シブコが苦悩しています。復調への踏み台にしようとした米ペブルビーチの「全米女子オープン」(7.6~9)も2日連続の「79」。通算14オーバーで史上最多22人の日本選手が参戦した中でプロとしては日本人最下位での予選落ちでした(日本人11人が予選通過)。渋野日向子(24)はフォーム改造から始まって、発症した左手首(親指)痛、コーチの交代、グリップの改良・・とさまざま試行錯誤のあげくがこの結果。「もう ボロボロですね」と自ら語った“敗戦の弁”がすべてを表現しています。一時帰国した5月の国内戦から続く「全米女子プロ」「全米女子オープン」メジャー連敗の4連続予選落ち。シブコの立ち直りはいつになるのでしょうか?
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史上初めて「全米女子オープン」の舞台となった米・カリフォルニアの名門コース「ぺブルビーチ・ゴルフリンクス」。海沿いの美しい18ホールですが、名物の海風とタフなレイアウトは、過去の「全米オープン(男子)」開催でも実証済みの難コースです。今回ここを訪れた世界の女子プロたちも口々に「ここに立てるのが光栄」と、高ぶる興奮をかくせませんでした。日本からはアマチュア3人を含む22人がエントリー。これも史上稀な「全米女子オープン」でした。
その中で大きなテーマが「AIG女子オープン(全英)」の19年覇者、シブコの復調成るかーでしたが、無残にも打ち砕かれました。初日のスタート(10番)から不安定で、いきなりティーショットを大きく右へ曲げ、ワンペナルティーを払うなどのダブルボギー。最悪のスタートが今回のシブコゴルフを象徴していました。後半5番(パー3)でも右サイドのペナルティーエリアに打ち込むなど、上がり5ホールで4ボギー。初日から7オーバー「79」(124位)と大きな出遅れ。2日目のゴルフも変わらずで10番パー4ではトリプルボギーなど、連日の「79」。2日間トータル14オ-バーは133位。2Rでバーディー1個というゴルフでした。
今季はシーズン途中から左手親指の付け根付近に痛みを覚えて苦しみました。「職業病だからこれからもうまくつき合ってスイングできるよういしないと」と、24歳にして大きな“荷物”をかかえてしまったシブコさん。1ヵ月前の6月には指への負担が軽くなるベースボールグリップに変えましたが、プロゴルファーがグリップを変えるのは、感覚が一変するので大変なこと。今回の「全米女子オープン」を前に、突然もとの左人差し指と右小指を絡める通常のインターロッキンググリップに戻しました。スイング改造もそうです。19年に「全英女子オープン」優勝に導いてくれた青木翔コーチと20年末には手を切り、石川遼の助言などを受け入れてトップが低いフラットでコンパクトなスイングに変えました。新スイングで21年は国内2勝したものの、主戦場を米ツアーに移した22年は予選落ち9回、棄権1回と大苦戦。オフには再び青木翔コーチの元へ走ったのです。
短期間にグリップやスイングに手をつけるのは危険も伴います。未完成のまま今シーズンに突入したシブコの複雑な心境は、どればかりでしょう。世界最高峰の「全米女子オープン」の舞台は風光明媚で知られたゴルファー憧れの「ペブルビーチ」。その風景やコースを堪能できたのは練習ラウンドだけ。本番では景色どころか“いいとこなし”の133位で予選落ちでした。
「見た通り、スコア通りです。海風なんかより以前の問題。打った瞬間に“ダメだ!ムリだ!”みたいなショットがほぼほぼでした。グリーンに乗らない。乗らないと話にならない。自分でボールを扱うことができてないから、ゴルフにならないです」と、いつも明るいシブコから笑顔が消えました。それでも精いっぱいシブコは話しました。「でもまあ、左手首の痛みを“利用する”スイングが少しはできてきたですかね。練習ではできていることをもっと試合でやれるようにしっかり練習して少しでもモノにしたいです。パターやアプローチには影響していないと思いますから。プロは試合はしていかないといけないので、メンタル的にやられないようにして、前を向いて頑張らないといけないと思います」(シブコ)。
19年「全英女子OP」に勝ち“世界のシブコ”ともてはやされてからはや4年。その間、シブコが経験したのは喜びより苦悩の数々が数知れません。プロゴルファーがスイングを気にしながら、体調の異変をかかえて戦うのは並大抵ではないでしょう。
しかし、立ち止まってはいられません。休むまもなく次週は「DANAオープン」(米ツアー)に向かうというシブコです。折しも高級車ブランド「LEXUS」(レクサス)USAとのアンバサダー契約が発表され、シブコ人気は衰えません。そんな中で4試合連続予選落ちの屈辱からどう立ち直るのか。渋野日向子の正念場ー。最後の優勝は21年10月「樋口久子・三菱電機」です。
(了)