ミスショットに腹をたて蹴り上げたクラブが吹っ飛び、女性ギャラリーの足に当たって失格処分になるという前代未聞の″事件〝が起きました。シニアツアーのトッププレーヤー室田淳(53)がしでかした失態で波紋が広がりそうです。
事件は少し時間が経ちましたが、4月3日に行われた2日間大会のローカル試合、千葉オープンゴルフトーナメント(主催千葉日報社=千葉・富士OGMゴルフクラブ市原コース)の最終日でのことした。ツアー競技ではありませんが、これを重くみたPGAとJGTOは、近日中に何らかの処分を決定することになっています。
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室田は初日悪天候をついてボギーなしの5アンダー、67で回り単独トップに立っていました。ところが2日目の最終日、一転して調子を崩しスコアが伸びずに迎えた16番(202ヤード、パー3)。ティーショットをミスした室田は、持っていたアイアンクラブのヘッドを自分の足で蹴り上げたはずみで手からクラブが抜けて吹っ飛んだのです。それがギャラリーの女性の足(くるぶしあたり)に当たったのですから一瞬凍りついたシーンとなりました。室田は顔色を変えてかけより謝罪しました。幸い怪我の程度は軽く、コース関係者に連れ添われてコース医務室で手当てをし「湿布薬を差し上げました」(浅野支配人)ということです。
室田はこのハプニングのあともプレーを続け、この日は1アンダー、トータル6アンダーでホールアウト。クラブハウスでは当てた女性に再度謝っていたそうです。試合の方は、前日2位タイにいた篠崎紀夫が66で回り、通算10アンダーで優勝でした。プレー後この″事件〝について競技委員長(アマチュア)は「プレーヤーのエチケットの重大な違反」(ゴルフ規則33-7)に当たるとして室田の競技失格を決定しました。順位に入れれば6アンダーは4位タイあたりでしたが、前日トップだっただけに天と地の結末。大会には汚点を残すハプニングとなりました。
確かに故意にクラブを投げつけてギャラリーに当てたのとは違います。「(ショットがうまくいかず)自分にカッとしてクラブヘッドを蹴飛ばしたら、ヘッドにちゃんと当たらず、グリップも抜けて変な方へ飛んでしまった」(室田淳)ということです。こういう試合はコースにローピングもしておらず、たまたまティーグラウンド近くにいたギャラリーに当たったという不運でもありました。しかし、プロトーナメントでのプレーヤーは「クラブを叩きつける行為」「コースを故意に傷つける行為」などにも罰金等が科せられる(トーナメント規定)ことになっています。この試合はローカルでプロアマ大会ですが、プロとしてのあるまじき行為であることには違いありません。足に軽く当たった程度で済んだのはまさにラッキーで、タイミングが悪ければあの鉄のアイアンクラブが頭や顔に当たったかも知れないのです。この試合にはPGAからも数名の競技委員が助っ人で借り出されていましたが、競技委員長が千葉県のアマチュアで、厳しいようでもありますが即刻「失格」の決定を下したものです。
こういう出来事が起きると、室田淳の″前科〝を思い出さずにはいられません。あれは96年12月のツアー最終戦、大京オープン(沖縄)で当時60位までだったシード選手の当落を争い、線上にいた室田は初日76、2日目73と不振で通算7オーバーとなって予選落ち。8年間守っていたシード権を失ったときのことです。初日にもカメラマンに紙コップを投げ、予選落ちが決まった2日目はホールアウトしてスコア提出所に向かう途中、追ってきたテレビの撮影クルーめがけてボールを投げつけました。さらにロッカーから出てきたところを撮ろうとしたカメラマンたちに向かって「撮るな!」と手袋のパッケージの束を投げて、雑誌記者の肩に当たるハプニング。帰り際、クラブハウス正面ではTVクルーに″ケリ〝をいれる蹴飛ばしポーズでタクシーに乗り込む大暴れ。「瞬間湯沸かし器」などといわれて新聞、雑誌の種になりました。普段は笑顔をたやさず、理路整然とした紳士的なプロなのですが、何かでカンに触ると一瞬″キレ〝てしまうところがあります。この事件では後日PGAから「罰金10万円」の制裁を受けています。
05年シニア入りした室田はレギュラー時代を上回る安定したゴルフをみせるようになり、06年07年には2年連続でシニアの賞金王となるなど、シニアツアー4年間で4勝するトッププレーヤーになりました。″武勇伝〝もここしばらくは静まっていたのですが、今回は久々休火山の爆発?といったところです。
室田はPGAの会員でもあり、JGTOのレギュラーツアーの方もシード権を持っていて、今年もレギュラー、シニア両ツアーをかけもちする選手の一人です。
PGA、JGTO両協会はともに管轄する試合ではありませんが、今回の事件の処置について憂慮しています。すでにJGTOは小泉会長が事情を聴取しており、PGAも近日中には本人から事情聴取を行ってから懲罰諮問委員会および理事会を開いて処分を決定するとしています。最悪出場停止という厳しい処分もありますが、両協会が果たしてどんな裁定を出すのか、注目です。一方ですでに室田はレギュラーツアーの開幕戦から出場しており、スピード感のない″遅い裁定〝にはあきれるばかりですが・・。
★千葉オープン
1971年に第1回大会がスタート、今年で第38回(1回中止がある)を迎えた老舗トーナメントです。ローカル大会ですが、今年もプロ88人、アマチュア72人の計160人が参加したオープン競技です。賞金総額は800万円、優勝賞金200万円。プロは室田のほか、宮本勝昌、細川和彦、今野康晴、飯合肇、増田伸洋、菊池純、加瀬秀樹、中山徹、川岸良兼、今井克宗、津曲泰弦、篠崎紀夫、横田真一、井上信、竹本直哉、松村道央、池田勇太らが出場していました。