女子プロ王国・熊本出身の笠りつ子(27)が、強豪、イ・ボミ(韓国)をプレーオフで下して3年ぶりのツアー3勝目を挙げました。遠くは清元登子はじめ、ツアー50勝の不動裕理、さらに上田桃子、古閑美保らトッププレーヤーを輩出した熊本から頭角を現してきた気鋭の中堅。攻撃ゴルフを身上としたりつ子が、プレーオフでは4勝無敗と無敵の強さを誇ったイ・ボミを3ホールすべてバーディーとして圧勝でした。今年の女子ツアーは開幕から4戦中、3試合連続プレーオフでの勝負が続いています。先週勝った飯島茜とは親友の仲。茜のコーチ、片山晋呉プロに二人そろって助言を受けての連続勝利も珍しい出来事でした。
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宮崎のフェニックスCCを眼下にのぞむなだらかな丘陵地に広がるUMKコース。昨年は、最終日最終18番で渡辺彩香(あやか)がグリーン外からのチップインイーグルで大逆転のドラマ(プロ初勝利)を演じた大会です。今年も2日目には笠はじめ4人がトップに並んで最終日を迎えるという大激戦でした。
笠と昨季賞金ランク3位のイ・ボミが、ともに3バーディー、ノーボギーの69で回って勝負がつかず、プレーオフに持ち込みました。
パー5の18番ホールの繰り返し。1ホール目、2ホール目は、笠が3~4㍍のバーディーパットを先に入れると、イ・ボミが2㍍前後を入れ返す白熱の展開。カップを切り替えた3ホール目。今度はイ・ボミが3㍍のバーディーチャンスを先に打って外しました。初めてあとから打つ笠は、逆サイドからほぼ同距離の軽いフックラインを見事に読み、真ん中から決めました。臆することなく3ホールすべてバーディーとした笠の好調なゴルフには、プレーオフ負け知らずだったイ・ボミも脱帽でした。
3年間、″トップテン・ウーマン〝といわれたほど上位にきながら、勝利には見放されていたりつ子の喜びが爆発しました。左手にパターを持った両手を高々と何度も突き上げて歓喜の″バンザイ〝。グリーンサイドで見守っていた親友の飯島茜の元に駆け寄って抱き合い、感極まって涙するシーンがありました。勝てなかった3年間の辛さ。スイングに悩んだ昨年5月頃には、練習場で1球打つのに考え込んで30分もかかったこともあったそうです。
12年4月のヤマハレディース以来の勝ち星。ずっとキャディーをしてくれている父親・清也さん(54)はじめ、親身になってアドバイスをくれた先輩、古閑美保や男子の片山晋呉プロらへの感謝の思いが込み上げてきました。今年2月、飯島茜とタイで合宿したとき、11年にツアーから退いている古閑美保が5日間タイまで足を運んでくれて練習を見てくれました。「まだへたくそなんだから、悩む必要なんかないよ」と、歯に衣着せぬ古閑先輩からの一言は″気持ちが楽になりました〝と述懐しています。今大会前の火曜日には、飯島茜が指導を受けている片山晋呉プロがコースに来ていて、アプローチの即席コーチを受けたのです。「アプローチではもっとボールに近づき、ボール位置も右に置いた方がいい。ラフからはフェースをもっと開いた方がいい、といわれました。アプローチに悩んでいたから、ただそれだけのことでしたけど、リカバリーがよくなった」(りつ子)
片山晋呉″先生〝の一言助言も、悩む選手には効果てき面でした。「晋呉さんから″もし優勝したらオレの名前を言えよ〝っていわててましたから」・・と、こんなエピソードも披露したりつ子さん。抜け目のない?片山晋呉にも脱帽ですが、前週Tポイントで5年ぶりにツアー優勝した飯島茜。今週は3年ぶりに勝った笠りつ子・・。ともに優勝のカゲに見え隠れした片山晋呉の「教え上手」も、たいしたものです。
★3ホールのPOを、すべてバーディーとしてイ・ボミを下し、3年ぶり美酒の笠りつ子のコメント。
「いままで経験してなかったプレーオフは、したくないと思っていたけど、やってみたら楽しかった。自分のプレーに集中できました。先週も優勝争いしてきて、心と体がバラバラだったので(優勝争いから最終日76で2位から9位に落ちた)、今週は先走らないようにと、自分の歩幅だけを意識してうまくいきました。(プレーオフ)3ホール目、同じくらいの距離だったんですが、ボミが″〝先に行く〝といったので・・。″いいよ〝といっちゃったてから″あ~〝と思ったんですけど・・。向こうが外したので・・。わからないですね。(3ホール目、ボミに先につけられたけど)全然見ていなかった。自分のラインのことしか考えていなかったから。でも普段、入らないようなパットが入っちゃうんですね。優勝するときのパターですかね。2勝目から時間が経ったんですけど。次はすぐ、という感じもないですね。自分の調子しだいですから。今年の目標は勝ことではなくて、1億円を稼ぐこと。1億円の束を見てみたい。1億って凄いじゃないですか。あとは、メジャーに勝つのはカッコいいし、複数年シードもおいしい。まあ、名前を残せたら最高です。でも一つ一つの積み重ねですから」
今季好調の笠は、4試合でトップテン3回、うち優勝1回。獲得賞金は1839万1333円で賞金ランク2位につけました。「1億円」の目標にはまだ遠いですが、今季のロケットスタートは先行き楽しみが待っているといってもよさそうです。スーパー先輩たちを輩出してきた「熊本」には、大物になるDNA分子が息づいているのでしょうか。飄々として攻撃ゴルフをみせる笠りつ子。プロ10年目でまだ3勝目ですが、満を持してブレークする年かもしれません。12年度からは京セラドキュメントソリューションズ(元京セラミタ)と所属契約。パシフィックゴルフマネージメント(PGM)とのスポンサー契約もあります。サポート体制も充実しているりつ子の今季は目を離せません。