経済不況加速が男子ツアーを直撃!レギュラーは20%の賞金ダウンも。シニアは3試合減の6試合で、開幕は8月下旬か

「賞金総額20%減も覚悟している」と語ったJGTO小泉直会長
「賞金総額20%減も覚悟している」と語ったJGTO小泉直会長

 開幕を前にして日本男子ツアーの”縮小”への動向が目だってきました。レギュラーツアーは年明けから2月にかけて、経済不況により主催数社から賞金減額の打診がJGTO(日本ゴルフツアー機構)にありました。それからまだ半月あまりしか経っていない3月になって、賞金減額を申し入れてくる大会がさらに増えたことが明らかになりました。小泉直JGTO会長によれば「最悪20%減の賞金額も覚悟しなければならなくなった」という事態です。今季の賞金総額は昨年と同じ25試合で37億1000万円とされていましたが、これでは30億を割る可能性も出てきました。3月末に予定されている男子ツアーの修正スケジュールはどうなるか、恐いくらいです。またPGA(日本プロゴルフ協会)が管轄するシニアツアーも「2試合減の7試合」(1月発表)から、最近になってさらに1試合が取りやめとなり、今季は「3試合減の6試合」。しかも開幕は、真夏も終わりに近い8月21日(ファンケルクラシック)か、という異常事態になっています。

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昨年のシニアツアー最終戦、HandaCupフィランスロピーシニアで3000万円の優勝賞金を獲得した三好隆。今年のシニア開幕は8月下旬?(埼玉・おおむらさきGC)
昨年のシニアツアー最終戦、HandaCupフィランスロピーシニアで3000万円の優勝賞金を獲得した三好隆。今年のシニア開幕は8月下旬?(埼玉・おおむらさきGC)

 先週開催されたJGTOの総会終了後、記者会見に出席した小泉会長の発言は悲痛にも聞こえました。「きょうの総会の議題ではないのですが、ここ半月でまた厳しくなったトーナメント日程についてお話しておきます」と前置きして現状をこう説明しました。
「2月16日の理事会のときに、いくつかのトーナメント主催者から賞金の減額の申し入れがあったことをお伝えしましたが、あれからさらに厳しい事態を迎えています。あのときは5%から最大10%くらいの減額といいましたが、半月少々の間にさらに大会縮小の申し入れがありました。今度は6~7%から最悪20%の減額を覚悟しています。企業名はまだいえないが、3月の期末決算後には明らかにできると思う」

 すでに撤退するスポンサーも現れています。05年から毎年、ツアー終了後の12月に行われていた男子、女子、シニア各ツアーの団体戦「日立3ツアーズ選手権」(賞金総額8000万円)は、08年の第4回大会をもって冠スポンサーの日立グループが撤退します。従って今年の開催は困難視されています。そのほか、ツアーで2億円大会を主催する数社から減額を打診されているといいますから、昨年からツアーに参加したパナソニック、キャノン、レクサス(トヨタ)などの大手企業の″縮小〝もしくは撤退も懸念されています。昨年は石川遼の登場で大いに盛り上がった男子ツアーですが、世界的な経済状況の悪化加速にはゴルフ界も抗しきれない危機感を募らせています。

石川遼の登場でがぜん盛り上がった男子ツアーだが、経済不況の波はゴルフ界も直撃!(3ツアーズでの石川遼)
石川遼の登場でがぜん盛り上がった男子ツアーだが、経済不況の波はゴルフ界も直撃!(3ツアーズでの石川遼)

 試合数が減ればもちろんですが、賞金総額の減少は、即選手の稼ぎが減ってくるということです。ここ数年、1億円プレーヤーが次々と誕生してきた男子ゴルフ界ですが、年間の賞金総額が7億円以上の減額ともなれがば、選手はこたえます。濡れ手に粟だったゴルフ界、これからはそう甘い世界ではなくなるということです。
 このレギュラーツアーへの″高波〝は、当然のようにシニアツアーにも及んできました。シニアツアーは10年前の1999年にはバブル経済の崩壊で、年間3試合、賞金総額は1億3000万円というどん底までに落ち込んでいました。そこからはい上がったツアーは、中嶋常幸、尾崎健夫、室田淳、飯合肇らのビッグネームのシニア入りなどもあって年々回復、08年度は9試合、賞金総額5億6900万円までに復活。賞金王になった飯合肇は4627万余の賞金を稼ぎ出しました。「シニアは面白い!」といわれて新しい活況の時代に入っていくのかと思われたものです。

昨年も盛り上がった日立3ツアーズだが・・・(左からシニアの中嶋常幸、レギュラーの石川遼、女子の古閑美保=千葉・キングフィールズで)
昨年も盛り上がった日立3ツアーズだが・・・(左からシニアの中嶋常幸、レギュラーの石川遼、女子の古閑美保=千葉・キングフィールズで)

 ところがプロゴルフ協会の懸命の営業も空しく、09年度は一気に冷え込んでこの1月に「2試合減の7試合」と日程を発表。その後になって開幕戦とみられていたスターツシニアが、復活した昨年1年だけで撤退を宣言。PGAは2月20日に「スターツシニアは延期」と発表しましたが、こういうご時世で代わる企業、冠スポンサーが簡単に見つかるわけはありません。昨年は6月に開幕戦として開催されたスターツシニアがなくなりこのままだと、シニアツアーの開幕は8月21日からのファンケルクラシックとなります。
 8月下旬まで試合のないシニアの選手は調整も大変ですが、日本プロシニア選手権とHandaCupフィランスロピーシニアが開催コースも開催日程も未定のままです。昨年までの上昇ムードから一転して低迷するシニアツアーは、この経済不況をモロにかぶったというところです。松井功会長は「こういう時期なのでしばらくは致し方ないと思う」と、″耐える時期〝としていますが・・。

 

世界的な経済不況加速にゴルフ界も真っ青!左から小泉直JGTO会長、松井功PGA会長、樋口久子LPGA会長(昨年12月の3ツアーズで)
世界的な経済不況加速にゴルフ界も真っ青!左から小泉直JGTO会長、松井功PGA会長、樋口久子LPGA会長(昨年12月の3ツアーズで)

★男子レギュラーツアーの最近10年間の試合数と賞金総額

 年度   試合数  賞金総額(円)
1999年  32  33億6000万円
2000年  33  35億3000万円
2001年  31  34億3000万円
2002年  29  33億2000万円
2003年  29  32億5000万円
2004年  29  32億7000万円
2005年  29  33億8000万円
2006年  29  35億円
2007年  24  30億4000万円
2008年  25  34億7000万円
2009年  ?      ?