「東京五輪」銀メダリストの稲見萠寧(22)が、ニトリレデイス最終日、難コース小樽CCをベストスコアの67で回り、3打差から逆転優勝。5月の「中京テレビ・ブリヂストン」以来の20~21年統合シーズン7勝目、ツアー3年目で通算8勝目。優勝賞金1800万円を加え、今季獲得賞金は1億6972万9000円と積み上げ、賞金レーストップを行く小祝さくら(23)へあと約200万円差(2位)。銀メダルの次は初の賞金女王が見えてきました。前週「CATレデイス」逆転負けのリベンジを、すぐさま果たすあたりは、“さすが萠寧(もね)、“強いぞ稲見”と大向こうから声がかかってきそうです。
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前週の「CATレデイス」(大箱根CC)。初日からのトップを守り、稲見の東京五輪後の初勝利は間違いないと見られていました。ところが勝負はわかりません。最終日、稲見は2バーディーのあと9番をボギーにすると、バックナインに入って大失速。イン9ホールで6ボギーを連発。なんと計7ボギー(77)をたたいて、先に上がっていた小祝さくらの大逆転を許したのです。箱根に吹き荒れた強風のせいといってしまえばそれまでですが、稲見を襲ったメンタル面のショックははかり知れません。1週間を経て迎えた「ニトリ」が注目でしたが、初日稲見は朝1番(パー4)で10㍍のロングパットを放り込むバーデイー発進を演じました。胸にあったもやもやはこの一発で吹っ切れた感がありました。5番(パー4)では140ヤードの第2打(8I)がグリーンにワンバウンドしてピンに当たる大ラッキー。ボールはカップのそば30㌢にポトリと止まりました。これで首位に並ぶと、続く6番(パー5)第3打を1㍍に寄せて連続バーディー。アウトで3つ伸ばしトップを守って後半にターンしました。
国内でも屈指の難関コース、小樽CC。フラットな林間コースながら、巧みにレイアウトされたフェアウェイ。日によってパー4とパー5を使い分けた16番(パー4)を筆頭に、戦略的に配置された池、池・・・。加えて変化に富んだグリーン。初出場した19年は初日75をたたき(90位)、パターを持つと手が震えたりして2日目から棄権した苦い経験のある稲見は「苦手意識の強いコース」といっていたほど。
しかし、今回はリベンジに燃えるゴルフを次々と披露。急成長した萠寧を目の当たりにしました。インに入ってからも全美貞に1打差と迫られた15番(パー4)、2.5㍍を入れるこの日5個目のバーディーで突き放しました。80%のフェアウェイキープ率。パーオンは18ホール中17回と、ほぼ完璧なショットを出し続けました。難関・小樽も「完璧主義者・稲見」にかかってはやさしく感じるほどのゴルフ。さすが五輪銀メダルホルダーを思わせる18ホールでした。
☆稲見萠寧のコメント
「前週のリベンジができてよかった。もしかしたら、このまま勝てないんじゃないかと思ったりしてたから。(前週)単独トップで出て逆転負けだったから、どうしてもメンタルにもきちゃう。弱気な部分が出たり、負け癖がついたりしそうだった。みんな回避できてよかったです。きょうは第1打がまずまずで第2打も安定してた。調子自体はいまひとつでしたけど、マネジメントがうまくいった。落ち着いたプレーができた。特に小樽は苦手意識あったから。風もあったのにノーボギーはうれしい。(賞金女王もみえてきた!)あまり賞金ランキングは気にせずに、これからもどんどん勝ち続けていきたい。2ケタ勝利とメジャー優勝を目標にしてるので、それを目指して」
コロナ禍の影響で、今季は2020年と2021年が1シーズンに統合され、例年より多い試合数だが、シーズン7勝は不動裕理(03、04年)、イ・ボミ(15年)、鈴木愛(19年)以来4人目の快挙。今季の残り試合は13戦。逆転負けのショックも僅か1週で払拭した感のある稲見萠寧の行く手は、まだまだ開けそう。1日10時間の練習も「楽しくて仕方がない」という練習の虫。ゴルフの申し子。稲見萠寧。2週後には国内メジャーの「日本女子プロ・コニカミノルタ杯」(茨城・静ヒルズ)が控えています。
(了)