″バウンスバック男〝星野陸也(24)、劇的なプレーオフ決着で通算3勝目です。コロナ禍で中止の続いた男子ゴルフツアーは、約5ヵ月遅れでようやく国内開幕。「フジサンケイ・クラシック」(山梨・富士桜CC)は、通算9アンダーで並んだ星野陸也が3年年長の堀川未来夢(みくむ=27)プレーオフ3ホール目に6㍍のバーディーパットを決め、無観客で行われた国内開幕を飾りました。優勝賞金2200万円をつかんだ星野は、1月にシンガポールで開催された海外初戦(11位)と2試合ながら、通算2374.4万円で賞金レーストップ。世界ランキングでも松山英樹(20位)、今平周吾(61位)に次いで星野陸也が石川遼を抜き142位から99位で日本勢3番手に浮上。東京五輪への夢を広げました。(註:バウンスバックとはスコアを落としたあとのホールですぐにバーディーを奪うこと)。
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トップ争いを続けていた星野に、まさかのポカが発生しました。7番、212ヤードのパー3。星野の1打は無情にもグリーン脇の池にポチャリ。ダブルボギーをたたき一気にリズムを失うかに見えました。ところが1ホール置いた9番パー4ですぐさまバーディーのお返し。後半に入った11番(パー4)もボギーが先行しながら次の12番(パー4)でバーディー。終盤に入った16番(パー3)からの上り3ホールは、究極のドラマでした。16番は星野が契約している日清オイリオ提供でホールインワン賞700万円がかかる特別なホール。こともあろうにここでもボギーを叩いて「ムカついた」という大失態。残りは2ホールしかない大詰でのポカ。勝利を放棄するような事態でしたが、星野の踏ん張りはここからでした。次の17番、568ヤード、パー5は渾身のショットでグリーン奥いっぱいに2オン。長いイーグルパットは惜しくもカップをなめて外しましたが、1度は抜かれていた堀川と並ぶ楽々バーディー。まさにバウンスバックの生き返りでした。これでプレーオフにもち込むと、3ホール目には右奥6㍍からの下りのフックラインを読み切り、最後のひと転がりでカップインさせるウィニングバーディー。大激戦の死闘を制する星野の勝利は、大会史に残るものでした。
「長い戦いでした。それをプレーオフで優勝できて、もうめちゃくちゃうれしいです。このツアー3勝目を契機にして4勝、5勝と目指していきたい。自信がつきました」(星野)。コロナ自粛でプロにも長い空白期間がありました。「試合をやりたくて仕方なかった」と述懐する陸也ですが、その間「いろんなことをゴルフのために費やした」という。中学時代卓球部にいたこともあり、卓球の球の回転を改めて研究したり、米大リーグ、エンゼルスで活躍する大谷翔平の二刀流スイングも分析したりもしました。長い休みを活かして「やりたかったことができた」と、常に前向きに生きる星野にはムダな時間はなかったようです。
186㌢の長身。茨城・水城高から日大。2年時の2016年6月に中退して8月のQT挑戦を機にプロ宣言。QT1位で臨んだ17年はチャレンジ(下部ツアー)開幕戦にV。18年はフジサンケイでツアー初優勝。賞金ランク7位。最優秀新人賞。19年はダンロップ・スリクソン福島で2勝目。ドライビングデスタンスは300ヤード超えと、長身・飛ばし屋の本領を発揮。平均パットも1.73で2位(19年度)。昨季の賞金ランクは11位。今回のプロ3勝目でいよいよ男子ツアーの将来を担う1~2番手にのし上がってきた感を強くします。東京五輪へのかすかな灯もみえてきました。
この勝利で得た米ツアー「ZOZO・チャンピオンシップ」の出場権。昨季は千葉・習志野で開催され、大観衆の中タイガー・ウッズが勝利した大会ですが、今年はコロナ禍もあって、米国へ会場が変更がされ、カリフォルニア州サウザンドオークスの・シャーウッドCCで10月下旬に開催されます。星野は「出場権をもらえたので、どこまで通用するかチャレンジしたい」と出場への意欲をみせています。
つまずいてもくじけない二枚腰の強さ。それを星野陸也は持っています。勝負事には重要なファクターでしょう。フジサンケイ最終日、3度の大きな波をかぶってはね返したバウンスバック男に大拍手です!!
(了)