伊藤誠道に続け!また勇太・遼に勝ったアマは藤本佳則(東北福祉大4年)

最終日も、狭く絞ったフェアウェイをびしびし捉えた藤本佳則のドライバーショット(パナソニックOP=琵琶湖CC)=提供:日本ゴルフツアー機構
最終日も、狭く絞ったフェアウェイをびしびし捉えた藤本佳則のドライバーショット(パナソニックOP=琵琶湖CC)=提供:日本ゴルフツアー機構

 先週のANAオープンで16歳のアマチュアが優勝争いを演じて緊張感を盛り上げた日本ツアー。今度は、パナソニックオープンで今年7月の日本アマ決勝で優勝を争った2人が上位に顔を出して2度びっくりでした。日本アマチャンピオンは明大2年の桜井勝之(20)。準優勝は東北福祉大4年の藤本佳則(21)。この二人、初日、ともに69で12位タイのスタート。桜井は2日目に79と崩れてまさかの予選落ちでしたが、藤本は楽々予選通過。3日目は池田勇太、石川遼のビッグネーム二人と同組になりながら物おじもせずに二人を上回るアンダーパーゴルフをしました。最終結果は 2アンダー、12位タイでローアマの大健闘。今年は続々と頭角を現してくるアマチュア勢には目を離せません。20歳になった石川遼も、おちおちしてられようです・・。パナソニックOP、優勝は8アンダーで平塚哲二。池田勇太は2オーバー、30位。石川遼は3オーバー、34位でした。
 
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 予選落ちはしましたが、初日を飛び出した桜井は、今年の日本アマアマチュア選手権の優勝者。昨年の日本学生選手権も制しているトップアマです。東京・杉並学院高出身。石川遼の1年先輩で薗田俊輔の1年後輩にあたります。杉並学院高3年のとき、米国留学。帰国後は、つくば開成高に編入して明大商学部に進学しました。ANAで脚光を浴びた伊藤誠道(まさみち)は杉並学院高の後輩です。昨年の日本学生でも破った藤本に再び競り勝って、今年日本アマチャンプに輝きました。飛ばし屋でイケメンの桜井。来年からの国内プロツアー出場を目指して今秋のツアー予選会(QT)に挑戦します。2日目の乱れは残念でしたが、これからのプロツアーでもひと暴れしそうな逸材です。
 

3日目、東北福祉大の先輩、池田勇太と石川遼両スタープロと同組になったが、負けていなかった藤本佳則(右)。左は池田勇太。(パナソニックOP=琵琶湖CC)提供:JGTO
3日目、東北福祉大の先輩、池田勇太と石川遼両スタープロと同組になったが、負けていなかった藤本佳則(右)。左は池田勇太。(パナソニックOP=琵琶湖CC)提供:JGTO

 藤本の方は、2日目も72で回り楽々予選を通過。3日目は、一緒に回った池田勇太、石川遼を抑えて順位を上げる頑張りでした。最終日も難しいグリーンに根負けせず、パープレーで通算2アンダー。12位タイで終わったのは、アマチュアとはいえないハイレベルのゴルフでした。大学の先輩、池田勇太とは3日間同じ組となりましたが、「練習ラウンドのような気楽さでプレーしやすかった」と、強心臓ぶり。3日目の石川遼との同組を聞かれても「緊張はしましたが、歓声を浴びることでノッテいけます。ラウンドするときは、自分のことだけ。ほかの選手を見てプレーはしません」と、二人のスタープロに挟まれても、最後まで集中力を切らさなかったのは“大物”の片りんをうかがわせます。高い軌道で飛ばし、アイアンは常にピンを狙う攻撃的なゴルフで魅力的です。
 
  「最終日はあれだけフェアウェイにいったのにイーブンパーとは・・。パターがもう少し入ってくれたらスコアをのばせたのに。課題です。12位でローアマになれたのは凄いことなんですが、来年からプロツアーでやろうと思っているのに、このくらいで満足していたらいけない。もっと上を目指していかないと・・。(次週にセカンドQT『ツアー出場予選会』があるが)ファイナルまでいってどこまで順位を上げられるかです。何とかして這い上がってシード権がほしいです」
 
 難しいコース設定のこの試合で上位に入ったのは実力の証明でしが、藤本はホールアウト後も甘い言葉は全く聞かれませんでした。
 この藤本クン。学生の試合でも「2位」が多いのが不思議なくらいです。7月の日本アマでは桜井に敗れて2位。8月の日本学生でも東北福祉大後輩の松山英樹(2年=19)にプレーオフ負け。その前週、中国で行われたユニバーシアード夏季大会個人でも松山英樹の2位に甘んじています。昨年の日本学生も桜井の2位になっていますから、近年では大きな試合はほとんど“シルバーコレクター”というのは、ちょっと珍しい選手です。いつこの壁をやぶるのでしょうか。
 

ANAオープンで最終日・最終組で優勝争いに加わった16歳のアマ、伊藤誠道。この活躍で刺激されたトップアマの台頭が目立ってきた。
ANAオープンで最終日・最終組で優勝争いに加わった16歳のアマ、伊藤誠道。この活躍で刺激されたトップアマの台頭が目立ってきた。

 今大会は出場していませんでしたが、伊藤誠道や松山英樹も虎視眈々です。伊藤は先週のANAオープンで2日目単独首位、3日目も首位タイを守って最終日、最終組で優勝争いにからみました。最終日は74とスコアを落として6位に終わりましたが、4日間で10アンダー。優勝したバーンズ(豪)と僅か3打差というゴルフは、もう“プロ並み”といえるものでした。湘洋中2年のときに09年の日本アマ準優勝。10年三井住友VISAマスターズでは10位に入りました。166センチの小柄な体ですが「たたけば300ヤードは飛ぶ」(伊藤)といいながら、誠道の特に秀でたところは、ただ単に飛ばすだけではなく「ゴルフはいろんなことができなくては・・」と、″考えるゴルフ〝ができるところ。老獪(ろうかい)なゴルフを身につけていることから、ANAで一緒に回ったプロからは「コヤジ」という愛称をもらったほどです。
 昨年、大学1年生でアジアアマに勝ち、マスターズ出場の夢を果たした大物・松山英樹(19=東北福祉大2年)もいます。松山は今年も好調で、8月のサン・クロレラクラシックでは優勝した先輩の池田勇太6打足りませんでしたが、4日間8アンダーで6位タイでベストアマをとっています。この試合、3日目には「64」を出すなどの爆発力もあります。サン・クロレラでは藤本佳則も11位タイに入るなどアマチュアの活躍がこのころから目立ち始めました。このあと、松山は中国でのユニバーシアード優勝、日本学生優勝と続きます。
 
 レベルの高いトップアマたちが次に狙っているのが、9月29日から4日間、シンガポールのアイランドCCで開催される「アジアアマチュア選手権(AAC)」です。これに勝つと米国マスターズへの出場権が与えられます。昨年、夢を実現した松山英樹の足跡を追って、今年は藤本佳則、桜井勝之、伊藤誠道、さらに杉並学院高3年の浅地洋佑(18)らがそろってAACにトライします。先週の伊藤誠道の活躍が大きな刺激になって、トップアマチュアの気合が一段と入っています。みんなプロツアーでの経験も十分。近い将来のプロ転向を見越してのパワーアップをしているので、アマでプロに勝つ第2の石川遼、宮里藍が出現するのも、高い確率で実現性を帯びてきました。