暑さ厳しい夏の陣、男子ツアーの8月は最後の週のKBCオーガスタ(福岡・芥屋GC)まで3週間のお休み。というよりも″歯抜け日程〝で、ぎっしりと詰まった女子ツアーとの差をみせつけられています。そんな折、ツアー外競技の「長野オープン」(8月5、6日、長野・諏訪湖CC)に出場した71歳の杉原輝雄プロが、初日に71のエージシュートをやってのけて相変わらず元気なところを披露しました。杉原プロは昨年9月の日本プロゴールドシニア最終日に初エージシュートを達成して以来、この日まで4試合にまたがり6ラウンド連続エージシュートを続けました。長野の2日目は80をたたき、惜しくも″連続〝は「6」で止まりましたが、前立腺がんの転移がささやかれる中、杉原輝雄プロの執念にはいまさらながら驚くばかりです。
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6月14日で71歳を迎えた杉原輝雄プロは、アップダウンのある諏訪湖CCも平気な顔でプレーしていました。アマチュアも加わるペアリングで、プロも乗用カートに乗って移動できるルールだったのは助かったでしょうが・・。グリーンへ打ち上げていく9番(545ヤード)のパー5。2打で100ヤードほど残し、グリーン面が見えない第3打をピン左3メートルにピタリと乗せ、スライスラインに乗せて鮮やかなバーディー。クラブハウス近くで見守ったギャラリーからはヤンヤの拍手喝さい。杉原プロは「私が試合に出てくるのは、こうやって一人でも多くの人が私のプレーを見て喜んでくれることがうれしいからや」と話していました。ドライバーの飛距離はもう220ヤードそこそこですが、丘陵コースで難しい諏訪湖のグリーンも絶妙なライン読みやタッチでパーやバーディーをとっていました。初日は、優勝した高橋勝成らと並ぶ1アンダー71で9位タイ。自身の年齢以下のスコアでラウンドする「エージシュート」の達成でした。周りから「明日の最終日もぜひ!」と声をかけられ、杉原プロ「プレッシャーがかかるがな」と苦笑いしていましたが、2日目はアウトが42と乱れ、インは38と頑張りましたが80でがっくり。順位も33位タイ(7オ-バー)に終わりました。
エージシュートというのは、ある程度年齢がいかないと難しい記録です。杉原プロは70歳で昨年9月に行われた日本プロゴールドシニア(岐阜・谷汲)の2R(最終日)を70で回り生涯初のエージシュートを達成しました。そして今年、71歳の誕生日当日の6月14日に旭川オープン(旭川GC=ツアー外2日間競技)の初日、イーブンパーの70で回り、2度目の記念すべき誕生日エージシュートを成し遂げました。この大会は今年から「杉原輝雄メモリアルトーナメント」という副題がつき宮本勝昌、尾崎直道、飯合肇、丸山大輔(優勝)ら120人のプロが参加した大会でしたが、2日目には71で回り、2日連続のエージシュートで1オーバー33位タイでした。
さらに杉原さんの偉業は続きます。
7月9、10日に行われた関西プロゴールドシニア(新宝塚CC)では初日70のあと2日目7バーディー、ノーボギーの65を出して、2日連続のエージシュート。9アンダーで優勝まで勝ち取りました。これに続いての試合が先の長野オープンで、4試合、6ラウンド連続のエージシュートを続けたわけです。長野の2日目にこれが途絶えたのは残念ですが、これからの杉原輝雄、まだまだエージシュートを増産していきそうな勢いです。
シニアの試合だけでなくレギュラーツアーにも今季これまで4試合に出ましたが(すべて予選落ち)「今後は(自分が育った)茨木CCでやるパナソニックオープン(9月下旬)と秋のダンロップフェニックスくらいだろう」とのこと。茨木CCでは近々、石川遼(パナソニック所属)と宮本勝昌(選手会長)と3人での練習ラウンドを報道陣公開で行うことになっています。
老いてますます盛んな杉原輝雄プロですが、50年を越えるプロゴルフ生活で心配ごともあります。98年以来11年間闘病生活を続けている前立腺がんの経過です。筋力やパワーが衰えるからと手術や抗がん剤治療を拒み、漢方や女性ホルモンの投与で凌いできましが、最近になって少し異変に気がついそうです。
杉原輝雄プロ自身がこう話しています。
「がんがここえきてリンパに転移しているらしいんや。首筋のじゃなく下半身にあるリンパやけどちょっと気になっている。8月12日にもう一度検査をするが、医者によると″粒子療法〝というのをやるらしい」いまのところ体調に特別な変化はないそうですが、次回の検査の結果が心配されます。
杉原輝雄プロは前立腺がんを発症したころから始めている加圧式トレーニングで健康を維持してきました。最初は東大病院でしたがその後東京・府中の先生についてこのトレーニングを続けています。上腕部や足を強く締め付け、その状態で球を打ったりその他の運動をするというものです。かなりハードなトレーニングですが、これによって杉原プロの体力や健康が維持されてきたことも事実でしょう。「いまはこのトレーニングを自宅でもできるようになったから、これからも加圧式トレは続けるよ」と、まだまだ闘志は健在です。転移しているというがんの経過が良好になることを望むのみです!
《長野オープン》
今年で第9回目を迎えるプロアマ大会で、地元長野県ゴルフ場連盟と諏訪湖CCが主催する地域に根づいた活気のある試合。シニアプロを主にした40人のプロと、予選会を通ったアマチュア96人が参加。地元SBC信越放送のTV放映もあるという熱のこもった一戦で今年のプロの賞金総額は1200万円、優勝は250万円。2日間6アンダーで優勝した高橋勝成はじめ、尾崎健夫、飯合肇、三好隆、山本善隆、中村通、福沢孝秋らのシニアプロが顔をそろえる中、杉原輝雄プロは今年初めての参加。
☆杉原輝雄のエージシュート
計6回
07・9 「日本プロゴールドシニア」
2R「70」70歳
08・6 「旭川オープン」
1R「70」71歳
2R「71」71歳
08・7 「関西プロゴールドシニア」
1R「70」71歳
2R「65」71歳
08・8 「長野オープン」
1R「71」71歳