賞金はなくても、銀メダリスト・稲見萠寧(22)につく「付加価値」は!? 

2019年ツアールーキーでいきなり初優勝、賞金ランク13位に入った稲見萠寧。GTPAの「ルーキー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれ表彰された

日本人初の五輪メダル(銀)の快挙を達成した稲見萠寧(22)に、うれしい“ご褒美ラッシュ”です!日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)と日本ゴルフ協会(JGA)から合わせて報奨金1000万円が支給されます。日本オリンピック委員会(JOC)からも報奨金200万円のプレゼントです。女子プロ協会からは、さらに来年より5年間のシード権が付与されます。これは来年から10年以内に連続で行使することが求められますが、選手にとっては無条件でツアー出場が約束されるうれしいご褒美の一つです。世界に「いなみ・もね」の名をとどろかせた稲見萠寧。有形無形の収穫は限りなく大きなものがありますが、休みなくNEC軽井沢72で国内ツアーに復帰した銀メダル娘の「五輪のあと」を追いました。

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高いフェアウェイキープ率にパーオン率。アイアンが主武器の稲見萠寧

五輪競技は通常の試合と違って賞金がありません。ツアーでは何千万も何億も稼ぐトッププレーヤーが、自国の名誉をかけて戦うのが五輪です。金、銀、銅のメダルによって上位選手(チーム)が表彰され、ゴルフに関しては活躍度が世界ランキングには反映されます。優勝は成りませんでしたが、2位銀メダルの稲見は、五輪前の28位から4ランク上げ24位。、エビアン選手権4位の古江彩佳をかわして畑岡奈紗に続く世界ランク日本勢2位の位置に上昇しました。

 

得意はアイアンショットだが、東京五輪でも抜群のフェアウェイキープ率を残した稲見萠寧

霞ヶ関の4日間を振り返ると、特筆すべきは稲見のフェアウェイキープ率です。トータル85・71%は、2位笹生優花の75.00、4位ネリー・コルダ(米=優勝者)の73.21、15位畑岡奈紗の60.71を大きく上回る数字です。特に、優勝したコルダを追い上げた最終日の92.86%は、フェアウェイを狭めた林間コース霞ヶ関としては驚異的な数字といっていいでしょう。
ただ稲見が金メダルにあと一つ届かなかったのは、ドライバーの平均飛距離が五輪出場60選手中43位(226.2ヤード)と物足りなかったこと。優勝したコルダの平均251ヤードには約25ヤードの遅れをとっています。これはひいてはアプローチとパッティングの“差”になりました。ショットでは世界のトップに負けていなかった稲見ですが、アプローチ貢献度では15位(コルダは4位)、パットの貢献度では16位(コルダ9位)と、特に悪くはないですが、平凡でした。このあたりに世界のトップを目指す稲見の今後の課題が浮彫りになったといえるでしょう。

ドライバーの飛距離を伸ばすのが、これからの課題にする稲見萠寧

その稲見が大喜びしたのは、女子プロ協会から与えられる国内ツアーの「5年シード」のご褒美です。女子プロ協会は、報奨金に加え、金メダルには10年間のシード権、銀なら5年シード権、銅には3年のシード権を与える方針を打ち出していました。その適用を受けた稲見でしたが、彼女は五輪前から「これからも海外より日本ツアーを主戦場で戦う」と表明していて、その意思は変わっていません。「だから5年シードはめちゃくちゃうれしかったです。銀メダルより、そっちの方がうれしかったかな」と、賞金順位など関係なく無条件でもらえる5年シードを喜びました。つまり5年シードを利用して海外挑戦しようとする考えもなく「いまのところ目標は、まだ取っていない国内メジャーと、早めにとりたい2ケタ優勝なんです」(稲見)と、あくまでも国内派です。

稲見のプロテスト合格は2018年7月。19年からのツアー参戦3年目ですでに通算7勝。トッププレーヤーの仲間入りを果たしています。今回の五輪銀メダルに賞金はありませんでしたが、稲見についてくる「付加価値」は莫大なものです。ハクをつけた彼女にこれから入ってくる“収入”は、賞金の比ではないでしょう。国内ツアーでは今季すでに1億5000万円近くを稼いで賞金ランク2位につけている稲見です。NEC軽井沢72で今年3勝目を挙げた賞金1位の小祝さくらを僅差で追っています。「今後も国内を主戦場に」という練習好きの銀メダリストが、この先初の賞金女王へ向かってどこまで大きくなっていくか。計りしれません。

(了)