日本選手″鬼のいぬ間”にやっと今季2勝目!″27歳・遅咲き絵理香”快勝。

飛距離よりも正確なショットを武器に安定したゴルフをする菊地絵理香。
飛距離よりも正確なショットを武器に安定したゴルフをする菊地絵理香。

今季の女子ツアー、開幕6戦目にしてやっと2人目の日本人選手が優勝しました。テレサ・ルー(台湾)イ・ボミ(韓国)、キム・ハヌル(韓)李知姫(韓)と、外国勢に蹂躙(じゅうりん)されていた序盤戦。スタジオアリス女子オープン(兵庫・花屋敷GCよかわ)は、プロ8年目の菊地絵理香(27)が大会最多アンダーパーの通算14アンダーで他を寄せつけない圧勝でした。この試合、米ツアーにスポット参戦のイ・ボミはじめテレサ・ルー、キム・ハヌルら賞金ランク上位の外国勢が欠場していて〝鬼のいぬ間 ”の日本人V。しかし、2日目には9バーディー、ノーボギーのコースレコード「63」を出すなど3日間で計18バーディーを奪った菊地絵理香のゴルフは、遅まきながら実力派の台頭を思わせる1年ぶりの2勝目でした。

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打ち終えて打球を追う菊地絵理香。
打ち終えて打球を追う菊地絵理香。

北海道・苫小牧生まれの絵理香。ティーチングプロの父親・克弥さんの影響で6歳からクラブを握っていたというゴルフっ子。中3で日本女子アマベスト4(03年)に入る実力を身につけ、高校は「もっと強い人と一緒にゴルフがしたい」と、1学年上に有村智恵、原江里菜らがいた宮城・東北高に進学して腕を磨きました。東北ジュニア優勝、全国高校選手権夏季大会で個人・団体優勝(高3の06年)と着実に進化をみせた絵理香ですが、ゴルフ歴は何かとスローペースだったのが特徴です。高校を卒業した07年のプロテストは合格ラインに3打足りなかったのが涙の始まり?でした。続けてトライした同年のQT(ツアー出場予選会)でもサードで敗退。挫折を味わいました。

何とかプロの試合に出たいと、TPD非会員登録(現・TPD単年登録)して08年3月のヨコハマタイヤPRGRレディスでプロデビュー。シーズン中は下部のステップアップ・ツアーで修行し、08年7月、2度目のプロテストに挑戦してやっと合格を果たしました。11年12月のQT18位で待望のツアーフル参戦権をつかんで12年は賞金ランク43位。念願のシード入りはプロ5年目のことでした。やっとフルシーズンに参戦した13年は、日本女子オープン2位タイに入るなどでシード権をキープ。14年はNEC軽井沢72、富士通レディスで相次いでプレーオフ負けの試練を味わいながら15年4月、KKT杯バンテリンレディスでついに完全優勝で初勝利の感激に浸りました。プロ参戦8年目、優勝に手が届きそうで届かない苦い経験の末、出場178戦目の″遅咲き開花”でした。

菊地と同じ「70」で追ったが、4打及ばず2位タイに留まった鈴木愛。
菊地と同じ「70」で追ったが、4打及ばず2位タイに留まった鈴木愛。

飛距離では太刀打ちできない飛ばし屋には、徹底したショートゲームとパターで対抗してきました。2年前のオフには、男子のパットの名手、谷口徹に教えを請い、ハンドファーストのインパクトと、何でも強めに打つのではなく、常に″ジャストイン”を心がけるパッティングに変えたのが、大きな転機になったのです。昨季はパーセーブ率5位。平均パット数10位。平均ストローク7位(71.3970)・・ と抜群の安定度を誇るプレーヤーに成長。賞金ランキング8位、8827万円余を稼ぎ出すトップ級選手に名乗りをあげてきました。

テレサ・ルーやイ・ボミら、同じ27歳、同じ体格の選手が活躍するのを見て「大きな理由は練習量」(絵理香)とみる菊地のトレーニングは有言実行。オフはもちろんのこと、シーズンに入ってからも月曜日にはジムに通いオフと同じトレーニングを欠かしていません。「特に背中とお尻はしっかりと鍛えています。そこが私の中では大事で、そこの筋力が落ちるとゴルフの調子も悪くなってしまうので1時間は負荷をかけてやってます」(絵理香)。

賑わいを見せる女子ツアー
賑わいを見せる女子ツアー

苦節が続いたゴルフ人生にもへこたれず、黙々と努力を続けてきた27歳にようやく春が訪れてきたといえるでしょうか。

菊地絵理香の優勝コメント。

「1勝目からぎりぎり1年以内で勝てて″セーフ”でした。ジエ(申)も愛ちゃん(鈴木)もパットが入ってなかったので、自分が淡々とやっていければ大丈夫と思ってました。最終日はきのうと違ってショットもつかなかったし、パットも入らなかったけど、深く考えないで、今日は今日と考えてやれたのがよかったかなと思う。5番でタッチを合わせにいったのが、入ってくれたバーディーが大きかった。12㍍くらいありました。

外国勢欠場が多かった中、一人気を吐いて優勝に絡んだが及ばず、2位タイの申ジエ。
外国勢欠場が多かった中、一人気を吐いて優勝に絡んだが及ばず、2位タイの申ジエ。

初日、2日目と同じで、最終日も狙えるところはピンを狙って、攻めることだけを考えていました。今日も周りは申ジエさんが追い越して勝つと思っていたでしょうけど、いい意味で裏切れたらいいなと思ってました(笑い)。去年はシーズン後半はバテたので今年は体調管理もしっかりやって、常にベストコンディションでやっていきたいです。夜も乾燥するのでマスクをして寝てます。賞金ランクは去年が8位だったから今年は5位以内(6月末時点)に入って全英リコー女子オープンにも行きたい。賞金レースも、最後まで韓国選手か日本選手か、賞金女王がわからない展開にしなきゃいけないと思います」

強気な言葉も次々と飛び出す絵理香。スローペースながら、27歳にしてプロ2勝目を挙げた自信は計り知れないものがありそうです。打倒・外国勢の急先鋒に立つ意欲満々の菊地絵理香です。