発表が遅れていた2011年の米女子ツアーの日程が、ようやく年が明けた1月6日に発表されました。通常なら前年秋に発表される日程がどうして年越しになったのでしょう。最大の理由は、米国の景気回復が遅れていることで、スポンサーをとどめるのに時間を要したからです。スポンサーの撤退が続いた米女子ツアーは、08年の34試合から昨10年は24試合にまで激減しました。このなだれ減少を何とか食い止めようと必死の協会(LPGA)ですが、今年は何とか1増の25試合を確保しました。窮状を打開する一つの方策として、今年は新たに台湾と中国で大会が新設され、既存の5大会と合わせ、アジアでは計7大会。アジア以外にもメキシコでの2試合などを合わせると、全体のほぼ半数の12試合が国外開催という厳しい現状です。世界ツアー色を色濃くしたといえば聞こえはいいですが、米女子ツアーの”苦肉の策”といってもいいでしょう。日本女子ツアーも、対岸の火事とはいっていられませんよー。
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米女子ツアーの日程発表が年越しになったのは異例のことです。不況の影響と米国人のスター不足などから、スポンサー獲得が困難になったLPGAの苦悩がそのまま表れた格好です。これは女子に限ったことではなく、米男子ツアーにもいえることです。例年11月には発表される男子ツアーの翌年日程は、やはり1ヵ月遅れの旧冬12月2日になりました。これもスポンサーの確保が難航したものですが、フタをあけると1試合(ターニングストーンリゾート選手権)だけの減に何とかとどまりました。女子の方は人気選手の不在などでさらに厳しい状況で時間がかかったようです。結果として1増の25試合を確保しましたが、米国内の試合は1減の13試合とまた減りました。
米国女子ツアーの人気度は年毎に落ちています。”女王”アニカ・ソレンスタムに続き、無敵だったロレーナ・オチョアも昨年5月に引退。以降、賞金ランクトップの座はめまぐるしく動く戦国時代を呈しています。僅かにメジャー大会を勝ったクリスティ・カー(全米女子プロ)とポーラ・クリーマー(全米女子オープン)の米国勢が巻き返しに燃えていますが、まだまだアジアの勢力には勝てません。昨年のアジア勢は、5勝の宮里藍を筆頭に17試合で優勝。賞金女王は崔羅蓮(チェ・ナヨン=韓)、年間最優秀選手はヤニ・チェン(台湾)、世界ランキング1位は申ジエ(韓国)と、米女子ツアーを席巻しています。この勢いは今季も衰えそうにありません。
”危機的状況”にある米女子ツアーは、中国(インペリアルスプリングス、8月4~7日)と台湾(台湾選手権、10月20~23日)で新たな試合を組みました。ツアーを席巻しているアジア勢の地元への市場拡大に目を向けてきたのです。メキシコでも2試合がありますから、全25試合のほぼ半数の12大会が国外開催。女子プロの人気が依然として高いアジアで、10月~11月にかけて韓国(ハナバンク選手権)、マレーシア(サイム・ダービー)、台湾(台湾選手権)、日本(ミズノクラシック)の4連戦が組まれています。”世界ツアー”か”アジア旋風”か、米国女子ツアーは大きく変貌を遂げようとしています。
米女子ツアーの開幕戦も昨年と同じくアジアからです。宮里藍が開幕2連勝を飾ったタイでのホンダPTTで2月17日から。翌週はシンガポールでHSBC女子チャンピオンズ。その後は米国を転戦しますが、10月以降は再びアジアに戻っての4連戦です。米国内での初戦は、3月18日からの新設大会、RRドネリー・ファウンダーズカップ。メジャーは例年通り4試合が国内で開催されます。25試合中12試合が国外。中でもアジアで7試合という日程編成には、韓国勢は「移動がしやすくなった」として、昨年に続きまた日本ツアーに鞍替えしてくる韓国勢が何人かいるようです。米国選手にとってはさらに困難な戦いを強いられることになりそうです。
こうした世界の動きを受けて日本の女子ツアーもいつまでもあぐらをかいているわけにはいきません。10年は全34試合のうち半数の17試合で外国選手、中でも15試合は韓国パワーに優勝をさらわれました。賞金女王は韓国の新人、アン・ソンジュで、アンには最優秀選手、新人賞、平均ストローク、平均パット数、平均バーディー数でも1位を奪われました。日本選手は、09年の賞金女王、横峯さくらが2勝をあげ辛うじて賞金2位にとどまりましたが、09年6勝の諸見里しのぶは1勝もできずに賞金20位。08年賞金女王の古閑美保は1勝どまりで25位。06年賞金女王の大山志保や若手の原江里菜らはシード落ちするなど、実績のある選手のふがいなさが目立ちました。
今年から樋口久子会長を継ぐ小林浩美新会長は「日本人にも素質のあるいい選手は何人もいます。すべてに恵まれた日本のいい市場で、本人たちの頑張り次第です」と、ハッパをかけています。実力ある多くの韓国選手が、主戦場を米国から日本に移してくるのは脅威です。吹き荒れる韓流パワーに蹂躙され続けていては、米国の轍(てつ)を踏む危険がいっぱいといえるでしょう。