サウジ政府系ファンド「リブ・ゴルフ」の“勢い”にゴルフ界騒然!“ゴルフツアー”はどこへ行く?!出場3人の日本勢、木下稜介13位で日本オープン優勝なみの4221万円。香妻陣一朗15位で3283万円。39位の谷原秀人でも1822万円のビッグマネーを手に。

世界のゴルフ界注視の中でスタートした「LIVゴルフ招待」。英・ロンドン郊外のセンチュリオンGCのスタート風景(打つのは優勝したシュワルツェル=南ア)。

優勝賞金6億3650万円(個人戦5億3600万円、団体戦1億円)のビッグマネーは、個人、団体“2冠”を制した南アフリカのシャール・シュワーツェル(37)の手に渡りました!ゴルフ界の常識を塗り替える超高額賞金の新ツアー「LIV(リブ)ゴルフ招待」。賞金総額は2500万ドル(約33億5000万円)。世界のゴルフ界注視の中、第1戦が英・ロンドン郊外のセンチュリオン・クラブ(パー70)で、予選落ちなしの3日間大会で開幕。11年の「マスターズ」覇者・シュワーツェルが通算7アンダーで大会を独占して終了しました。日本ツアーから参戦した3選手は、最上位の木下稜介(30)が2オーバー、13位タイで約4221万円。香妻陣一朗(27)が3オーバー、15位タイで約3283万円。39位タイの谷原秀人(43)でも約1822万円と、それぞれ大金をゲットです。著名ではダスティン・ジョンソン(米)8位、セルヒオ・ガルシア(スペイン)22位、フィル・ミケルソン(米)、ケビン・ナ(米)33位。2位の選手(ヘニー・デュプレシス=南ア)で212万5000ドル(約2億8475万円)。出場48選手中、最下位でも12万ドル(約1608万円)の高額金を手にしました。(日本円=1ドル134円換算)
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出場日本勢3人中、最上位13位に入った木下稜介。「日本オープン優勝」並みの4000万円超を手にした。

サウジアラビアの政府系ファンドが支援、リッチなオイルマネーを背景に、世界殿堂入りのグレッグ・ノーマン(豪)をCEOに据えたこの新規ツアー。現時点では日本ツアーは参加を容認していますが、既存の米PGA(男子ツアー)は「リブ・ゴルフ」には強い反発を示し、第1戦に参加したPGAツアーメンバー17人には“ツアー資格停止”の処分を決定しました。年間8試合を予定している新ツアーの第2戦は、米国オレゴン州ポートランドで行われる予定(6月30日~7月2日)で、新たにブライソン・デシャンボー、パトリック・リード(ともに米)のビッグネームの参戦も発表されました。「リブ・ゴルフ」と「米PGA」との対立構図は、第1戦を終えて、一層火種を大きくしています。新たに持ち上がったゴルフ界のバトルは、こんごどんな進展・決着をみせるのか。目を離せない事態となりました。

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ゴルフ界を騒然とさせた新ツアー「リブ・ゴルフ招待」の開幕戦。優勝したシュワーツェル(南ア)の超高額賞金にも目を見張らされましたが、出場した3人の日本勢にも複雑な視線が集まりました。3日間の短期戦。出場選手は48人に絞られた少ないフィールド。日本勢最上位13位に入った木下稜介が得た4221万円(31万5000ドル)は、昨季の国内男子ツアーの最高金額だった日本オープンの優勝賞金(4200万円)とほぼ同額です。強行軍で英国・ロンドンまで出向きはしましたが、3日間での報酬としてはうれしい額。国内ツアーランキングに当てはめれば、これだけで現時点で3位に入ります。15位に入った香妻陣一朗が手にした3283万円(24万5000ドル)も、国内ツアー今季6試合で香妻が稼いだ金額(賞金ランク5位)と現時点でほぼ同額です。むろん賞金ランキングには加算されませんが、「リブ・ゴルフ」では世界ランキングのポイントに参入できるよう申し込んでいるという。

日本から参加したひとり、香妻陣一朗のコメント。
「個人戦のほか、チーム戦もあって選手とも仲良くなった。(各ホールから一斉にスタートする)ショットガン方式は普段と違うので、ちょっと変わった感じだったけど・・。改善点はまだあると思うけど、これからだと思います。自分の今後の参戦?またチャンスがあれば、という感じですが、まだ先はわかりません」。

15位の香妻陣一朗は約3300万円をゲットした(提供:PGA)

今年の香妻は、国内開幕戦の「東建ホームメイト杯」に勝ち、5月には米・オクラホマでの「全米プロ」に出場(予選落ち)、続いてテキサスで行われた「全米オープン」米国最終予選を勝ち抜いて本戦出場もかないました。英国・ロンドンでの新ツアー「リブ・ゴルフ招待」に出た後、米国・ボストンの「全米オープン」に直行するなど、世界を飛び回っています。「全米プロ」の雪辱は「全米オ-プン」でも果たせませんでしたが、今年ブレークした日本勢注目の一人。こうした世界を飛び歩くゴルフでの経験は、どんどん力をつけてくるでしょう。

ところで「リブ・ゴルフ」は松山英樹にも出場オファーを出していたとされます。松山はそれを暗に認めた上で、新ツアーに関しての発言をしています。「面白そうなツアーだなと思うけれど、(資格停止で)米ツアーに出場できなくなるなら行く気はないですね」ときっぱり。しかし、PGAが許すのであれば出てみたい、ともとれるコメントなのは気がかりです。
「全米オープン」を主催する米国ゴルフ協会(USGA)と「全英オープン」を主催するR&Aは、新ツアーに参加した選手でも今年に限っては「受け入れる」とし、「リブ・ゴルフ」に参戦したPGAツアープレーヤー17人のうち、ジャスティン・ジョンソンやフィル・ミケルソン(ともに米)ら15人が「全米OP」にも出場しました。ただし、USGAは2023年以降の参加資格については「新たに検討される」とし、「リブ・ゴルフ」参戦者のメジャー出場が、将来的にも確約されたわけではないとしています。
また、米PGA(男子ツアー)は、ツアーメンバーへの厳しい制裁は発表しましたが、メンバーでない選手への対応につては、未定のままです。つまり「リブ・ゴルフ」開幕戦に出場した日本選手3人が、こんごPGAツアーに出られなくなるのかどうかは、まだ決まっていないということです。

谷原秀人は39位タイと振るわなかったが、賞金は1800万円余を手にした。

短い日程でビッグマネーが得られる「リブ・ゴルフ」は、プロにとっては“魅力的”なイベントなのでしょう。有名選手が、厳しい制裁を甘受してでも、次々と新ツアーに参戦しているのは見逃すことはできません。今季の残り7試合は、4大メジャーとの日程重複は避けながら、4試合を7月と9月に米国で行い、終盤戦の10月にはタイ・バンコク、サウジアラビア・ジッダなどで開催予定。賞金額は1試合2000万ドル(約26億8000万円)をキープし、フォーマットも開幕戦とほぼ同じレベルで進行するという。。
米国で行われる第2戦(6月30日~7月2日・ポートランド)の出場選手は未発表ですが、新たにブライソン・デシャンボー、パトリック・リード(ともに米)のビッグネームが出場を表明しています。また、タイガー・ウッズが莫大なアピアランス・マネー(参加料)を断って「リブ・ゴルフ」への出場を拒否したとの情報も流れています。超高額マネーをバックにグレッグ・ノーマン率いる新ツアー「LIV・ゴルフ」の新しい“波”は、恐ろしいまでの勢いです。ゴルフ界は、「リブ」を巡って、どこへ向かうのでしょうか?

(了)