女子プロゴルフツアーも夏の陣、後半戦へ入ってきました。7月27日に終わったカゴメフィランソロピーLPGA選手権(千葉・習志野CC)は韓国の全美貞(ジョン・ミ・ジョン)が安定感抜群のゴルフで通算12アンダーで優勝しました。今年3試合目の4日間大会でしたが、賞金総額はこれまで最高の1億3000万円(優勝2340万円)。20試合目で韓国勢7勝目という韓国パワーの強さをみせつけました。今季最高額(現在まで)のV賞金を得た全美貞は今季2勝目で獲得賞金6064万5532円と積み上げ、トップを行く福嶋晃子に1323万余の2位に浮上。昨年の3週連続Vを思い起こさせる不気味な進撃です。
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全美貞の強さは夏とともにグングンと勢はいを増してきました。今年は序盤戦ちょっと精彩を欠いていましたが、6月のリゾートトラストで1勝目を挙げてからは毎試合トップテンを外していません。この試合、習志野CCはかって男子のサントリーオープンを長く開催して知られていますが、女子ではアウトをクイーンコース、インをサントリーで使ったキングコースとするコンポジットで設定されました。池のからむアメリカンスタイルのアウト。インは昔ながらの林間コースで距離もあってタフ。「インは別のゴルフ場と思ってやっています」という選手が多く、アウトで稼いでもインでスコアを持ちきれないケースが多かったようです。最終日の全は、その難しいインの上がり3ホールで3連続バーディーで上がったのは見事でした。アウトでも2バーディーを奪っていて、この日はノーボギーでベストスコアタイ67のラウンド。1打のリードで最終日スタートしましたが、どんどん2位以下を引き離し、2位三塚優子に5打差をつける圧勝でした。
全美貞といえば昨年のことも覚えている方も多いでしょう。5月には無敵の3週連続優勝をやってのけ、夏には2週連続Vを果たした張娜(チャンナ=中国)とともに″恐怖の韓・中コンビ〝といわれ日本勢の脅威となったものでした。175センチ、68キロの恵まれた体からゆったりした美しいスイングをみせる25歳の実力派です。05年から日本ツアーで戦い、賞金ランクも12位(05年)、2位(06年)、3位(07年)で、一昨年から2年連続で1億円を突破し9勝を挙げているトッププレーヤーです。今季の女子ツアーは2勝プレーヤーがなかなか出ませんでしたが、不動裕理、福嶋晃子に続き全美貞も″2勝組〝の仲間入り。今季は念願の賞金女王をはっきりと意識しながらの戦いぶりが不気味です。
全が使用しているパターにも注目です。いまプロの間でも大人気のスパイダーパター(テーラーメイドのヘッド体積の大きい蜘蛛を思わせるネオマレット型)。習志野でもこれが入りまくり、全はこのパターで早くも5戦2勝です。「(1勝目の)リゾートトラストから使って気に入っています」と話していました。16番のロングパットに続いて最後18番で8メートルのウィニングバーディーパットを沈めたのがこのパターです。
全は日本へきたときから日本語も達者な姉の美愛さん(30)と二人三脚のツアー生活をしています。美愛さんは、あるときは全のキャディーでしたし、マネジャーとしても日本語の先生(通訳)としても全をバックアップしてきました。その姉が5年前から指導を受けている金鐘哲コーチと8月9日にソウルで結婚式を挙げます。金さんは今秋日本ツアーの予選会を受ける予定ですが、受かれば「また日本で姉とも一緒にいられるから」と、全は金コーチの合格を心待ちしているようです。日本語学校にも通う熱心さで日本語も随分上手になって日本での人気も上がってきました。
全の日本での人気を見越した韓国焼酎の「眞露ジャパン」が今年から所属契約をしました。全が所属で、先輩の李知姫が同社のアドバイザリースタッフとなりましたが、李もすでに1勝していて二人の今季の活躍は素晴らしいものがあります。「韓国ではNO1の焼酎ですよ。私は眞露のビール割りが好き。いつも飲んでいます」という全は、ゴルフだけでなくアルコールにも強そうです!
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今週の女子ツアーは珍しくお休みです。人気の女子は開幕した3月第1週から最終戦11月最終週まで休みなくツアー日程が入っていますが、海外メジャーの全英リコー女子オープンが開催される今週ただ1週だけ日本での試合がありません。
全英には日本ツアーからは不動裕理、佐伯三貴、横峯さくら、馬場ゆかり、李知姫、イム・ウナ、宋ボベ。これに米ツアーから宮里藍と上田桃子が参戦します。今季未勝利で気になる横峯さくらですが、久しぶりに全英では父親・良郎さんがキャディーをつとめることになっています。昨年大会のセント・アンドリュースでは最終日、67を出して7位タイにはいった佐伯三貴ともども注目しましょう。