女子ツアーは昨季と同じ38試合。賞金総額は過去最高42億円超!依然人気の「女子ゴルフ」 、シード権はポイントランキングで一本化!

21年度の女子ツアーを盛り上げた二人。賞金女王・稲見萠寧(左)とメルセデス・ランキング1位・古江彩佳(右)=21年最終戦・宮崎CC

22年度の国内女子ゴルフツアーは昨季と同じ38試合。賞金総額は6600万円増で過去最高の42億9600万円と発表されました。開幕は3月3日、例年通りダイキン・オーキッド(沖縄・琉球)。11月末の閉幕まで、ほとんどの週で試合が行われます。低迷の男子ツアーをよそに、依然として女子ゴルフ人気は衰えません。その女子ゴルフ界で2つの大きな「改革」が行われるのが注目です。一つはシード権取得方法、一つはツアー放映権の帰属にまつわるインターネットの有料配信の問題です。

 

昨年暮れに発表された今季の国内女子ツアーは、東京五輪開催のため休止されていた「北海道meijiカップ」(8月5~7日、北海道・札幌国際島松コース)が3年ぶりに復活。「GMO&サマンサタバサカップ」が、インターネット問題で中止となるため実質1増1減の38試合(この空いた週に新たな試合開催の可能性あり)。これまで「中京テレビ・ブリヂストン」だった大会が「ブリヂストンレディス・オープン」に変更。「ヨネックスレディス」には新しい冠がつき「リシャール・ミル ヨネックスレディス」に名称が変わります。それにともない「ヨネックス」が7000万円から2000万円アップの9000万円。「ブリヂストン」と「楽天スーパーレディス」が4日間大会になるため「ブリヂストン」は7000万円から、「楽天」が8000万円からともに1億円へ賞金総額を増額。さらに「TOTOジャパン・クラシック」も600万円増額の2億2600万円(1ドル=113円換算)となるなど賞金アップも目立ちます。小林浩美会長が早くから推進している“4日間大会”は、38試合中18試合にまで増えます。

☆6大会が開催コースを変更するのも今年の特徴です。
「富士フィルム・スタジオアリス」⇒「兵庫・花屋敷GC」から「埼玉・石坂GC」へ。
「ブリヂストン・レディス」⇒「愛知・中京GC」から「千葉・袖ヶ浦CC袖ヶ浦コース」へ。
「リゾートトラスト」⇒「愛知・セントクリーク」から「山梨・メイプルポイントGC」へ。
「ゴルフ5レディス」⇒「三重・ゴルフ5CC四日市」から「千葉・ゴルフ5CCオークビレッジ」へ。
「日本女子プロ・コニカミノルタ杯」は「京都・城陽CC」(9月8日~11日)。
「日本女子オープン」は「千葉・紫CCすみれコース」(9月29日~10月2日)。

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21年夏、東京五輪のゴルフで銀メダルに輝いた稲見萠寧(埼玉・霞ヶ関)

隆盛の続く女子ツアーですが、ここへきて女子ツアーには2つの大きな「変革」が起こりました。
《一つ目の改革》テレビからインターネット中継への転換問題です。女子プロ協会は、2017年からツアーの放映権の協会帰属について各主催者側と交渉を始めており、22年からはツアー放映権を女子プロ協会に帰属させることの了承・合意を得ているとしています。全試合をインターネット中継で有料化にする旨を昨秋、各主催者に通達したとしていますが、これに対して「GMOインターネット・レディス」のスポンサーであるGMOインターネットグループ(代表・熊谷正寿氏)が反発。「有料放送だけなら主催者を降りる」として、その後正式に大会の撤退を表明しました。昨年の「GMOサマンサー」ではYouTubeで無料配信し、大きな反応を得ているという。「(女子プロ協会が推進している)インターネットを有料にし無料を禁止したらファンが減るだけ」とGMOは訴えています。

21年賞金ランキング3位で2億円超を稼ぎ出した小祝さくら。女子ゴルフを盛り上げた一人で、今季も期待が集まる。

女子プロ協会側は「ネット配信は有料で行う方針であることは、昨年の時点ですべての主催者やGMO側にも説明済み。それを承知した上で日程編成の申し込みが行われたと認識していた」とし、インターネットで無料配信を行えば、地上波などとの競争を激化させ、主催者に大きな負担がかかることを考慮していると説明しています。小林浩美会長は「この方針については各主催者さまにはご理解をいただいています。他の主催者さまからの特別な指摘はありません」と、強い態度を崩していません。

昨季は36試合で中継された無料テレビ放送は今季も継続し、すでに一部試合で始まっている有料ネット生中継とは並行実施します。つまり女子プロ協会が一括管理ですることで決定している放映権は、22年は従来通り無料放映。23年以降は中継局に権利を売却し有料放送を増やしていく方向ということですが、この問題、終局には至っておらず、まだ一波乱ありそうな含みを残しています。

人気絶頂の女子ゴルフを背景に「改革」を断行する小林浩美JLPGA会長

《二つ目の変革》賞金ランク問題です。従来日本のツアーの賞金ランキングは獲得賞金額で順位を決める方式です。それに加えてポイント制の「メルセデス・ランキング」が2012年に導入され、賞金獲得1位は「賞金女王」、ポイントNO1選手は「年間最優秀選手」として表彰されています。この2本立てを23年度以降、賞金ランクによるシード権付与は廃止し、ポイントランキングに一本化されます。つまりポイントによる「メルセデス・ランク」のみでシード権が付与されます(現行50位まで)。
ゴルフツアーは大会ごとに賞金差があるため、獲得賞金額による順位の公平性に難があります。それを是正しようという狙いです。米女子ツアーなどはすでに採用されており、国内ツアーもこれにならって今後実施されます。ちなみに昨季の国内女子ツアーはでは、賞金ランキング1位は稲見萠寧(メルセデスランク2位)。メルセデス・ランキング1位は古江彩佳(賞金ランク2位)でした。

さて、2022年度の女子ツアー、渋野日向子(23)と古江彩佳(21)が今季から米ツアーに本格参戦します。昨年12月、米最終予選会で古江は7位、渋野は20位に入り出場資格を獲得しました。米女子ツアーは1月20日に新シーズンが始まりますが、新人セミナーなど受講したあと、第2戦以降にツアーメンバーとしてデビューすることになります。一方国内では若手選手が目白押しの女子ツアー。さまざまな改革が行われる中で、また新しい顔のフレッシュな展開をみせてくれるでしょう。

(了)