★56歳で花咲いたシニアの新星・中瀬寿!高まるシニア人気の秘密は何?

コマツオープンで初優勝。優勝副賞のコマツ建機に乗ってVサインの中瀬 寿。左は野路国夫コマツ社長(小松CC)
コマツオープンで初優勝。優勝副賞のコマツ建機に乗ってVサインの中瀬 寿。左は野路国夫コマツ社長(小松CC)

このところシニアツアーの人気が右肩あがりで上昇しています。先週はPGAシニアツアーの今季第3戦「コマツオープン2008」が石川県小松市の小松カントリークラブで行われ、好天にも恵まれて昨年大会から倍増の3日間で5000人近いのギャラリーがコースに足を運びました。試合はシニア7年目の中瀬寿(56)が2日目からの首位を守り抜き、13アンダーでうれしいツアー初優勝を飾りました。この試合も含めてシニアツアーは開幕から3試合で、すでに2万人を上回るギャラリーを動員、一日平均では2500人を超える賑わいをみせています。シニア人気の秘密は何なのでしょうか?

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シニア7年目、56歳で初めて花咲いた中瀬 寿のショット(コマツオープン=小松CC)
シニア7年目、56歳で初めて花咲いた中瀬 寿のショット(コマツオープン=小松CC)

先週(7日最終日)小松CCで行われたコマツオープンで見たワンシーンです。2日目は北陸とは思えない気温30度になんなんとする暑さで、多少アップダウンのあるコースで戦ったシニアたちは汗だく、頭フラフラ状態でホールアウトしてきました。昨年からPGAの名誉会員となって″プロ扱い〝の俳優・小林旭も出場していました。66歳の青木功もいました。中嶋常幸や尾崎健夫もいました。こうした人気の選手たちが、ホールアウトしてスコアカードを提出すると、その足でキャディーマスター室前のテーブルに座ってファンへのサイン会を始めるのです。有名選手や小林旭さんのサインがもらえるとあってファンはすぐ列を作りました。次から次への差し出される色紙や帽子に選手達は愛嬌を振りまきながらせっせとサインペンを走らせていました。
 この手のサインはあまり慣れない小林旭さんは、顔を拭いたタオルを首に巻き、もうなりふりかまわず右手を動かし「頭がボーッとしてきょうの日付けが出てこないよ」と苦笑いしながらも50人以上も書き続けたでしょうか。コースでのサインには慣れっこの青木功や中嶋常幸も、暑さの中でのプレー直後はシャワーのひとつも浴びたいところでしょうが、こうしたファンサービスがいかに大事かをよく知っています。サインをもらい握手をしてもらったファンの満足そうな笑顔が印象的でした。
 この日だけではありません。大会初日から毎日、シニア選手はプレー後にはこうしたサービスを続けています。サインを求められてもしぶしぶ書きなぐる選手もいるレギュラーツアーとは、ちょっと雰囲気が違います。プレー中もファンから声をかけられると、大抵の選手はすぐ冗談を返したりしてファンとのコミニュケーションを図っています。 

 

コースでは気温30度を超える暑さの中、18ホールを終えた″小林旭プロ〝は休みもせずタオルを首にファンにサインのサービス(小松CC)
コースでは気温30度を超える暑さの中、18ホールを終えた″小林旭プロ〝は休みもせずタオルを首にファンにサインのサービス(小松CC)

松井功PGA会長は話します。「みんな、シニアの選手はホスピタリティーがしっかりしています。ファンを大事にしようという気持ちを常に持ってくれています。サインだって手首が腱鞘炎(けんしょうえん)になるのじゃないかと思うほどやってくれてます。常に努力してくれています。頭が下がりますね。ギャラリーはコースに来てみてよかったと感じてお帰りになるのです。こうした気安さ、心くばりがファンに伝わり、スポンサーに受けていると思います」

 「ファンケルクラシック」を主催するファンケルの池森賢二名誉会長が「シニアの元気は日本の元気」とスローガンを掲げているのは、前にもお知らせしましたが、確かに最近のシニアツアー(50歳以上)はレギュラーツアー時代の有名選手、大型選手が続々とシニア入りして、人気上昇の何よりの要因になっています。杉原輝雄、金井清一らの時代はちょっと過ぎましたが、それに続いて高橋勝成、尾崎健夫、中嶋常幸、室田淳らに加えて飯合肇、友利勝良、牧野裕らが続いてシニアのメンバーです。昨年からは渡辺司、湯原信光、今年は日本オープン覇者、マスターズ選手のレフティー羽川豊や丸山智弘、浜野治光も入ってきて一段と賑やかになってきました。昨年は″世界の青木功〝が日本シニアオープンで65歳で「65」のエージシュートで優勝した出来事も、シニアツアーへ大きなインパクトになりました。

 

シニア7年目、56歳で初めて花咲いた中瀬 寿のショット(コマツオープン=小松CC)
シニア7年目、56歳で初めて花咲いた中瀬 寿のショット(コマツオープン=小松CC)

名前だけではなく、いまのシニアは飛距離もレギュラーツアーに負けないくらい飛ばします。それに、身についた高度の技術を披露して面白いトーナメントを演出してくれるのです。今年の試合数は昨年の8試合から2減3増の9試合ですが、「HandaCup」の1億2000万円に続き、今年は「富士フィルムシニア」が2つめの1億円トーナメントで新たに加わりました。3年前、06年のシニアツアーの賞金総額は3億円でしたが、今年は5億7500万円と約2倍に伸びています。日本のナショナルカンパニーがシニアツアーのスポンサーとして名乗りを上げてきたことは注目に値します。

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青木功もホールアウト後はファンサービスを最優先!(小松CC)
青木功もホールアウト後はファンサービスを最優先!(小松CC)

さて、コマツオープンで7年目の初優勝を果たし、優勝賞金1200万円をゲットした中瀬寿は、レギュラーツアーでもシニアツアーでも未勝利だった選手です。初日の2位タイから2日目でトップに立つや、最終日は飯合肇、三好隆、大会連覇を狙う中尾豊健らの激しい追い上げにも耐え、自らも4つ伸ばす68で回り、1打差で逃げ切りました。3日間とも60台でマーク、ボギーは初日に出した一つだけという強さでした。
「初優勝が近づいてきても思ったより冷静にプレーできた。ショットがよくてトラブルのほとんどない3日間だったので精神的にも落ち着いてやれました。20年来、公私にわたってお付き合いしている飯合(肇)さんが、2日目を終わったとき、渡辺(司)さんと同スコアだったのにあとからスコアカードを提出して一組前になり僕と一緒になるのを避けてくれたみたいです。それも気が楽に回れたひとつです」と、仲良し飯合の気遣いにも感謝また感謝でした。
 今年の中瀬は「スターツシニア」9位タイ、「ファンケルクラシック」20位タイと安定した成績を残した後の初勝利でしたが「いままでの失敗の原因はインパクトが強すぎた。それが分かって静かなインパクトを心がけてからショットがよくなってきた。距離もかえって飛ぶようになった」と、秘策も語っていました。京都出身。帝京大中退。19歳で始めたゴルフが56歳で花咲いた″静かな男〝中瀬寿にもご注目を!