日本ツアー、国内開幕前にインドネシア・オープン共催。アジアに軸足!!の日本ツアー

2012年の日本ツアーフル日程とワンアジアツアー共催を発表する日本ゴルフツアー機構首脳(左から山中博専務理事、小泉直会長、鈴木則夫理事=東京・日本ゴルフツアー機構で)
2012年の日本ツアーフル日程とワンアジアツアー共催を発表する日本ゴルフツアー機構首脳(左から山中博専務理事、小泉直会長、鈴木則夫理事=東京・日本ゴルフツアー機構で)

 賞金額が未定だった今季の男子ゴルフツアーのフル日程が決まりました。試合数は前年から増減なしの25試合。新たに発表された賞金額は33億5000万円。前年比2000万円と、経済不況の中ではまずまずの内容といえます。しかし小泉直JGTO会長は「本社業務で赤字を出しているスポンサーもいくつかあるので、賞金額はじめ最終日程はまだ流動的」と話し、今後の日程変動の可能性も示唆しています。そのなかで注目は、4月12日の国内ツアー開幕の前にジャカルタ郊外で行われるインドネシア・オープン(3月22日~25日)を、ワンアジアツアーと共催することが決まったことです。日本ツアーのアジア戦略が色濃くなってきたのは新しい出来事ですー。
 
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アジアツアーの常連の一人、平塚哲二。一昨年のミャンマーオープンではぶっちぎりの優勝を果たした。今年も3日目まで2打差の3位と頑張ったが、惜しくも最終日に崩れた。
アジアツアーの常連の一人、平塚哲二。一昨年のミャンマーオープンではぶっちぎりの優勝を果たした。今年も3日目まで2打差の3位と頑張ったが、惜しくも最終日に崩れた。

 1月の第1週からゴルフツアーが始まる米国に比べて、日本ツアーの“遅さ”はどうでしょう。国の広さや気候の違う日米ですから、仕方のない部分もありますが、日本の開幕は米マスターズが終わった翌週というのは、もの足りなさを感じます。それを痛切に感じているのはプロたちでしょう。石川遼ら一部の限られた人気ものは、米ツアーへの推薦出場などがあって“長い春”を埋めていますが、大多数のプロは稼ぐ場所もないし、体ももてあましています。そこに目をつけてきたのが日本ゴルフツアー機構のアジア戦略です。
 

日本ツアー開幕前は米ツアーからの推薦出場が多い石川遼。近い将来はアジアのツアーに出場するようになるかも・・。(2011年日本プロ)
日本ツアー開幕前は米ツアーからの推薦出場が多い石川遼。近い将来はアジアのツアーに出場するようになるかも・・。(2011年日本プロ)

 ゴルフ熱が熱いアジアへの進出。アジアには昔は「アジアサーキット」という素晴らしいツアーがありました。アジア各国を回っていく春先のツアー。これには米ツアーから有名選手も参加しましたし、日本からもトップクラスの選手も出向いたものでした。時代が変わって、いまアジアにはアジアツアーが2004年あたりから急速に成長。年間30試合前後の試合をおこなってきました。これに対抗するように近年発足したのがワンアジアツアーです。中国、韓国、豪州の各協会が中心となり、これに日本のJGTO(日本ゴルフツアー機構)も協力体制を作ってきました。アジアツアーには早くから欧州ツアーが色気を示し、共催試合を何試合か行ってきましたが、日本は今春、遅ればせながらワンアジアツアーとの共催を実現させたのです。
 

開幕が遅い4月半ばという日本ツアー。長いオフに、平塚哲二らとともにアジアツアー、ミャンマーオープンに挑戦した池田勇太。
開幕が遅い4月半ばという日本ツアー。長いオフに、平塚哲二らとともにアジアツアー、ミャンマーオープンに挑戦した池田勇太。

 インドネシアのエメラルダ・ゴルフ・アンドCCで行われるインドネシアオープン。このオープンは、賞金総額100万米ドル(約7600万円)。契約期間は3年。出場選手は156人で、このうち共催することによって日本ツアー50人の出場枠を確保しています。今年は開催までに時間がないことなどから、獲得賞金は日本ツアーの賞金ランキングには加算されません。しかし、来年以降は加算することも検討されています。世界ランキングや、もちろんワンアジアツアーの賞金ランクには今年から加算対象になっていますので、開幕の遅い日本ツアーの選手にとっては絶好の稼ぎ場所、練習の舞台になるはずです。経済不況が続き、国内ではスポンサー確保がままならない時代でもあります。日本ツアーがアジアを新しい市場としていこうというのはむしろ遅いくらいです。
 
 日本ゴルフツアー機構・小泉直会長の話。

シーズンに入れば盛り上がる日本ツアーも開幕が4月、マスターズの翌週と遅い(昨年の日本プロ。アプローチするのは石川遼)
シーズンに入れば盛り上がる日本ツアーも開幕が4月、マスターズの翌週と遅い(昨年の日本プロ。アプローチするのは石川遼)

 「ヨーロッパツアーやオーストラリアツアーがアジアを目指していますが、日本ツアーも軸足をアジアに移していきたい。今年は国内の試合は25。私はこの数字は少ないとも多いとも思っていません。国内でもっと試合を増やそうと思えば、できないことはない。ウエーティングサークルで待っていてくれるスポンサーもなくはありません。でも私は、国内はこの程度(25試合)にして、増やすとしたら海外の試合。それも欧米一辺倒でなくアジアに軸足を移したいのです。現実に今年は2、3月にワンアジアツアーとの共催を2試合ほどやる計画でしたが、とりあえず今年は3月に1試合ということになりました。もう1試合との交渉は続けているし、可能な限りアジアでの試合を増やしたい」
 
 50人枠の選手エントリーはこれからですが、相当数の日本選手が出場するでしょう。すでに5日に終わったアジアツアーの開幕戦、ミャンマー・オープンには、アジアツアーの常連、平塚哲二はじめ池田勇太、丸山大輔、市原弘大、小林正則、井上信、すし石垣、谷昭範ら10人近くの日本選手が参戦していました。このミャンマー・オープンは昨年は試合がありませんでしたが、2010年に行われた前回大会では平塚哲二が2位に10打差をつけて優勝しています。これからは日本選手のアジアへの進出、活躍が年々脚光を浴びることになるでしょう。
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 国内のトーナメントは昨年と同じ25試合。賞金総額が2億円の試合が3試合。日本オープン(10.11~14沖縄・那覇GC)、ダンロップフェニックス(11.15~18宮崎・フェニックスCC)、カシオワールドオープン(11.22~25Kochi黒潮CC)です。石川遼が2年連続で欠場、主催者側が不満の声を漏らしたトーシン・ゴルフトーナメントIN涼仙が、1000万円増の総額8000万円にアップしました。年間総額ではいまのところ2000万円増となっていますが、太平洋クラブの民事再生法申請に伴いアコーディアゴルフのバックアップなどが発生しましたので、試合数、賞金総額ともにまだ不安定要素も含まれているようです。