シニア人気を呼び戻すか“マムシのジョー”尾崎直道の国内シニア登場!!

レギュラー時代から7年ぶりのツアー優勝を国内シニア開幕戦で飾り、久々の優勝カップを抱える尾崎直道(右)と世志江夫人(左)=千葉・平川CC
レギュラー時代から7年ぶりのツアー優勝を国内シニア開幕戦で飾り、久々の優勝カップを抱える尾崎直道(右)と世志江夫人(左)=千葉・平川CC

 米シニアツアーで6年間戦ってきたあのジョー・オザキこと尾崎直道(56)が、国内本格参戦のシニア開幕戦(千葉・平川CC)でいきなりシニア初優勝を飾りました。停滞気味だったシニア界で、人気男・尾崎直道の勝利は、パッと花を咲き散らしたような盛り上がりでした。レギュラー時代の05年、中日クラウンズ以来、7年ぶりのツアー通算33勝目でした。優勝賞金はシニアツアーでは高額の1400万円。今年は賞金王さえ狙えるスタートですが、ご本人は「レギュラーツアーで戦うのも楽しい」と、まだまだ国内ではレギュラー、シニア掛け持ちでいく満々の意欲をみせています。兄・将司の持つレギュラーツアー最年長V記録、「55歳7ヵ月29日」を破る気持ちなのでしょうか?

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7年ぶりのツアー優勝で1400万円の優勝賞金ボードを掲げる尾崎直道(右)=千葉・平川CC
7年ぶりのツアー優勝で1400万円の優勝賞金ボードを掲げる尾崎直道(右)=千葉・平川CC

 初日からベストスコア67を出して首位に飛び出した直道は、そのまま首位をキープ。最終日は4打のリードを背負ってスタートしました。「(追っている)奥田もいいゴルフをしてるから混戦になるかも知れん」と自ら“予言”した通り、最後まで楽には勝たせてもらえませんでした。「最終日にシビレがくるのはおかしくない。それがツアーの現実です。4打差なんか、すぐ馬群に沈むのも知っている。アメリカでもそんな光景はたくさん見てきてる」(直道)と話したように、直道も久々の優勝が見えてきた最終日は、1、2番で連続ボギーと最悪のスタートでした。
 「出だし18メートルほどあったロングパットだけど、距離感が全然出てこないんだ。3メートルもショートした。これ、シビレ以外の何物でもないよ。2番も奥のエッジから5メートルもオーバーした・・。寝つきもよくなかったし、ホントに参ったね」

好調なドライバーショットを見せる尾崎直道(スターツシニア=千葉・平川CC)
好調なドライバーショットを見せる尾崎直道(スターツシニア=千葉・平川CC)

 ここから直道の苦難のVロードが始まりました。5、6番でバーディーをとり、10番でも3つ目のバーディーと、一息つきましたが、次の11番で第1打を林に入れ、リカバリーもうまくいかずにダブルボギーで肝を冷やしました。追う奥田靖己が「風邪ぎみで38度の熱発をおして」と、あまり元気がなかったのが直道には助かりました。このダボでもまだ2打差のリード。「でも青ざめたよ。負けもあるかと頭をよぎった」と直道。しかし、若いころからの粘っこさは直道の売り物。“マムシのジョー”とはよくいったものですが、15番のパー5では3打目を30センチにつけて4つ目のバーディーが利きました。17番では4メートル近くあったパーパットをねじ込みました。3打のリードでたどりついた最終18番では、さらにもうひと山が待っていました。奥田が右バンカーから約30ヤードを直接放り込むバーディーを見せつけたのです。

最終日、最終18番でバンカーから直接入れるバーディーで追いすがった奥田靖己(左)を、1打差でかわして逃げ切り、健闘を称えあう尾崎直道(右)=千葉・平川CC
最終日、最終18番でバンカーから直接入れるバーディーで追いすがった奥田靖己(左)を、1打差でかわして逃げ切り、健闘を称えあう尾崎直道(右)=千葉・平川CC

 同じバンカーに入れていた直道の顔から血の気がひきました。そして頭を巡ったとっさの作戦は「あんな真似をして、ホームランしたら大変!」ということ。「少し多めにダフらせてしっかり2パットでいこう」と。その狙い通り、直道はカップへ4~5メートルを残す安全ショット。慎重に2パットで収めるボギーで1打差を守りました。「ギャラリーにはごめんなさい!だった。カッコよさんなんかない泥臭い優勝だね。最後まで難産だったから」ー日米で長いキャリアーを積んできた直道の、“勝つための方程式”だったのでしょう。
 日本ではツアー通算32勝。2度の賞金王。日本タイル4冠で永久シード選手。米レギュラーツアーでも93年から01年まで9年間を戦い抜き、最高成績は2位。50歳になってすぐ06年から再び挑戦した米シニアツアー(チャンピオンズツアー)は昨年まで6年間。プレーオフで敗れた「ボーイングクラシック」など2位が2度ありましたが、優勝にはあと一歩届きませんでした。しかし、日米を股にかけて戦ってきた豊富な戦歴は、“マムシのジョー”をまた一段と大きく、粘り強くしたことは間違いなさそうです。

人気の尾崎直道登場で集まったギャラリー。最終組の直道(手前)を追って歩く大勢のファン(スターツシニア=千葉・平川CC)
人気の尾崎直道登場で集まったギャラリー。最終組の直道(手前)を追って歩く大勢のファン(スターツシニア=千葉・平川CC)

 「泥臭い優勝」も、ジョー・直道らしい1勝でした。米シニアツアーは、昨年賞金ランク35位で「30位以内」のシード権を失いました。今年はQT(最終予選)を受け直すほどの意欲はなく、日本ツアーへの復帰を決意したのです。国内では、試合数の少ないシニアツアーよりも、まだレギュラーツアーへの夢は捨てきれず、今季もこれまで6試合に出て予選落ち3、失格1(マウスピース使用で)。2度の決勝進出でつるやの17位タイがあります。「トーナメント好きの自分だし、レギュラーに出るのも楽しい。わくわくしながら必死で頑張っている。この優勝がプレッシャーを和らげ、気分もよくなってプラスになるといいね。米シニアも出られるのがあれば・・」と、56歳にして直道の勝負魂はまだまだ健在です。今後は各ツアーの日程をにらみながら、ツアープレーヤーとしての挑戦を続けていくそうです。遅ればせながら6月に開幕した国内のシニアツアー。雨模様にもかかわらず、最終日は2354人のギャラリーが詰めかけて、直道への声援や拍手が盛んでした。人気選手の登場で、今年の国内シニアにも明るい灯がみえてきました。