5年連続でマスターズに出場した石川遼(21)。今年も厳しい“世界のメジャー”の洗礼を浴びてオーガスタを後にしました。今季米ツアーでこれまで9戦中予選落ちが6度と苦戦続きのあとのマスターズ。ショットは、よかったり、悪かったり。パットはアンジュレーションの激しい難グリーンに、手こずりました。ぎりぎりで予選を通ると、最終日になってようやく緊張がほぐれたのか、マスターズ通算14ラウンド目で最多の7バーディーを奪って初めての60台、自身ベストスコアの「68」をマーク。なんとか38位に順位を上げて気分を多少直してのフィニッシュでした。1月にはゴルフ総合メーカーのキャロウェイと1年6億円で複数年(3年?)の総合契約をしたかと思うと、マスターズ直前には電機メーカーのカシオ計算機と3年間(1年推定2億円)の所属契約を結びました。プロ転向宣言をした08年からすぐパナソニックと所属契約。5年の契約期間が今年1月に満了するとすぐさま間をおかずにまた一流企業と所属契約・・肝心のゴルフの方は苦戦続きですが、いまだに衰えない“遼人気”です。来週18日からは国内が開幕しますが、開幕戦の東建ホームメイト杯には遼はエントリーしていません。休む間もなく次週は米ツアーRBCヘリテージに出場します。(金額はすべて推定)
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石川には今年、もともとマスターズの出場権はなかったのです。疑問の声も上がったほど思いもよらぬ3度目の特別招待選手でオーガスタに招かれる幸運でした。早々とオーガスタに入った遼は練習ラウンドから入れ込んでいました。大会初日は1アンダーで23位とまずまずのスタートでしたが、予選カットがかかる2日目は、パットの不調でノーバーディの77で55位に大きく後退。予選カットラインが、従来の44位から今年“50位まで”に拡大されましたが、それにも届かず、4度目の予選落ちのピンチでした。ホールアウトから約2時間経って、首位のジェーソン・デー(豪州)が最終18番でバーディーパットを外し、通算6アンダーで終わったため、「首位から10打差以内」というもう一つの規定で救われ、ぎりぎりでの予選通過でした。
初日は5バーディーをとって1アンダーで回ったのに、2日目はパットに苦しめられました。1番で1メートルをミスして3パットボギー。チャンスホールの2番(パー5)は、2メートルのバーディーパットが入りません。上がりの3ホールでも16番は2メートルをカップにけられ、17番は3パット、18番はまた2メートルを外してボギーと、ストレスのたまるゴルフです。バーディーなしのラウンドは、5年間の大会通算12ラウンド目で初めてのこと。77はマスターズ自己ワーストタイ。通算4オーバーまで落ちたのにトップが6アンダーでとどまったのがラッキーでした。
2年ぶりに進出した決勝ラウンド。しかし3ラウンド目は相変わらずショットが乱れ、4オーバーの76。順位も下から3番目の56位に落としました。 5度目のマスターズでコースも大観衆が集まる雰囲気も、もうわかってきたはずです。しかし、ショットを曲げ、高速グリーンでは、こわごわと打ちきれず、弱いパッティングが目立ちました。初日は10位だった平均パット数が、2日目はなんと32パットで70位。好不調の波が激しく、これでは予選落ちの危機がきてもおかしくありませんでした。
最終組がスタートする5時間も前。オーガスタの森もまだ静かだったころ、遼は最終ラウンドをティーオフしました。1番でグリーンの右に外しましたが、12ヤードの寄せをチップイン。バーディーのスタートでした。9番へきてピン約1メートルに寄せて2個めのバーディーで折り返すと、10番でも第2打がピンに寄って連続バーディー。12番のパー3ではやや短かったショットが、手前のクリークに転がり落ち、ダブルボギーとしましたが、13番(パー5)では2オンしてバーディー。14番も5メートルが入り、15番のパー5も第2打でグリーン脇まで運び、ナイスチップで3ホール連続バーディーでした。17番はグリーン奥に外しボギー。しかし最終18番。大勢のギャラリーが集まってきた前でピン奥4メートルのバーディーパットをねじ込んでフィニッシュ。3日目までは見られなかったのびのびとした“マイゴルフ”ができました。7バーディーも遼のマスターズ14ラウンドで最多。オーガスタでの60台も初体験のスコアでした。
最終日はピン位置をそう難しくはしません。グリーンの傾斜にぶつけたショットも、カップに寄りやすい位置に切ってありました。石川自身「ピンの位置が一番やさしいところでしたから・・」と、それを認めてはいましたが、それでも4日間で一番いいゴルフができたことを喜びました。
「上の方は見ないでとにかくきょうはバーディーだけを考えてプレーした。10番からは曲がるラインのパットも決まってきた。3日目に落としたのに、最終日に這い上がれたのは、こんごのモチベーションになりますね。きょうの内容は“まぐれ”の感じがしなかった。いい勉強をしました」
大会前はメジャーのマスターズも「シーズンの1試合」といっていた遼ですが、今年の4日間を終わって「思っていたより違いました。これからはこのコースのことを考えながら練習もします。ここで通用するショットならどこでも通用すると思う」と、言い方が変わりました。本当のメジャーの難しさ、怖さが分かってきたのでしょうか。やはりマスターズの4日間は、得るもの、考えさせられるもの、が山ほどあるのでしょう。
石川は今年1月にはアウディジャパンとスポンサー契約。3年契約で総額1億円。続いて米ゴルフ用品メーカーのキャロウェイと、ボール以外の総合契約。1年6億で複数年の超ビッグなスポンサーがつきました。加えて今度は新たに所属契約が決まったのですから、もう笑いが止まりません。選手にとっては、さまざまなサポートをしてもらえる所属契約ほどありがたいものはありません。プロになってから5年間世話になったパナソニックとの所属契約が今年1月末に切れたばかり。それを待っていたようにカシオが名乗りを挙げました。4月1日からの3年間の契約で年間2億円の総額6億円です。
カシオは1981年に後援競技、82年からツアー競技の高額賞金のカシオワールドオープンを主催。これまで32回トーナメントを連続で開催してきたゴルフ界とは縁の深い老舗スポンサーでもあります。今年から米国を主戦場とする石川ですが、世界へと活動の場を広げたチャレンジ精神が高く評価された契約でした。
この2年間、優勝から遠ざかり、昨年11月の三井住友VISA太平洋マスターズで 2年ぶりに涙の10勝目を挙げたばかりす。そんな遼にも日本国内ではまだまだ群を抜いた人気があるのが不思議なくらいです。今年から米ツアーに本格参戦していますが、マスターズまで10戦して予選を通ったのは、ノーザントラスト61位、プエルトリコ39位、アーノルド・パーマー招待65位。そしてマスターズは最下位の通過にせよ4日間プレーして38位の実績を残せたことで胸をなでおろしたところです。ショットに悩み、パットに苦しむゴルフは、プロ入り当時の勢いがみられない日々が続いています。そんな中、5回目のマスターズでずしりとした重い経験をした遼が、これから実際にどう変わっていくのか、見ものです。
◆石川遼の主な契約企業
カシオ計算機 (所属)
キャロウェイゴルフ (用具)
ダンロップスポーツ (ボール)
アウディジャパン (スポンサー)
アサヒビール (スポンサー)
ハウス食品 (スポンサー)
ロッテ (スポンサー)
山本光学 (スポンサー)
ANA (スポンサー)
アーク・クエスト (スポンサー)
エスプリライン (スポンサー)
メダリスト・ジャパン (スポンサー)
ワコール (スポンサー)
全国信用金庫協会 (スポンサー)