最終日4つ落としても勝った稲見萌寧(もね、21)の勝負魂!!POで永井花奈(23)を制す。東京五輪代表への夢を追う!

国内ツアー、今年第2戦「明治安田生命レディス・ヨコハマタイヤゴルフ」は、最終日終盤、一時は首位に4人が並ぶ大混戦となり、勝負は通算6アンダーとした稲見萌寧(もね、21)と永井花奈(23)とのプレーオフへ。
3ホール目でパーセーブした稲見に対し、永井がパーパットを外して決着。稲見がプロ4年目で通算3勝目を挙げました。稲見はツアー参加した19年から毎年1勝ずつをマークしプレーオフは2戦2勝。最終日は強風の中、1バーディー、5ボギーの76と4つもスコアを落としながらプレーオフにとどまり、
勝利した勝負強さは抜群。黄金世代など有名選手に挟まれた1999年生まれの″はざま(谷間)世代〝の代表格。表彰式で流した涙は、これも逆転で狙う東京五輪への思いでもありました。

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プレーオフで稲見萌寧に敗れた永井花奈。17年の樋口久子・三菱電機レディス以来の2勝目を逃がした。

海を見下ろす丘陵コース。風速6㍍のうえ、クルクルと変わる風向き。ゴルファーにとっては一番厄介な天候に見舞われた最終日でした。2位には3打差の単独トップで出た稲見。楽勝かと思われましたが、難関は次々と襲ってきました。「風のジャッジを間違えてばかりで・・」と、前半だけで3ボギー(1バーディー)をたたき、2つ落としました。そして10番(パー5)、最大のピンチが訪れました。第1打を大きく右に曲げ、崖下にある隣の15番ラフに打ち込みます。
「10番ホールに戻すのはムリ。15番を逆走するしかないと思った」という。2打目を15番のフェアウェイに出して″逆走〝。3打目で10番に戻そうとしますが、高低差のある林に阻まれ、4打目でやっと10番グリーン手前に脱出。何度も強い坂を上り降りして「もうクタクタ。頭の中は真っ白になった」という″地獄〝でした。最後は25ヤードほどのアプローチを何とかピン70㌢に寄せて″6〝。「ナイスボギー。ダブルボギーだったら心がくじけたと思う」。大ピンチをボギーで凌いだのが大きかった。このオフ、採り入れたキックボクシング・トレの効果(たくましくなった太もも。体幹の強さ)を実感したピンチ脱出だったという。

稲見萌寧とは同じ東京出身で学生時代から親しい永井花奈だったが・・。

パー3の14番でもグリーンを外したボギーが重なり、一時は首位に4人が並ぶ大混戦。ズルズルと後退してしまいそうな展開にも「前半では落としたけど、諦めちゃダメと言い聞かせた」という。ゴルフ好きで3年前に亡くなった祖父・昭さんから授かった「ゴルフも忍耐だよ」の言葉を胸に秘めて戦っているのだという。お互い東京出身で学生時代から親しくしている永井花奈とは、練習ラウンドも一緒に回った後輩。3打差あったリードも最後は通算6アンダーで追いつかれて2人によるプレーオフに。プレーオフ1ホール目には、入れば永井の勝ちという6㍍強のバーディーパットがカップに蹴られて命拾い。3ホール目には2㍍弱のパーパットを永井が左に外して稲見に女神が微笑んだのです。昨年10月のスタンレー・レディスに続きプレーオフ2戦2勝の稲見。「いつもギリギリで勝つのが私らしい」と笑う。19年のツアー参入から毎年1勝ずつを挙げているのもコンスタントな稲見の強さを物語っています。

1打差で稲見、永井を追った比嘉真美子。最終日73と伸ばせずプレーオフに加われなかった。

「年1回は勝ちたいという目標を立てているので、今年もそれをクリアできた。次の1勝を目指します」と萌寧。20~21年が統合1シーズンとなった長丁場の今シーズンは、すでに″2勝〝をマークしたことになります。18年ツアー本格参戦し、翌19年には1勝。パーオン率1位などで新人賞受賞。飛ばし屋でもありますが、アイアンの正確さも売り物の一つにする稲見です。昨年はAIG全英女子オープンにも挑戦。海沿いのコースで「人生最大の風」も体験して予選落ちを味わってきました。これもゴルファーとしては貴重な経験でしょう。
1学年上には98年生まれの渋野日向子、畑岡奈紗らタレント揃いの「黄金世代」、年下にはすでに3勝している古江彩佳や安田祐香ら2000年生まれの「ミレニアム世代」。さらに笹生優花らの「新世紀世代」が控えています。それらの狭間(はざま)ではただ一人のツアー優勝経験者が稲見萌寧です。

今年は「東京五輪に出たい」という夢もあります。6月末までに世界ランキングを「3勝は必要だと思っている。まず一つクリアできたから次です」とキッパリ。現在、日本勢6番手にいるいる稲見は、少なくとも世界ランク15位以内に上げないと、夢は実現できません。「何でも諦めない」という稲見萌寧のチャレンジが、″粘り〝のこの1勝で、また見ものになってきました。

(了)