国内ツアー開幕(東建ホームメイト杯)を翌週に控えた5~6日、石川遼(26)は地区オープンの「千葉オープン」(太平洋クラブ成田)に出場。初日からトップに立ち、2日間競技を通算4アンダーで優勝。旅行日なしで同じローカル大会「岐阜オープン」(7~8日、岐阜・各務原CC)にも出場。最終日2打差の8位タイから出た石川は、68で回ってトータル7アンダーで逆転優勝。本番前、異例ともいえる強行日程での最終調整で地方大会2連勝を達成。6年ぶりに復帰する国内ツアーへ大きな弾みをつけました。今季は、少なくとも年末には世界ランキング50位内に入って再びマスターズの舞台へという遼の並々ならぬ″意欲〝を感じます。選手会長、ジャパンゴルフツアーの副会長と2つの重責も引き受けた石川。「勝負のプロ11年目」の幕が開きます。
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石川遼が千葉オープンにエントリーしたとたん、何かが動き始めました。1971年から今回で47回目を迎える老舗の地区オープン。かつては尾崎将司も2度優勝している大会ではありますが、ツアープロはじめシニアプロ、県内外のトップアマチュアも多数参加する混合競技。昨年まではメディア用のプレスルームも小さく、地域密着型のローカル大会でした。しかし、今年はギャラリー数の増加も見込まれて会場の設営ボリュームも一段とアップしました。大会の実行委員長でもあり千葉県プロゴルフ会の会長でもある森静雄プロは「4年程前、私が携わってから年々大会の規模も大きくなってきましたが、今年は片山晋呉選手や石川遼選手らの参加で一段と盛リ上がった大会になりました」と、2日間で前年(564人)を大幅に上回る1419人のギャラリーを集めて満足げでした。
石川遼は初日、最終18番(パー5)で2オンは逃がしましたが、グリーン手前の土手から約20ヤードをチップイン。イーグル締めで7アンダー「65」。単独トップに立つパフォーマンスでギャラリーを沸かせました。2日目の最終日も一時は3打のリードでトップを走りながら、終日吹きまくった強風下のプレーでショットが安定せず、3つスコアを落とし、最後は太田直己に並ばれて最終18番へ。遼はこの18番、2打目を右へ大きく曲げるミスショット。ドロップエリアから辛うじてパーをセーブしたあと、太田は50㌢強のパーパット。プレーオフは間違いないかと思われましたが、太田がこれを右に外すハプニングでボギー。遼はタナボタで優勝が転がり込んできました。
★冷や汗の遼の優勝コメントです。
「リードが3つあっても、優勝となると最後まで全く分からないですね。きょうは風も強く難しいコンデイションで、悪いスコアでも仕方がない中で、なんとか粘れたところやボギーやダボもバーディーで帳消しにできたところなど、次につながるゴルフができたと思います。最終日リードしてバックナインを迎えるのは久しぶりでした。優勝するか、プレーオフになるかといういい緊張感でプレーできたのはいい経験でした。試合に勝つには、どんな内容であろうと、自分にできる最高のことにトライするしかないと思っていた。スコアを落としても、自分がベストを尽くして負たら仕方ないです。最終ホールでいいティーショットを打てたので収穫でした。いま、課題はドライバーなので、ドライバーがよければ今のところは合格点です。ただ今日はOB1回、池に1回があり、勝負どころで2回曲げたのは、多かったかなと思います。ツアー外の試合は関西オープンがまだツアー外のとき以来です。ギャラリーの方が300人ぐらい自分の組について、ローピングもなかったので、迫力がありましたね。僕はグリーン周りでは(ギャラリーに)もっと近づいてもらってもいいと思います。近くで見てもらえるのが醍醐味だし、楽しんでもらえるのが一番ですから・・」
プロ転向から11年目となる遼の今季。日本と米国で5年ずつ。絶頂期も、どん底の苦しみも味わいました。16年にはもともと抱えていた腰痛が悪化して米ツアーを長期離脱。懸命の治療・リハビリでどうにか戦える体には戻りましたが、米ツアーのシード権は喪失して日本復帰を余儀なくされました。しかし、″プロ11年目〝は、遼にとって新しい10年に向かっての再スタートの年です。落ちぶれてトボトボと日本に帰ってきたつもりはありません。「これまでの10年で培ったものを、この先10年で生かしたい」と前向きに遼はいいます。やり残したこともいろいろですが、「やはり世界のトッププレヤーが集まってくるメジャーで勝つこと」が最大の夢なのはいまも変わりません。
それには、再び米ツアーなどの海外での″復活〝を実現させることです。10年が経ったとはいっても遼はまだ26歳。日本に復帰した今季は、あえて選手会長、ツアー機構の副会長の大役を引き受けました。「練習する時間もないだろうっていわれるけど、そんなことはありません。大丈夫です」と遼はいっています。世界ランキングを年末までには50位以内に上げることが、世界への近道であることは十分に知っています。米ツアーで戦う松山英樹はともかく、日本ツアーの小平智、宮里優作、池田勇太らが昨年は見事に「世界ランク50位以内」を果たしました。石川遼が不可能なことはありません。過去、絶好調時に遼がランクアップした自己最高世界ランクは、30位前後(09年)。まずその奪回を目指す今季の遼です。
千葉オープンの表彰式を終えると、その足で移動。同夜10時過ぎに岐阜の宿舎入り。″旅行日ゼロ〝で臨んだ岐阜オープン。「トーナメント3日目と思ってやる」(遼)と岐阜でも大激戦の末、ツアー2勝のH・W・リュー(韓)を1打差2位に抑えて連勝するたくましさをみせました。2月上旬の欧州・アジアツアー共催「メイバンク選手権」から約2ヵ月のオフ。国内開幕戦の東建ホームメイト杯(12日開幕)を目前にしての前哨戦2試合を有意義にこなした石川遼。″11年目の新ズーン〝がガゼン注目されるところとなりました。(了)