女子ゴルフツアー開幕戦を制したのはプロ5年目、小祝さくら(22)の劇的な逆転劇でした。
ダイキン・オーキッド・レディス(沖縄・琉球GC)は、女子ツアー1年3ヵ月ぶりの「有観客」で行われ、新型コロナ感染防止対策のため1日1000人に限定。4日間で3423人が入場。観客は半券に氏名、連絡先を書いて提出し、入場時には検温、手の消毒、マスク必着でコース内に入る異様な大会なりました。試合は初日71の20位と出遅れた小祝が2日目69で15位、3日目66で3位と追い上げ、最終日は西郷真央、森田遥、田辺ひかりらの若手連と激しいトップ争いの末、最終18番のバーディーで68とし、他を突き放しました。通算14アンダー、2位に1打差の逆転V。昨年9月のゴルフ5レデイス以来の通算3勝目と快調な足取りで賞金ランキングも4位から3位へ上がった小祝。女子軍団トップグループにのし上がってきました。人気の渋野日向子(22)は、首位へ9打差の5アンダー13位タイでした。
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道産子の小祝が、遠く離れた沖縄の地で会心の今季初勝利です。人気の渋野日向子と同い年の黄金世代のひとり。開幕戦はシブコ・チャージが見られなかった中で、お株を奪う厳しい追い上げをみせたのが小祝でした。特に3日目の66は小祝をその気にさせる熱い内容でした。正確なショットを武器とする小祝ですが、今季の開幕戦、これまでと違ったゴルフを見せたのはパットの正確さでした。5㍍前後の中距離のパットを次々と沈めていった3日目。15番では10㍍のロングパットを仕留め、18番(パー5)ではカラーからの4㍍をねじ込むイーグル締め。トータル24パットで6打あった首位との差を一気に2打差に縮める強さをみせつけました。
実はこのオフ、辻村明志プロに師事する上田桃子、吉田優利らと行った2月の宮崎合宿で小祝が徹底して修正、練習を費やしたのがパターだったのです。昨年9月、ゴルフ5には勝ったものの、その後秋の陣では調子が上がらなかった反省です。ショットの方も、インパクトで左足かかとが浮いてジャンプするクセを裸足の練習で“べた足”に直しました。それ以上に力を注いだのが「パットの精度を上げること」でした。パッティング・フォームからラインの読み方、パター(道具)の選択まで、すべてを見直しました。パターもセンターシャフトのものにチェンジする決断もしました。「まだ完全ではない」と話す小祝ですが、最終日は14番(パー4)でまたも長い10㍍のバーディパットを強気に決めるなど5バーディー。トップ争いの大詰め16番(パー3)では寄せきれなかった2.5㍍。17番(パー4)はロングパットを1㍍強オーバーさせたピンチ。これらを着実にパーセーブで凌いだのが、最後18番の逆転劇につながりました。開幕戦の実戦で、パット、ショットともに練習の成果が出せたのは、大きな自信につながるでしょう。
「(大詰めまで競り合いだったが)最後のバーディーが入ってくれてうれしかった。少しスライスラインで緊張したんですけど。今週はギャラリーもいて応援してくれる人が大勢いて力になりました。開幕戦に勝てたのは大きかった。21年度は賞金女王目指して頑張ります」と、2160万円のビッグマネーをゲットした小祝は、ギャラリーの前でマネークイーン狙いを公言しました。かねがね「26歳までには女王を取りたい」と言っていた小祝の夢が、今季は大きく前進しそう。プロ2年目の2018年から続いているツアー92試合連続出場も小祝の誇り。“鉄人”といわれた今堀りつの482試合というとてつもない記録(82~95年)がありますが、「今年も全部出るつもり。休んでも別にすることもないから」(小祝)と、予定されている全38試合の無欠勤にも意欲をみせています。どこまで快記録を伸ばせるでしょうか。
昨年8月のAIG全英女子オープンは、翌週に故郷・北海道でのホステス大会、ニトリ・レディスが控えていたことから、世界のメジャー出場を回避して所属先を優先する仁義も立てました。そのニトリでは優勝争いの末、小祝は19歳の新星、笹生優花に競り負けて2位に泣きました。12月には全米女子オープンに参戦、ここでも予選落ちの苦汁も味わってきた小祝です。4月15日には23歳の誕生日を迎えます。20年~21年と統合された今シーズンは、計52試合の長丁場です。3位にランクアップした賞金レースは、上位の笹生、古江彩佳、原英莉花を追います。幸先のいい1勝は、“新鉄人”小祝の女王争い本格参戦ーといってもいいでしょう。
(了)