男子ツアーも新時代が始まった!!桂川有人、大西魁斗ら、ツアーを盛り上げる“20代前半勢力”のゴルフが見たい!

今季話題の人となった桂川有人(ゆうと)。難関・大洗攻略目前までいきながら、プロ2勝目を逃がした。

さま変わりする男子ツアー。若返りが著しい女子ツアーに負けじと、遅ればせながら男子ツアーの新勢力の台頭は目をみはります。国内男子ツアーは第5戦、日本・アジア両ツアー共同主管大会の「アジアパシフィック・オープン ダイヤモンドカップ」が、日本有数の名門コース、茨城・大洗ゴルフ倶楽部で行われ、大混戦の末、優勝は2年連続賞金王(18、19年)の今平周吾(29)が通算8アンダーで握りましたが、1打差の2位タイに入ったのは4人。優勝戦線を面白くしたのは20代前半のはつらつとしたヤング勢力でした。トップを走りながら大詰め15番(パー5)の4パットダブルボギー、17番(パー4)のボギーで、ツアー初優勝につづく今季2勝目を逃がした桂川有人(23)。同い年23歳で2位タイのアメリカ帰り大西魁斗に、アマチュアの鈴木晃祐(東北福祉大4年)・・。まだ名前も売れていない若者たちのレベルアップは驚くばかりです。それも先輩プロ顔負けの堂に入ったゴルフを展開するのだから、驚きです。男子ツアーも新しい時代が始まった!といっていいでしょう。

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4月「ISPS HANDA 欧州・日本トーナメント」でプロ初優勝。恒例のカブト姿で喜ぶ桂川有人。

新勢力の旗頭・桂川有人(ゆうと)は、我慢しきれない悔し涙が溢れました。名門コースでもあり、名うての難コース「大洗GC」。その攻略ももう目前でした。トップタイで出た最終日。前半9ホールで2つ伸ばし、9アンダーとして単独トップでバックナインにターンしました。リードを保ちながら迎えた大詰め15番(パー5)でした。571ヤード。グリーン左手前には大洗独特の寝そべったような大きな松が張り出しています。グリーンのアンジュレーションも強い難ホールです。前日もここでバーディーを奪っている桂川は、2オン狙って強打。ボールはグリーンを捉えたかに見えましたが、最後左へキックしてグリーンわきのラフ。小技が求められる微妙な寄せ。桂川のチップは、グリーンのアンジュレーションで止まらずピンを7~8㍍オーバー。ここからの1打目を大きくオーバーさせ、4パットを要する大ポカ、というよりも変化の強いグリーンに翻弄(ほんろう)されたダブルボギー。テレビ解説の中嶋常幸プロは「ここの難しいグリーン攻略は、2打目をグリーン手前に置いた方が賢明だった」と、説いていました。強打してグリーン脇まで2打でいきながら、寄せが難解でそこから“5打”を要した洗礼に泣いた桂川でした。

有望若手で騒がしい男子ツアー。「ダイヤモンド・カップ」を制したのは29歳の今平周吾(左)。優勝カップとフラッグを前にキャディーと喜びを分かち合った(茨城・大洗GC)提供:JGTO

首位を今平周吾に明け渡し、次の16番パー3(245ヤード)でピン左7㍍のバーディーパットをねじ込むバウンスバック(スコアを落とした後すぐバーディーを奪うこと)を決めたあたりは新時代の若者の強さ。再び通算8アンダーで今平と肩を並べた恐るべき桂川の粘り。一組前でホールアウトしていた今平を、いま一度突き放すチャンスがきたのですが、次の17番(パー4)でグリーンを外し、1.5㍍のパーパットがカップにけられる痛恨のボギー。最終18番(パー4)もプレーオフをかけた2.5㍍のバーディーチャンスも難しい下りラインで決まらず、無常の1打差逆転負け。シーズン2勝目を逃がしました。

1打差で4人が並ぶ大混戦。重圧はホールを追うごとに増したといい「ショットにはあまり影響受けなかったが、グリーンのスピードがつかめなくなった」と、くちびるをかんだ桂川。報道陣やファンにも常に明るく、律義に語る謙虚な23歳。今季開幕戦だったシンガポール・オープンで日本人最上位の2位に入ってすでに7月の全英オープンの切符をゲットしています。「東建ホームメイトカップ」では香妻陣一朗とのプレーオフに敗れた2位。4月の「ISPS HANDA 欧州・日本、とりあえず今年は日本」で、プロ2年目でのツアー初優勝を果たし、今回はまた惜敗。しかし賞金レースは依然トップを守っており(4260万8000円)、男子ツアーの新しい顔にのし上がってきたことは間違いありません。

「東建の時もプレーオフで負けて、悔しさをバネに頑張ろうと思っていたら次、優勝できた。今回も自分から崩れたと思うので、これも経験。またいいこともあると信じて次にチャンスを作って勝ちたいです」
とリ囲んだ大勢のファンや報道陣から解放された桂川の目に溢れ出た涙は、きっと次につながる涙でしょう。167センチと小柄ながら、飛距離と正確なアイアンショットを打ち出す柔軟で強い筋肉の持ち主。人を引きつける魅力をもった男です。

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米国仕込みのゴルフで話題の大西魁斗(23)。「ダイヤモンド・カップ」では優勝争いにも加わったが、1打差で初Vには届かず無念!(茨城・大洗GC)=提供:JGTO

最後まで優勝争いを演じ2位タイに入ったもう一人の若者・大西魁斗(かいと)。出身の愛知でジュニア時代、桂川とともに戦った仲。大西は9歳で練習環境を求めてアメリカに渡り、IMGアカデミーで英才教育を受けました。桂川は中学卒業後、フィリピンにゴルフ留学してともに海外でゴルフの腕を磨いた2人です。大西は南カリフォルニア大学時代はコリン・モリカワらとオールアメリカンにも選ばれ、全米ジュニア、全米アマにも出場。滞米中は丸山茂樹プロの指導も受けたという。帰国後の21年にプロ転向。昨季はレギュラーツアー6試合に出場(予選落ち1回)、下部ツアーで主にプレーし下部賞金ランク15位。今季は4月の桂川が勝った「ISPS HANDA 欧州・日本ー」に推薦出場し4位に入っています。父親はNHKの英語講座の大西泰斗氏。魁斗の方は「日本で勝って、また米国に行きたい」と夢を語っていますが、米国仕込みのフルショットしていく攻撃ゴルフは魅力いっぱい。日本男子ツアーの新しい勢力として人気になりそうです。

また今回2位タイに食い込んだアマチュアの鈴木晃祐は東北福祉大の4年生。最終日、コースレコードの「63」をマークして驚かせました。千葉県出身。西武台千葉高から19年東北福祉大に入学。3年の21年には日本アマ、日本学生ともに3位で将来のスター候補です。

アマチュア世界ランク1位の中島啓太(日体大4年)。人気も実力も折り紙付きの“金の卵”。今シーズンも出場する男子ツアーでは騒がせそう。

このほかにも、今回は通算2オーバーの32位タイと振るいませんでしたが、すでに昨季はプロツアーで1勝(パナソニック・オープン)、この春にはマスターズにも出場した中島啓太(21)の人気と実力は折り紙つき。今秋にはプロ入りが予定されています。下部ツアーから上がってきた久常涼(19)やプロ宣言を済ませたばかりの河本力(21)=日体大=、杉原大河(22)=東北福祉大=ら。さらに実績のある金谷拓実(23)らも加えて、男子ツアーの若手陣は多士済々。今年はファンの目を楽しませそうな男たちが勢ぞろいしました。

(了)