ

高速グリーンの″快感”を経験できるカレドニアン・ゴルフクラブの18番グリーンとクラブハウス。
高速グリーンの″快感”を経験できるカレドニアン・ゴルフクラブの18番グリーンとクラブハウス。

5月の大型連休も終わって、ゴルファーにとってはいよいよ本格的なゴルフシーズンの到来です。北国を除けば、ほとんどの国内ゴルフ場はもう緑一色。心ワクワクの毎日です。そんな折、注目度がグンと高まっている超高速グリーンを売りにしているゴルフコースがあります。千葉県山武郡にあるカレド二アン・ゴルフクラブと同系列の富里ゴルフ倶楽部の両コースです。最高速では14フィートを目標にしているという両コース。通常はそこまではいかなくても10~12フィートの高速グリーンが用意され、まるでマターズのオーガスタナショナルを彷彿とさせる体験ができる異色のゴルフ場です。「オーガスタ並みのグリーンにチャレジしよう!」との企画でオープンコンペを実施しているカレドニアン・ゴルフクラブを取材、スリル満点のパッティングを体験しました。

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米国を中心に″世界の芝生”の種を取り寄せ、育成しているスペースが15番グリーンから16番ティーへ行く途中にある(千葉・カレドニアン・ゴルフクラブ)
米国を中心に″世界の芝生”の種を取り寄せ、育成しているスペースが15番グリーンから16番ティーへ行く途中にある(千葉・カレドニアン・ゴルフクラブ)

今年4月のマスターズ、日本からただ一人出場した松山英樹も「今年のオーガスタのグリーンはメチャクチャ速い」と、舌を巻いたのを覚えているでしょうか。確かに、パターでちょっと触っただけでコロコロと滑って行くボール。今年のオーガスタは強い風も吹いてグリーンは硬くなり、アンジュレーションの強いここのグリーンにはどの選手も神経を磨り減らした4日間でした。優勝したダニー・ウィレット(英国)のスコアが通算5アンダー。イーブンパーの松山英樹が7位タイというスコアを見ても難しかった今年のマスターズが分かります。毎年、メジャーのマスターズのグリーンは「13フィート超」にするのが目標のようですが、見る方は高速グリーンの面白さを堪能できます。

アマチュアゴルファーは、なかなかあれほどの速いグリーンは経験できませんが、そこそこの高速グリーンと遭遇した時の心のときめきは隠せません。速いグリーンにてこずってはみても「××コースのグリーンは速いぜ」という会話は、そのコースを褒める言葉。速さをけなす人はいません。グリーンが速いといわれれば、一度は挑戦してみたくなるのがゴルファーの思いです。そんなコースの一つが、成田空港近くにあるカレドニアン・ゴルフクラブと富里ゴルフ倶楽部です。

たまたま終日の雨にぶつかったその日のカレドニアン。「雨ならグリーンもスピードがあまり出ないだろう」と、半ばほっとした思惑は見事に外れました。当日のグリーンコンデイションは「10・5フィート。刈り高は3.2ミリ」(石井浩貴グリーンキーパー)でしたが、きれいに刈り込まれたグリーンは水はけもよくて速い、速い。下りなら、1㍍のパットを外すとスルスルと5㍍もいってしまう。返しも入らなくて簡単に3パットというパターンです。しかし逆に、5㍍超から10㍍前後のロングパットは、軽く合わせただけで、滑らかにボールがカップに近づいていくのが気持ちがいい。ラインさえ合っていれば、ロングパットがきれいにカップインしてくれる快感を味わえます。よく整備された高速グリーンだからこその醍醐味でしょう。

15番は、オーガスタの13番と同じくグリーン手前にはクリーク。グリーンサイドにはバンカーや花壇があって、きれいな花々が咲き誇っている。もちろんグリーンは超高速に仕上げられている(千葉・カレドニアン・ゴルフクラブ)
15番は、オーガスタの13番と同じくグリーン手前にはクリーク。グリーンサイドにはバンカーや花壇があって、きれいな花々が咲き誇っている。もちろんグリーンは超高速に仕上げられている(千葉・カレドニアン・ゴルフクラブ)

カレドニアンは「日本プロゴルフ選手権」(2000年)など多くのビッグトーナメントが開催されたチャンピオンコース。四季折々の花々がそこここに咲き乱れる美しいコース。中でも15番ホール(490ヤード、パー5)は、4つあるパー5の中では最も短いホールですが、グリーン右サイドから左へ流れる幅5ヤードほどのクリークが戦略性を高めるています。オーガスタ・ナショナルの有名な左曲がりの13番(パー5)を、右左を逆にしてイメージした右曲りのホールで、グリーン左サイドにはバンカーの列。周辺には桜をはじめ、さつき、つつじ、あじさいなどの花々が季節によって咲き誇り、美しい景観を醸し出している名物ホールです。

15番(パー5)はオーガスタナショナルの名物ホール、左曲がりの13番(パー5)をイメージして、逆の右曲りのパー5ホールになっている。
15番(パー5)はオーガスタナショナルの名物ホール、左曲がりの13番(パー5)をイメージして、逆の右曲りのパー5ホールになっている。

一般的なゴルフ場の普段営業時のグリーンは「大体、7~9フィート」(石井グリーンキーパー)というのが平均スピード。国内男子ツアーでは10~12フィートが標準的ですから、体験試打した当日の雨にも関わらず出ていた「10.5フィート。3.2ミリ」は相当な″速さ”でした。3パット(あるいは4パット)も覚悟しなければなりませんが、17番(パー3)ではカップ奥8㍍からのフックラインが滑るように転がってきれいにカップインしました。″遅いグリーン”では味わえない格別な気分のバーディーでした。

そんな魅力にあふれた高速グリーンはどうやって仕上げるのか。東京グリーンの早川治良会長の指示のもと「究極の14フィートグリーン」を実現するために費やしている手間と費用は莫大なものです。ただグリーンにローラーをかけて固めるといったイージーなやり方だけではできません。カレドニアンでは数年前からさまざまな芝の種を取り寄せ、育成してテストを続けています。現在もコース内では計14種の芝を育成、追跡していますが、一昨年の猛暑にも耐えて生き残った「Tyee(タイイー)」に、夏が早目に終わった昨年の気象条件に好結果を残した「007(ゼロゼロセブン)」=ともに米国産=を50%ずつ配合した新種を本コース内のグリーンに採用しています。

DSC00194「試行錯誤して現在いい結果を出しているのが、このTyeeと007です。淡い色のTyeeは暑さに強く、低い刈り高にも強い。それに昨秋から配合した007は色合いが濃く、夏にも強い。ベント芝は夏に弱いといわれてきましたが、去年の秋からこの二つをミックスさせていまのグリーンに仕上げています。私どもは夏でも速いグリーンを作りたいのです。いろいろ努力して徐々にスピードが出るようになってきました」(石井グリーンキーパー)

育成している芝生スペースに立ててある識別標識。現在カレドニアンが採用している「Tyee(タイイー)」と「007(ゼロゼロセブン)」の標識。
育成している芝生スペースに立ててある識別標識。現在カレドニアンが採用している「Tyee(タイイー)」と「007(ゼロゼロセブン)」の標識。

カレドニアンのすばらしいグリーンと高速は、裏方さんたちのたゆまぬ研究と努力で作り上げているのです。現在が終着点ではなく、芝の研究は将来につながっているといいます。すでにより高品質な芝を求め新輸入の米種「SAMURAI」の種を今春にまき、007を進化させた「777(トリプルセブン)」が今秋には輸入されるそうです。こうした新種がカレドニアンコース内の試験場にまかれて、テストされるのです。

究極の「14フィート」は簡単には出ません。石井浩貴グリーン・キーパーによりますと「14フィートは実現するとしても、冷気も入ってくる秋10月以降でしょう。我々は年間を通して12フィートを出すことを目標にしてやっています。ローラーはかけても1週に1~2回程度。芝生の選定の一方で、グリーン面がでこぼこにならず、思い切った刈り込みができるようにすることがスピードを出す秘訣」といっています。終極の目標である「14フィート」に向かって前進を続けるカレドニアンと富里両コース。あなたも仲間を誘って「オーガスタ並みの高速グリーン」に一度挑戦してみませんか。そして、もし、この秋「14フィートのスピード」に遭遇できたら、最高の幸せです!

註[カレドニアン・ゴルフクラブ]→1990(平成2).10開場。設計はJ・M・ポートレット氏(米国)。フェアウェイ、グリーンともに適度なアンジュレーションがある。池やクリークのハザードも多く、戦略性に富んだコース。トーナメントはPGAフィランスロピー(1992年)、日本プロゴルフ選手権(2000年)のほか、女子ツアー、シニアツアーなど多数開催した。コース内には300ヤードのドライビングレンジやアプローチ、バンカー練習場などを併設している。千葉県山武郡横芝光町長倉1658
℡0479・82・6161