黒縁メガネに童顔の19歳。また新しい韓国のヒーローが日本ツアーに彗星のように現れました。黄重坤(ハン・ジュンゴン)。石川遼と同い年の19歳ですが、誕生日は石川(9月)より1年あとの1992年5月16日。昨秋のツアー予選会5位で今季から日本ツアーに参戦、ミズノオープン(岡山JFE瀬戸内海GC=6月26日最終日)でデビュー8戦目で早くも優勝賞金2,200万円を手にしました。遼よりも若い驚くべきニューフェース。最終組の1組前で回った黄は、223ヤードもある3番パー3では、ホールインワンのミラクルを起こす強烈なインパクトで通算13アンダーでの逆転優勝でした。この試合、1、2、3位が韓国勢(石川遼が3位タイ)、ベスト10に実に6人が入る韓国パワーの爆発。また一人、ニューカマーを加えて、韓国勢の日本席巻はいまさらながら目を見張らせますー。
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最終組は石川遼に金庚泰(キム・キョンテ=10年日本賞金王)、裵相文(ベ・サンムン=08、09年韓国賞金王)のビッグ3が、レベルの高い優勝争いを演じていました。その1組前、3打差5位スタート、無名の黄(ハン)は、淡々とプレーを続けていました。3番(223ヤード、パー3)。17度のユーティリティで放った1打が、ピン手前3メートルに落ち、まっすぐバウンドしてカップに吸い込まれました。生涯2度目のホールインワン。これで弾みをつけた黄は、次の4番もバーディー。12、13番では6メートルを沈める連続バーディー。単独トップに立ったことを知った15番で「緊張感が襲ってきた」といいながら、17番では2メートルにつけたバーディーチャンスを確実に沈めるなど、ノーボギーの66で回って6つも伸ばし、1打リードでホールアウトしました。
最終組の金庚泰が、18番はグリーン左奥のカラーから1打差を追って果敢に狙った12メートルのバーディートライ。これがカップにけられて跳ね上がった瞬間、黄の劇的な逆転優勝が決まりました。「入ったと思いました。ドキドキでした。でもまさか優勝なんて・・。信じられない」ー。黄はキャディーを勤めた父・炳元(ビョン・ウン)さんと抱き合って喜びあいました。
ゴルフを始めたのは13歳。ハンデ5の父親の指導で1日800球の厳しい打ち込みを続けたそうです。それで身につけたミドルアイアンのキレには自信を持っていますし、「得意なクラブはパター」というのも頼もしい若者です。韓国で著名なゴルフアカデミーに入り、高校2年時(09年)にプロ転向。父親とともに来日、昨年の最終予選会で5位に入って今年からのツアー参戦を果たしました。日本ツアー8戦目、3ヵ月足らずで早くも初優勝です。日本の10代のチャンピオンは、最年少が石川遼の15歳(07年マンシングウェOPKSBカップ)。2番目も石川遼の17歳(08年マイナビABC)。19歳でミズノOPを制した黄は、史上3番目、2人目の若さでした。
石川遼クンもついに年下(8ヵ月下)の選手にやられたわけですが、最終日は最終組で1、2番の連続バーディーなど4つのバーディーで単独首位に立ちながら、12番、深いラフからの強引な攻めで池ポチャなど「7」の大たたき。今季の初優勝はまたお預けで3位タイでした。1組前の組で逆転された黄の大きな黒縁メガネ(視力0.4)は、強烈な印象だったことでしょう。
この黒縁メガネは「いま韓国で流行り」(黄)だそうですが、この独特の風貌も特徴があって、日本のゴルフファンにもこの顔はすぐ覚えられそうです。最終日、プレッシャーもみせなかった堂々たるプレーぶり。そして正確なショットを繰り出す質の高いゴルフ。石川遼にはまた一人強烈なライバルが増えました。この優勝で初のメジャー、全英オープンへの切符も手に入れた黄は「夢の舞台。予選通過を目標にしたいけど、トップの選手からたくさん勉強して帰ってきたいです」と謙虚でした。昨年の日本ツアーの賞金王・金庚泰に「早く追いつきたい」ともいっている伸び盛りの“黒縁メガネ”は、全英オープンの大舞台でどこまで急成長してくるのでしょうか。
ところでいま日本の韓国勢は、ツアーメンバー198人のうちでは21人います。シード選手は94人中13人が韓国人です。昨年日本ツアーの頂点に立った金庚泰はじめ、先の裵相文(昨年賞金29位)や今年のマスターズ選手、金度勲(キム・ドフン、昨年賞金11位)と盧承烈(ノ・スンヨル=石川遼と同年。10年アジアンツアー賞金王)。J・B・パク(今季日本ツアー選手権シティ杯優勝)・・と多士済々ですが、ここに黄重坤が新たに参入してきました。石川遼も韓国パワーを大きな脅威としていますが、これからの「日・韓の戦い」はいっそう激しいものとなりそうです。
(シード選手のハン・リーとジェイ・チョイの2人は、韓国生まれですが、現在の国籍は米国なので、韓国人選手には含みません)