「自分の目標は4大メジャーに勝つこと」―4万5000人超のギャラリーを集めた日本OP凱旋Vの松山英樹ー「僕はここが目標ではない。ここは通過点」と。

力強いショットで大勢のギャラリーをうならせた松山英樹のドライバー(日本OP=埼玉・狭山GC)
力強いショットで大勢のギャラリーをうならせた松山英樹のドライバー(日本OP=埼玉・狭山GC)

米ツアー2勝を引っ提げて帰国した松山英樹(24)が、日本の最高峰・日本オープンに凱旋V。通算5アンダーで国内メジャーに初優勝しました(埼玉・狭山GC)。国内ツアーでは、一昨年のダンロップフェニックス以来となる通算7勝目。優勝賞金4000万円を獲得。今季1試合で日本の賞金ランク8位に入ってきました。大会は、松山に加え帰国中の石川遼(25)、世界ランク6位のアダム・スコット(豪州=36)が3年連続で出場。この″ビッグ3〝が2日間同組で回る演出もあって、4日間で集まったギャラリーは計4万5257人。低調続きの国内男子ツアーに久々の賑わいをもたらせました。米ツアーで鍛えられた松山の強さが一段と光る1戦でしたが「僕はここを目標にしてるのいではなく、ここは通過点。向こう(米ツアー)のメジャーに勝てるように頑張る」と、改めて夢にしている4大メジャー制覇に力を込め、″世界の英樹〝を自らアピールしました。

 

 

 

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初日、2日目と同組で回った″ビッグ3〝。左から石川遼、アダム・スコット(豪)、松山英樹(16年日本OP=埼玉・狭山GC)写真提供:いずれも日本ゴルフ協会
初日、2日目と同組で回った″ビッグ3〝。左から石川遼、アダム・スコット(豪)、松山英樹(16年日本OP=埼玉・狭山GC)写真提供:いずれも日本ゴルフ協会

今年も2月のフェニックスOPで勝ち、米ツアー2勝を挙げている松山が、今季国内初お目見えとあってぞろぞろと松山組を追っかけるギャラリーたち。その数は日を追って増えました。地元ばかりでなく遠方から駆け付けたファンも多数見受けられ、松山が300ヤード級のドライバーショットを放つたびに、″ウオーッ〝という大歓声がうねりとなってコースに響きわたりました。
「こんなに応援されるのはなかなかないですし、アメリカと違って僕の名前を呼んでくれるので嬉しかったし、対応しやすかった。アメリカではアウェーでやってる感じですけど、今回はホームを感じながらプレーできたのは楽しかった。これだけ応援されると、不甲斐ないプレーはできないなと思いましたね。毎ホール埋め尽くされたギャラリーをみて、頑張らなくちゃという気持ちが盛り上がりました。ギャラリーがこんなにくる試合を増やしたいですね。今回、日本ツアーに出ている選手が上位で戦っていたし、力は変わらない。僕を応援してくれるのは、僕が海外でプレーしているからだと思う。だから僕はもっと海外で頑張りたいのです」(松山)。

海外でも人気が上昇している松山ですが、母国・日本に帰ってきて爆発的な声援をうけて感極まった、という感じでした。日本最高の試合だけに厳しいコース設計が話題でした。第1打が落ちるあたりでさえ緩めず、極端に狭めたフェアウェイ。10㌢以上に伸ばされた手ごわいラフ。超スピードのグリーン。これを征服するのは至難の業でした。最終日をみても、松山さえもこの日のフェアウェイキープ率は21.43%。66選手中58位という試練にさらされました。
「フェアウェイにほとんど行っていないし、パッティングもあまり良くなかった」(松山)と絶好調には程遠い″調子〝でしたが、そんな松山を支えたのは、米ツアー3年間で学んだ経験と高度な技術。巧みなアプローチは、ミスも帳消しにする武器になっていました。
最終日。1打差の首位で出た松山は、1番からフェアウェイを外す苦しいスタートでしたが、8番にきて2㍍、9番パー5では2オンして連続バーディーで2つ伸ばし前半を折り返しました。後半は15番でラフからラフを渡り歩きボギーにしたあと、16番のパー3で10㍍のロングパットが最後のひと転がりでカップに沈みました。3打差で追っていた池田勇太を4打差に突き放す″勝利へのバーディー〝でした。
「あのパット、距離はあったけど、ラインにうまく乗せられた。距離感さえ合っていれば入ると自信はあった。大事なところでよく決まってくれた」(英樹)

凱旋Vで日本OP初制覇。優勝カップを抱く松山英樹(埼玉・狭山GC)
凱旋Vで日本OP初制覇。優勝カップを抱く松山英樹(埼玉・狭山GC)

最終日最終組で松山と対決した池田勇太。前週の試合で勝っていることもあって好調なショットで対抗しましたが、惜しいパットがことごとくカップをなめて入らなかったのは運がなかったです。「入ったかなというパットが5つはあった」と無念さをあらわにしましたが、「でも、(英樹は)飛距離も出ているしアイアンも1クラブ違う」と、東北福祉大後輩の著しい成長を認めていました。池田は2位タイで1870万円を稼ぎ、谷原秀人を抜いて賞金ランク1位(1億2118万4000円)に浮上しましたが、松山の強さの壁は打ち破れませんでした。

絶大な期待と人気を背負い、日本最高のメジャーの″本命〝といわれた中で、あっさりと凱旋Vをやってのける松山の強さ。このたくましさが、米ツアーでも生きていける英樹の日本人離れしたところでしょう。そんなお祭り騒ぎの中でも、4打差をつけて上がってきた最終18番で1.5㍍弱につけたパーパットを外したことに、悔しさをにじませました。
「最後のあのパットを決めきれないようじゃ向こうのメジャーには勝てないです」と、もう勝負には関係のなかった最後の1ストロークのミスを悔やんだあたりに、松山英樹の果てしない海外メジャーVへの思いが感じられました。

松山は今週20日からの米ツアーの新シーズン第2戦、CIMBクラシック(マレーシア・クアラルンプール)で米ツアー4年目のシーズンをスタートさせます。第3戦、WGC-HSBチャンピオンズ(中国・上海)にも出場してもう一度帰国を予定しています。この後は11月24日からのW杯(豪州・メルボルン)に石川遼とペアを組んで出場するまで間隔があくため、日本ツアーの三井住友VISA太平洋(静岡・太平洋御殿場、11月10~13日)にも3年ぶりに出場する可能性が強そうです。日本OP優勝で出場権を得た日本ツアー最終戦、日本シリーズJT杯(12月1日から)は欠場の公算が大です。同じ週にツアーではありませんが、米国タイガー・ウッズが主催する慈善大会「ヒーロー・ワールドチャレンジ」があり、これに松山英樹の出場が予定されているからです。

今回の松山人気で日本での試合も増やしたいのでは・・との観測もありますが、松山は「スケジュール次第ですね。無理をして出るのもよくないし、自分の体調の維持が一番。ベストを尽くせるところでいいものを見せたいと思っています。気持ちはあります」と語っています。「自分の目標はあくまでも4大メジャーで勝つこと」と、明言している英樹だけに、その夢が達成できるまでは、軸足は米国にあるといっていいでしょう。16日付世界ランキングでは、日本OPを制した松山は5つポイントを上げ13位にランクされました。

(了)