シニアツアーに異色の新星が出現して騒がれています。日本オープンローアマのほか、日本アマ2位(07年)、日本ミッドアマ優勝(10年)など長くトップアマとして″最強〝といわれた田村尚之(51)。シニアになってから「プロ転向」の意向を固め、14年からシニアツアーに登場した変わり種。ルーキーイヤーの昨季は、日本シニアオープン4位タイ、富士フィルム3位などで実力の片りんを早々とみせ、今季4戦目の「マルハンカップ・太平洋クラブシニア」(兵庫三木市・太平洋クラブ六甲コース=8月1~2日)では初日トップ発進。2日目の最終日には惜しくも2位。前試合のスターツシニアから2試合連続の2位で、プロ初優勝はもう時間の問題と騒がれている異色男です。優勝は、3打差4位から64のベストスコアで追い上げた崎山武志(52)が、通算13アンダーで逆転、今季2勝目を挙げました。
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2年前49歳で学生らに混じってプロテストに挑戦、見事合格した田村です。プロ1年目の14年はレギュラーツアーの日本プロにも挑戦、予選を通過して57位タイの戦績を残しています。日本オープンでは最終日、招待選手のマスターズ覇者、アダム・スコット(豪州)と同組で回り、スコアは悪くても最後まで全力プレーを続けたスコットに感銘を受けました。「あれがプロフェッショナル。彼の影響を受けました」ー(田村)。
今季からはシニアツアーで新たなゴルフ人生を歩み始めたばかり。途中出場した昨季も日本シニアオープンなどでの頑張りで賞金ランクは16位。堂々のシード選手です。今季は開幕戦の金秀シニア(沖縄・喜瀬CC)こそ20位タイのスタートでしたが、2戦目のKYORAKUシニア(三重・涼仙)では4位タイ。3戦目のスターツシニアは2日目に64を出して2位タイ。そして今回のマルハンカップ太平洋クラブシニアでは初日にトップに立ち、最終日も8番までに4つ伸ばし快調な足取りをみせながら、9番で不覚の3パット初ボギーをたたいてリズムを崩しました。11番ではカラーから3パットしてボギー。パー5の14番もグリーンを外してボギーにするなど、パットの乱れからインを37にして崎山に足をすくわれたのです。しかし、3打差の単独2位で通算10アンダーをマークしたゴルフは立派なものです。賞金も500万円をゲット。通算賞金では1346万2000円となり賞金ランキングは3位に浮上しました。
JGAのナショナルチームのメンバーとしても海外遠征も行うなど、長いトップアマ生活で身についた田村のゴルフは、端正そのもの。きびきびした動作でプレーも早い。1㍍73、65㌔の細身の体躯から飛距離を出す飛ばし屋さんです。今回も初日、12番(パー4)、112ヤードの第2打をPWで直接カップインさせるイーグルを奪うなど、6バーディーのノーボギーで64。完ぺきなゴルフを披露しました。「KYORAKUのころドライバーが飛ばないでおかしかったのが、最近、やっとドライバーも振れるようになった。飛んでいるし、曲がらなくなった」(田村)と、自信のほどをもらしています。今季は3試合連続で最終日最終組を回る好調ゴルフ。2日間競技ということもあって今回は初優勝のチャンスだったのですが・・・。
「暑さもあって頭がボーっとなって、途中からパターがおかしくなった。初めてアドバンテージを持って最終日出られたけど、5つ6つは伸ばさないと、誰かがくる・・と思っていました。プロの世界は簡単じゃないということ。まだまだ勉強です。体も作り直さないといけないですね。続けることが大事ですから」と、ハットオフの田村。大会中も試合後は新幹線で大阪までいってマッサージを受けていました。体のケアには日頃から注意を払っている田村です。
シニアツアー(50歳から)はやはり″若い〝選手が強いです。中嶋常幸や室田淳らのビッグネームも、それぞれ60歳の声を聞くようになったいま、これからのシニアツアーは田村や今季2勝目を挙げた崎山武志らの″若手〝の時代へと移っていくことでしょう。広島県出身、東京理科大卒の「元最強アマ」悲願のプロ初Vは、もうそこまできています。