ジャンボ軍団20歳・西郷真央、2年間の苦節を経て開幕戦待望のツアー初優勝! 会見の席にジャンボから“異例”のメッセージが・・

高2の18歳のとき自宅からも近かった千葉・ジャンボ尾崎邸の練習施設を訪ねた西郷真央。打ち込む18歳の西郷を見ながら「お~お、いいじゃないか」と、早くも素質を
見抜いていたジャンボ尾崎(後方)。西郷はその後設立した「ジャンボ尾崎ゴルフアカデミー」の1期生で門下生に。ジャンボの指導を受けて成長した真央は20歳の春、ついに
「新世紀世代」3人目のツアー優勝者へ花咲かせた(2018年夏、千葉ジャンボ尾崎邸=フォト:岩井康博カメラマン)

“万年2位”シルバーコレクターで泣いた西郷真央(20)が、ようやくプロ3年目の冒頭でツアー初優勝をたぐり寄せました。尾崎将司が主宰するジャンボ尾崎ゴルフアカデミーの1期生。優勝会見中に「西郷ドン、優勝おめでとう。早めの2勝目を期待してる」と、師匠のジャンボから異例のメッセージが届くサプライズに湧きかえりました。舞台は胡蝶蘭の咲き誇る女子ツアー開幕戦「ダイキンオーキッド・レディス」の沖縄・琉球ゴルフ倶楽部。優勝賞金2160万円のビッグマネーに加え、フィッシィング・ボートや家電など、数々の副賞を手にした西郷に「今回の優勝では、2位にはない副賞がたくさんもらえる勝者の喜びを知っただろう」と、ジャンボらしい祝福をもらった真央「喜びの涙はまだ早いです。巧い選手より、複数回優勝ができる強いプロになりたいです」と、これまたジャンボ軍団の優等生らしい腹のすわったった気構えを披露しました。

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新型コロナ禍で20年~21年が統合シーズンとなった前年度。メジャーの日本女子オープンと日本女子プロのビッグゲームをともに2位で取りそこなったのをはじめ、実に2位を7回、トップ10入りは21回を数えた西郷でした。昨年の開幕戦「ダイキンオーキッド」でも首位で最終日を迎えながら、終盤に崩れて4位タイに終わった苦い体験は忘れません。勝利をすぐそこまで引き寄せながら初優勝に手が届かず悔しさ、苦しさを味わった2年間。しかし真央は敢然と話しました。

ツアー3年目の冒頭、開幕戦「ダイキンオーキッド」で挙げたうれしいプロ初優勝のカップを抱く西郷真央。

「去年の開幕戦は勢いだけでした。もし、勝っていたら今日の私はなかった。悔しい経験をたくさんしたから、強くなれたと思います。でも今日はまさか勝てるとは思っていなかった(5打差もあったのに)逆転で、優勝なんて・・驚きました。きのうまでいまひとつだったパッティングが、きょうはよく決まったなぁと思います。普通は入らない距離がよく入ってくれた。喜びの涙はまだ早いですが、今年はうれし涙を流せるくらい、いい1年にしたいです」ー。

ジャンボからのメッセージはさらに続きます。「なんといっても彼女はゴルフに対する考え方、取り組みが優等生で、プロの中でも“ゴルフ脳”はトップではないかなと思うときがある。優勝の喜びを知って、早めの2勝目を期待する」ー。

ジャンボ尾崎の指導を受け、その本領を発揮し始めた西郷真央の力強いスイング。

西郷はプロ3年目の初優勝ではあっても、昨年の賞金ランキングは4位。獲得賞金は1億7899万円余を稼ぎ出し、今回の優勝賞金を加え生涯獲得賞金は早くも2億円突破を果たしました。昨年10月8日に20歳を迎えたばかり。2001年度、新世紀生まれの世代では笹生優花、山下美夢有に続く3人目の優勝者です。
「3日目までパットがいまひとつだった」といったように、首位には5打差がついていた最終日も「優勝を意識してプレーしたわけではありません」という。首位に並んだのは上位がスコアを落とした終盤の16番、パー3でした。8㍍の長いパットが決まり、真央に勢いがつきました。続く17番パー4ではグリーンエッジからの7㍍がまた沈み、連続バーディーで10アンダー。このホール、首位をいく渡辺彩香が第1打を大きく左に曲げ、16番のボギーに続くダブルボギー。大詰めを迎えて一気にトップが入れ替わるきわどい勝負でした。18番パー5は残り220ヤードから2オンを狙った西郷の4Uが、グリーン左バンカーへ。高いあごでピン方向へ打ち出せない大ピンチ。しかし、冷静にピン方向ではないグリーンわきのラフに出し、4打目の15ヤードを絶妙タッチのチップショットでカップ30㌢。これが勝利を引き寄せました。
「このオフ、たくさん練習したのがショートゲーム。だから、すぐにイメージが出て構えてサッと打てた」(西郷)という。1打のリードをキープしたこのスーパーパーセーブとジャンボも見抜いていた“ゴルフ頭脳”が、勝利のカゲにはありました。

渡辺彩香。3日目トップに立ち、新婚2年目のツアー5勝目を目前にしながら終盤に自滅。西郷真央の逆転を許して無念の4位に。

ジャンボからは常々いわれていたという「いきなり富士山の頂上を目指すんじゃない。それより、目標をもっと近くの小さな山に置いて、身近なものから足場を固めながら征服していくんだ」と。2年間の苦節に真央が耐えたのも、このジャンボの言葉に後押しされたからともいえそうです。そしていま、次なる高みの頂上を見上げる西郷真央がいます。またひとり、女子プロ界でキラキラ輝くニュースターの誕生を思わせます。堰(せき)を切った水の流れのように、この新星は、今季何勝を積み重ねていくのでしょうかー。

【西郷真央(さいごう・まお)】

2001年(平13)10月8日 千葉県船橋市生まれ。5歳のとき父親の練習について行ったのがクラブを握るきっかけ。強豪校の千葉・麗澤中、高と進み、高2では関東高校ゴルフ選手権団体で優勝。2018年に尾崎将司が主催したジュニアレッスン会に参加。その後に尾崎が設立した「ジャンボ尾崎ゴルフアカデミー」に第1期生で入門。のちに原英莉花、笹生優花らが門下生に。2019年、高3で日本女子アマゴルフ選手権で優勝。同年11月、女子プロテストでカットラインぎりぎりの18位タイで最年少(高3)で合格。2020年1月1日付で日本女子プロゴルフ協会入会の“高校生プロ”に。20年3月麗澤高校卒。日本ウェルネススポーツ大学入学。ルーキーだった20~21年シーズンは賞金ランク4位。2022年3月、プロ初勝利。

(了)