「世界ランク50位以内がいない」「一人ひとりが何人のギャラリーを集められるか」・・日本男子の低迷を嘆く石川遼!

米国から帰国して参戦した石川遼の国内ツアー秋の陣。日本シリーズJT杯では期待に応えて圧勝した。(15.12、東京よみうりCC)
米国から帰国して参戦した石川遼の国内ツアー秋の陣。日本シリーズJT杯では期待に応えて圧勝した。(15.12、東京よみうりCC)

2016年の新しい年が明けました。国内男子ツアーは、アジアンツアーとの共催による「SMBCシンガポールオープン」が1月28日からシンガポールで開催され、これが今季の開幕戦ということになります。昨シーズン、ゴルフ人気を女子ツアーに奪われた男子ツアーが今シーズンはどれだけ盛り返せるでしょうか。すでに発表された今季の男女ツアー日程では、女子の38試合に対して男子は26試合。男子はそのうち1月と2月の2試合はアジアンツアーとの共催による海外での試合です。国内では、3月3日に開幕する女子に対して男子は4月14日からの東建ホームメイト杯が″国内開幕”と、1ヵ月以上も遅れた幕開けになります。年間賞金総額も、今年も女子の後塵を拝した男子ツアー。昨年秋の陣に米国から帰国して国内ツアーに参戦。7戦2勝した石川遼(24)が、肌で感じた日本ツアーの低調さを嘆いた発言をしました。新年のいま、それを検証してみましょう。

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米ツアーで鍛えられた遼のショットは、他を圧する安定感があった。(東京よみうりCC)
米ツアーで鍛えられた遼のショットは、他を圧する安定感があった。(東京よみうりCC)

石川遼は昨季、9月に帰国して出場したANAオープンに勝ち、最終戦の日本シリーズJT杯でも圧倒的な強さで国内2勝を残しました。7戦だけで8778万円余を稼ぎ、賞金ランク6位に入る″強さ”でした。しかし、主戦場の米ツアーでの苦戦は3年間続いています。まだ勝利はなく、昨季も最終戦で辛うじて今年のシード権を確保する厳しさで、4年目になる今季こその意気込みを示しているところです。日米両ツアーの実力の格差があるのは歴然としています。米国で戦い、日本に帰ってきて戦ってみると、その差を明確に感じるようです。それこそ日本の男子ツアーが盛り上がってこない大きな要因でしょうか。

石川が15歳のアマチュアで国内ツアーを制し、プロ転向した18歳(09年)では年間4勝していきなり史上最年少で賞金王にまで駆け上がりました。「遼のゴルフを一目見たい」と足を運んだギャラリーは、当時1試合平均2万4000人を超える勢いでした。しかし、いまや15年度などは1試合平均1万4000人ほどに落ち込んでいます。昨季最終戦の日本シリーズJT杯でも、3日目に石川が10バーディーで「63」を出し単独首位に抜け出したのに、ギャラリーは前年度の3日目より少ない6028人。記者会見で石川は「たくさんの人に見に来てもらってうれしいが、盛り上がりはいま一つでしたね。思っていたより少ないなと感じました」と、思わず本音?をもらしました。日本シリーズ、遼が優勝へ突っ走った最終日は、前年より200人ほど増えて1万267人でしたが、4日間の合計では前年を下回ったのも事実でした。

日本シリーズJT杯では石川遼を見ようとまずまずのギャラリーが集まったが・・。(東京よみうりCC1番ティーグラウンド)
日本シリーズJT杯では石川遼を見ようとまずまずのギャラリーが集まったが・・。(東京よみうりCC1番ティーグラウンド)

優勝した喜びの裏側で遼クンの嘆きが聞かれました。
「(日本の男子も)レベルの高い試合をファンに見せていかないといけないでしょうね。日本に世界ランク50位以内の選手がいないのは、自分も含めて日本の現状です(松山英樹は15位ですが、現在は米ツアーの登録選手)。やっぱり一人ひとりの選手が呼べるギャラリーの数が少ないのがいまの日本の男子ツアーの状態でしょう。日本の女子ツアーは、自分は見に行ったことはないんですけど、いろいろな選手一人に数十人のギャラリーがついている感じがします。いまの男子にはそれがないかなと思います」

実力のある選手、魅力のある選手が出現することは、ツアーを盛り上げる大きな要素でしょう。かつて人気を沸騰させた遼クンも、その後米ツアーに去り(今年で米ツアー4年目)、続いて現れた松山英樹も早々と主戦場を米国に移してしまいました。男子ツアーに目玉選手がいなくなると、観客の足は年ごとに遠のいて女子ツアーに人気を奪われてしまったのです。

実力の向上・・石川はそれ以外にも方策はある、と訴えます。
「日本にあるシニアツアーでは、コースに来てもらえば家族で楽しめる環境作りをしているところがある。ゴルフの試合を見てもよし、また家族が他のことで遊べるスペースもあるといった環境ですね。ゴルフの魅力を知ってもらうのが1番ですけど、まずはたくさんの人にコースに来てもらって、その中でゴルフに触れてもらえば、ゴルフの魅力も伝えられると思うのです」

ファンが選ぶMIP賞を9年連続で受賞した石川遼(中)。左は青木功=15.12、ジャパンゴルフツアー表彰式で
ファンが選ぶMIP賞を9年連続で受賞した石川遼(中)。左は青木功=15.12、ジャパンゴルフツアー表彰式で

さらに石川は″ひとつのアイデア〝として提案しました。
「例えば国内ツアーでも帰りのギャラリーバスには大勢の人が長時間待ってますね。そこに若手選手が行って握手をしてあげるだけでも違うだろうと思います。賞金ランク上位の人が行くこともないでしょうから、若手が自己紹介を兼ねて応援してくいださい、といえばギャラリーの人達に強い印象が残るはずです。これなんかも選手には大切なことだと思うんです」

新規ファンの獲得へ、遼クンらしいアイデアを披露して注目されました。やはり3年間、苦労しながらも本場米国でのツアーを戦ってきた経験が言わせるのでしょうか。米ツアーの実情についても、石川は語りました。
「アメリカのツアーは世界一レベルの高いツアーだといわれています。そのツアーで世界ランク1位の選手が出てる試合などは、スポンサーもやりがいがあると思っています。そういう試合は、一つのスポンサーが降りてもすぐ次のスポンサーが入ってくる状態です。ツアーの運営の仕方がうまいとうことももちろんありますけど、選手のレベルの高いことが(日本とは)1番の違いだと思いますね。世界一のものを見たいと思うのは、自然のことでしょう、それに社会貢献もたくさんするので、スポンサーになってもイメージがいい。アメリカのどの人気スポーツに比べても(ゴルフは)1番イメージがいいと思います」

15年シーズンの表彰式で勢ぞろいした日本ツアーの受賞者たち(15.12、東京・パレスホテル)
15年シーズンの表彰式で勢ぞろいした日本ツアーの受賞者たち(15.12、東京・パレスホテル)

「いまアメリカのPGAは選手の負担が少ないんです。プロアマ大会もアマとプロが一緒に回っても、18番をホールアウトすればプロの役目はそれで終わりなんです。スポンサーやゲストの方は世界ランク1位とか上位の人と18ホールゴルフができるだけで幸せと思っています。前夜祭も、これに出席する選手は2~3人なんです。基本的にはフェデックスランキング(賞金ランク)が上の人になればなるほど、そういうところへは行かなくてもいいシステムになっています。そのほかジュニアのゴルフクリニックやスポンサーさんへのレッスンに呼ばれる機会が多いのは、賞金ランク126位~200位(シード外選手)くらいの人です。こういうものにもランクが上になればなるほどやらないというシステムです。それで成り立っているし、スポンサーさんもそれで喜んでくれているのが現状です。日本ツアーでそれをやろうとしても、なかなか難しいものがあるでしょう。ですから、日本では、賞金ランク上の人がどこまでそれをやれるか。選手の負担にはなりますが、それはアメリカと日本との違いじゃないかと思います」

ハードな米ツアーを経験している石川遼のいう″日米の違い”は、参考になる話が多いです。低迷の続く日本男子ツアーが息を吹き返すには、アメリカを習いながら日本流の方策を模索していくのが最善でしょう。今年の日本男子ツアー、果たして大きな変化を期待できるでしょいうかー。