ゴルフ王国・沖縄からまたまた本格派女子プロルーキーの誕生です。今年初めての4日間大会、ヤマハレディス葛城(静岡・葛城GC山名コース)。3人プレーオフを制したのは19歳の比嘉真美子。最大瞬間風速21.3メートルの強風の吹き荒れた“春の嵐”に負けず、首位と5打差12位から出ての逆転勝利。いかにも沖縄育ちらしいたくましいツアー初優勝でしたが、日本ジュニアV、日本女子アマ2連覇などアマチュア時代から“ホンモノ”のレッテルを貼られていた通りの実力派。19歳178日でのツアー初勝利は史上6番目の若さで、4日間開催では最年少にヒロイン。強気に攻めるプレースタイルともあいまって、魅力あふれる若々しいニュースターの登場です。また女子ツアーは、3週連続で初優勝者(一ノ瀬優希、堀奈津佳、比嘉真美子)を出して活気に満ちています。
☆★ ☆★
18番のパー5(527ヤード)を使ったプレーオフ2ホール目。テレサ・ルー(台湾)、大江香織が2打目を刻んでいるのを見て、比嘉は残り220ヤードを5番ウッドで果敢に2オン狙いです。ボールはグリーン右のバンカーにつかまりましたが、ピンまでは30ヤード。2人よりはグンと優位な位置からのアプローチは、3人の中では最もピンに近い右1.5メートルにつけるバーディーチャンスがきました。先に大江とルーの2人がパーで終わったあと、1.5メートルのスライスラインを真ん中からねじ込みました。右こぶしを下から突き上げる会心のガッツポーズ。ショットもパットも、構えたら時間をとらずにサッと打つけれんみのなさが真美子の特徴ですが、このウイニングパットもいつも通りのリズムで鮮やかでした。
最終日、首位に5打差のスタート。しかも1番でいきなりボギーをたたきましたが、2番以降は3バーディー、ノーボギー。時間とともにますます空は荒れまくって上位勢がスコアを崩す中、「風や雨は自然のもの。嫌がらずに逆に利用していった」と70で回った比嘉に、プレーオフの幸運がやってきました。「ここまで来たら絶対に勝ちたい。普通にやれば絶対勝てる。プレーオフだからといって自分のプレースタイルを曲げずにやろう。最後のパットは入れることしか考えなかった。入ったあとで手や足が震えてきました・・」
昨年の日本女子アマチャンピオン(6月)。プロ入り1年を待たず、ルーキーイヤーの開幕5戦目にでっかい初勝利をつかみとった興奮ぶりは、周りにも伝わってきましたが、真美子に涙はありませんでした。
“自分のプレースタイル”― これこそ身長161センチの比嘉真美子が、アマチュア時代から見せ続けてきた強気に攻めるゴルフなのです。「(一発勝負の)プレーオフやマッチプレーだからといって絶対に自分を曲げない気持ち。相手が飛ばないとか、グリーン周りがうまいだとかいった意識は一切しないで、自分の気持ち、あるがままの自分で戦うことが大切だと思う」という比嘉。昨年の富士通レディスのとき、リーダーズボードで自分が上位にいるのが分かってから守りに入り、普通なら刻まないホールも刻んでリズムを崩し、11番から3連続ボギーで3位に終わった苦い経験を生かしたのです。沖縄・本部高出身。昨年7月のプロテストに8位で一発合格。9月のステップアップツアーでは早々とプロ1勝目を挙げている大型新人。セールスポイントは「飛距離です」と明快。さほど大柄でもない比嘉ですが、きれいに最後まで振り切る力強いスイングに魅力が充満しています。270ヤードは飛ばす長距離ヒッター。今回もその武器を存分に発揮した逆転劇でした。
一昨年、昨年と、日本女子アマ選手権を連覇したアマの女王。そのアマ時代からコメントは一貫していました。プロツアーに顔を出しても「常に勝ちたいと思ってトーナメントに出ています」と。ルーキーイヤーの今季、「前半戦の一番のピークにしていたのがヤマハでした。葛城は風も吹くと聞いていましたし、4日間競技が一番実力が出ると思っていたから、今年帯同してもらうキャディーさん(佐々木裕史=41)とヤマハを前半戦のピークに、と話していたのです。本当に実現できてうれしいです。技術不足の部分とかメンタル面で優勝争いになるとミスが出てしまうとか、未熟な部分はたくさんあるけれど、4日間競技を勝てたのは今後に生きてくると思う。いい勝ち方ができたんじゃないかと思います」
今季は、2月に米ツアーのホンダLPGAタイランドにも挑戦しました。初日に80も叩いて苦戦の連続。予選落ちのない試合で、最下位の70位に終わる厳しい経験もしました。国内ツアーでも開幕戦のダイキン、第2戦のヨコハマタイヤPRGRと2試合連続予選落ちでどん底のスタート。「やってやろうという気持ちが強すぎた」と反省。ショートゲームとパットが苦手で、長打力を生かしきれなかったのですが、Tポイント47位、アクサ24位と、気持ちを切り替えてからショートゲームが少しづつよくなって、今回のうれしい初優勝につながりました。
実力派が実力通りプロルーキーイヤーで早くも開花の兆しです。1800万円のビッグプライズと副賞にヤマハのグランドピアノ、フィッシングボートまでゲットしました。初優勝の先には“最大の目標”という日本女子オープン制覇を見据えていますが、その前にワールドレディス・サロンパス杯(5月9~12日)、アース・モンダミン杯(6月27~30日)といずれも4日間競技を次のピークにと計画を立てています。憧れのプロはヤニ・チェン(台湾)。将来は米ツアー参戦の夢も抱く19歳。宮里藍、美香、諸見里しのぶらを輩出した沖縄から飛び出した新星に目が離せません!