アイアンフェースのグルーブ(溝)規制がいよいよ来年2010年1月1日から実施されることになりました。テレビの画面に大写しになるトッププロたちの胸のすくバックスピン。ボールを自在に操ってピンそばに寄せていくこうしたアプローチはゴルフの醍醐味の一つなのですが、R&AとUSGAは「ラフからでも(スピンが)かかり過ぎる」として、08年8月に規制プランを発表、選手やメーカーからの反対で適用延期等を含めて検討を続けていましたが、延長はしないことを決定しました。PGAツアーコミッショナー、ティム・フィンチェム氏は、強い反発を押し切って、6月30日に2010年からに採用に踏み切ったものです。といってもこれはプロツアーでの話。アマチュアの競技に適用するのは2014年から、と猶予を持たせていますが・・。その波紋は大きく広がりそうです。
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アイアンフェースで現在、各メーカーが採用しているのはほとんど「U字溝」(角溝ともいわれる)。溝が文字通りU字に彫ってあるものでこれはスピンが強力に効きます。昔のアイアンはV字溝。いま流行のU字に比べるとV字はボールへのスピン量もそれほどではありませんでした。いまはアマチュアでも進化したクラブを使うことによって多少なりともバックスピンが楽しめるようになりましたが、現在大半のツアープロが使用しているウェッジは、洋の東西を問わずいわゆるこの「U字溝」。フェアウェイからよりも、ラフからや雨で芝が濡れているときなどでもスピンが自在にかけられる特長があります。
R&AやUSGAがこのグルーブ(溝)を大幅に変更しようとした発想は「ラフからのショットをより難しくすることにより、ドライバーショットの正確性がより重要視され、フェアウェイキープの価値が高まる」と意図したものです。
グルーブ(溝)の容積(断面)とグルーブエッジの鋭さを制限することによってこの効果を得られるとしています。しかし、選手側は「2010年からの実施では、いままでのプレーから新クラブへの対応ができない。もっと時間がほしいし、せめて1年は繰り越して欲しい」との要望が出され、メーカー側も総反対。特にタイトリストを先頭に、「U溝」を開発したピンなども「訴訟も辞さない」との強い態度を表明したとされ調整が続いていました。
ところが6月の全米オープン(ニューヨーク州べスページ・ステートパーク・ブラックコース)の開催中に行われたUSGAのミーティング記者会見でメデイアから「アイアングルーブ(溝)の新規制は来年から実施対応するのか?」との質問を受けたUSGAは「その問題はPGAツアーの問題。PGAツアーが採用するならUSGAも採用に踏み切る」と答えていました。PGAフィンチェム氏はこれを受けて「来年から実施する」と発表したいきさつがあります。選手側、メーカーサイドにもいくつもの不満を残したままでのPGAツアーの発表ですので、今後もその行方が注目されます。
R&A、USGAが提唱してきたアイアン溝の新規定実施は
★プロツアー(トッププロレベルの競技)は2010年1月1日から。
★トップアマチュア競技と他のプロ競技は2014年1月1日から。
★一般アマチュアは2024年1月1日から。
となっています。
このように一般アマチュアにはまだ15年の猶予があるので当面、すぐクラブを買い換える必要はありません。しかし、クラブメーカーは2010年末までは現行グルーブ(溝)規制に合ったクラブの販売を許されていますが「2011年以降は従来のU溝は製造しない」との意向を示しています。ドライバーフェースの高反発規制のときがそうであったように、一般アマチュアも新しいウェッジとの買い替えが加速することは十分考えられます。
このルールは、25度以上のロフトに適用され、それより小さなロフトのクラブにはグルーブ容積(断面)制限のみが適用されるとしています。
これら一連のアイアングルーブ(溝)新規制は、日本ではどうなのか?
JGTO(日本ゴルフツアー機構)では「日本のツアーは英国、米国のルールに準じているので、米ツアーが来年1月1日から実施すれば日本のプロツアーでも採用することになります」(JGTO広報)としています。
[USA Today ゴルフウィーク R&Aニュースリリース等参照]